21 日の丸弁当と秋刀魚サンマのはらわた
参考:樋口清之博士著祥伝社発行「梅干と日本刀」
日の丸弁当とは、白米のご飯と一個の梅干だけのお弁当です。これが胃の中に入ると、
この梅干一粒が、九九%の米の酸性を中和し、米のカロリーは食べた殆どが吸収される
役割を果たします。
即ち、日の丸弁当は、食べてすぐエネルギーに変わる、労働のための理想食です。
更に米を主食としてカロリーを摂ると云う発想も、経済的なのです。何故なら、米と
麦を単位面積で比較しますと、米は麦の約二倍の収穫を得ることが出来、その上、米の
澱粉質は良質なので、消化吸収が実に早い。カロリー源は、安くて胃に負担をかけない
米に委せ、一方でこの米の吸収を早めるための、一種の触媒的なアルカリ食品を少量、
更にミネラル、ビタミン類を補給する食品を少量、これらを副食として摂取すると云う
日本人の「ご飯とおかず」法式は、実に見事に合理的に食事法なのです。
そして日本人は、この副食に「悪食アクジキ」と言われる位の情熱を傾けて、様々のミネ
ラル、ビタミン類の摂取を試みています。その理由は、ミネラル、ビタミン類の摂取と
云うことだけでなく、「うまい」か「うまくない」かであり、「これは元気がつきそう
だ」「薬になりそうだ」と云う自分の感覚で摂るのです。食品の善し悪しの基準が、科
学分析として外側に在るのではなく、「生きたい」と願う自分の内側の観察にかかって
いるのです。
悪食の例としては、香辛料では、ある民族は胡椒コショウしか使わないのに、日本人は胡
椒も唐辛子も生姜ショウガも山葵ワサビも食べます。ほかに海鼠ナマコ、海胆ウニや蛸タコ、数の子
や子持ち昆布を珍味として喜びます。河豚フグや、漆ウルシの新芽に至るまで、生命の危険
一歩手前まで食べるのです。
因みに西洋の栄養学では、どの食品一つ取り出しても、その食品自体に、カロリーと
栄養がバランスよく含まれていなければならない、とされます。食生活において、わが
国のような主食と副食と云う概念はありません。
白米には、次のような欠点があります。
まず酸性食品であること、次に完全無塩食品であること、更に白米をカロリー源とし
たために蛋白質や脂肪、ミネラル、ビタミン類の摂取が少なくなること、などです。
そこで副食類は、この三点を補うこととなります。
まず酸性の中和剤として梅干やタクワン、味噌汁などの発酵食品を摂ります。
次に、私共の血液には塩分が必要です。食塩は塩化ナトリウムで無機塩ですが、古代
人は有機塩を食べて、これを補いました。有機塩は木の新芽とか、動物の内蔵に含まれ
ています。日本人は秋刀魚サンマのはらわたを好んでたべますが、はらわたには他の部分よ
りカロリー価が高く、更に多くの有機塩を含んでいるため、結果的にはカロリーや塩分
を優先して摂取しているのです。小魚や貝や、魚の内蔵、木の新芽なども同じで、「米
の味」の足りない感じを、「別の味」で調和させると云う形で、有機塩を必要なだけ摂
取していたのです。
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