05b 野菜「果菜類−未熟果・熟果・豆類」
◎ピーマン
和名:甘とうがらし ナス科 原産地:熱帯アメリカ
プロフィール:ビタミンA・Cが多く含まれ,カロチンも豊富なピーマンは,トウガラ
シの仲間で辛味のないものを云います。
15世紀の終わり頃コロンブスがヨーロッパへ持ち帰り,世界中に広がりました。わが
国へは江戸時代に渡来しましたが,この時の種は辛味種のトウガラシでした。甘味種の
ピーマンが入ったのは明治時代初期で,第二次世界大戦後に漸く食卓に定着しました。
独特の匂いのせいで,子供の嫌いな野菜の一つに挙げられていましたが,現在では大
部分の品種が癖クセのない味に改良され,食べやすくなってきました。大きさは3g程のも
のから300gものまで,形の細長いものから円筒形,短円筒形,円錐形のものまでいろい
ろです。寒さに敏感な野菜で,高知や宮崎は,温暖な気候を利用したハウス栽培によっ
て大産地になりました。冬から春にかけて出回るピーマンの8割はこの両県のもの,夏
から秋にかけて出回るものは茨城,岩手のもので約3割を占めています。
通常の緑色ピーマンは,未熟なうちに収穫したものです。ピーマンはどの品種でも熟
しますと赤色,又はオレンジ色や黄色にもなります。スーパーに色とりどりの大型ピー
マンが並び始めたのはここ数年のことで,良く見かける赤・黄のほか,紫や白色など全
部で7色あります。癖がなくて甘く,サラダや料理の彩りなど利用範囲も広がっていま
す。
△ピーマンの主な品種
@中型・緑:一般に出回っているもので,主に30〜40g程の大きさで,肉が薄めの種が
多く,京波やちぐさなどの品種が主です。
A中型・赤:これは中型・緑を完熟させたものですが,味わいなどは緑色のものと同
じですが,ピーマン臭がなく甘味も強い。完熟果として黄ピーマンもあります。
B大型・緑:カリフォルニアワンダーが代表的品種,果肉が厚いので,詰め物や肉と
の煮込み料理に向いています。大型種はオランダパプリカとも呼ばれていますが,
これは品種名ではありません。
C大型・赤:大型・緑ピーマンが完熟しますと,赤色になります。
D大型・黄:大型・緑ピーマンが完熟しますと,黄色になるものもあります。
E大型・橙・白:橙色のものは大型・緑ピーマンの完熟したもので,白色のものはこ
の未熟なものです。
F大型・黒:未熟のときは黒色で,加熟しますと緑色になるものもあります。
G大型・紫:未熟なときは紫色で,加熟しますと緑色になるものもあります。
H大型・茶:未熟なときは茶色で,加熟しますと緑色になるものもあります。
Iパプリカ:香辛料としてお馴染みです。ハンガリーから輸入していましたが,現在
はわが国においても生産しています。
△食べ方と効能
ピーマンは年中安定して供給されていますが,温暖性の野菜で,旬は夏です。色が濃
くて艶があり,斑点や傷のないものが良品,果肉が厚くて,蔕ヘタがピンとしているものが
新鮮です。形と味はあまり関係がありませんが,曲がりや凹みのないものの方が,肉厚
で料理しやすい。ビニール袋に入れて冷蔵保管し,蔕の部分から黴カビが生えてくるの
で,ときどきチェックして下さい。
ピーマンは油と良く合う野菜であり,多量に含まれるカロチンは油と一緒に摂ると吸
収が良くなります。一般に肉や野菜と炒めたり,挽肉を詰めて揚げたりして料理します。
そのほか煮物や和え物にも合います。赤や黄ピーマンは,肉厚で甘味も強く彩りも良い
ので,サラダには最適な野菜です。大型種は,さっと茹でてからサラダや和え物にしま
す。黒色ピーマンは緑色地にアントシアニンの紫が混ざっているものですが,この色素
は熱に弱く,熱を加えると地色の緑色に戻ります。従って熱を加えないで,生のまま利
用して下さい。
ビタミン類が豊富で,特にカロチン,ビタミンB1・Cが多く,ビタミンCはトマトの
5倍,レモンの2倍も含まれています。緑のピーマンの色は葉緑素によるもので,完熟
するにつれてカプサンチンと云う赤色色素が増えて,赤ピーマンに変色して行くのです。
◎オクラ アメリカネル・オカレンコン・ナットウとも
アオイ科 原産地:東北アフリカ
プロフィール:オクラは納豆のような独特のぬめりと,トロロに似た特有の風味が人
気の秘密です。ヘルシー志向や食生活の多様化から見直され,近年生産量が増加してい
ます。
オクラの名は,原産地アフリカの現地語に起因し,エジプトにおいては古くから食用
として栽培されていました。食用となるのは若い果実ですが,完熟実はコーヒー豆の代
用にもなります。わが国には幕末に渡来,西洋野菜の中においては比較的早く定着し,
1970年代に生産が伸び,主体は小果系のものです。
わが国の種は一般に五角形のものですが,八角形や丸形のものもあります。色は普通
は緑色で,赤色種,黄色種もあります。長さは普通6〜8pで,2p程のミニオクラや,
15p程の大果系のものもあります。冬〜春にかけては,タイやフィリピンなどからの輸
入ものが多く出回ります。
βカロチン,ビタミンB1・B2・Cなどのビタミン類や,カルシウム,ミネラルが豊富
です。
アオイに似た黄色の美しい花も見所で,観賞を兼ねて家庭菜園に採り入れたい野菜の
一つです。
△オクラの主な品種
@オクラ五角種:綺麗な五角形で,断面が星型になり,グリーンアスターやアーリー
ファイブなどの品種があります。天麩羅テンプラ,お浸し,生のまま刻んでも美味し
い。
A赤オクラ:果色が赤く,茎葉も赤味を帯びています。茹でると果色が緑色に変わる
ので,生食にします。長さ7〜8p,六〜八角で果肉は薄い。
B丸莢種:大莢の品種で,オクラの中において最も肉質が柔らかい。代表的品種にエ
メラルドがあります。
Cミニオクラ:2p程の小さなオクラです。
△食べ方と効能
オクラは年中出回っていますが,旬は7月から9月の正に夏の代表野菜です。開花後
5〜6日の若い莢果実が最も美味しい。あまり大きなものは中の種が堅いことがあるの
で,中位のものが良い。また緑が濃く,切り口や蔕ヘタに黒ずみのない綺麗なもの,角が
はっきりしているものが良質,そして産毛が多く,柔らかなものが新鮮です。保存は,
ビニール袋に入れて冷蔵保管します。
口当たりを良くし,緑の色をより鮮やかにするために,水洗いしたらたっぷりの塩を
まぶし,一つずつ指の腹で擦って表面の産毛を除いて下さい。そのまま料理するときは,
もう一度水洗いして塩を洗い流し,茹でるときは塩をまぶしたまま熱湯に入れます。
茹でたオクラは小口切りにして二杯酢で和えたり,海苔を散らして磯部和えにしたり,
辛子マヨネーズで和えてサラダにしたり,また網焼きや天麩羅テンプラも美味しい。そのほ
か,ユニークな形を活かして,スープの浮き身にしても楽しい。
糖質が多く,カルシウムや鉄などのミネラル,カロチン,ビタミンCなどが含まれて
います。独特の粘りはペクチン,ガラクタン,アラバンなどの混合物で,整腸作用や血
中のコレステロールを減らす働きがあります。
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