03b 薬膳粥その2
 
【中華粥】
 
[冬虫夏草トウチュウカソウ粥]
 古来から不老不死の妙薬とされて来ました冬虫夏草は,虫に寄生した茸キノコです。様々
なな虫にそれぞれ寄生する菌がありますが,コウモリガ類の幼虫に寄生したバッカクキ
ン科のフユムシナツクサタケの子実体(キノコ)を,虫体と共に乾燥したものが薬用と
して用いられます。この菌は冬に幼虫の体に入り,菌糸を伸ばして成長し,やがて虫の
体を完全に占領してしまいます。そして夏に温度・湿度などの条件が整いますと茸が発
生しますが,蛹サナギの殻はそのままなので,冬になると脱皮して再び虫になると信じら
れ,「冬虫夏草」と名付けられました。
 地上には茸の太い部分だけが出て,虫の部分は地中に隠れていますので,採集は容易
ではありません。滋養強壮作用がありますので,中国においては現在においても大変珍
重されている漢方薬です。虚弱体質の方の体力増強作用があると云われています。
 材料:4人分/鶏殻スープ800ml,鰹出汁600ml,白米180g,冬虫夏草8g,生姜ショウガ
  10g,薄口醤油30ml,味醂10ml,清酒45ml,塩少々
 作り方:@分量の鶏殻スープと鰹出汁に,冬虫夏草以外の全ての材料を入れて,お粥
   に炊き上げる。
  A食べる直前に冬虫夏草を散らす。
 メモ:冬虫夏草は高価な漢方薬ですが,表面を清酒などでよく洗ってから姿のまま,
  或いは刻んで用いて下さい。中国の薬膳料理の本には,虚弱体質改善のため,冬虫
  夏草を鴨と生姜と共に煮てそのスープを飲むとよいと記されています。
 
[紅花コウカ粥]
 『源氏物語』に出てくる姫君の名「末摘花スエツムハナ」は紅花ベニバナの古名です。紅花は,
古くから世界中において化粧品の材料や染料,そしてサフラワーオイルの原料として愛
用されてきた植物です。
 初夏に咲く紅花の管状花を,まだ朝露の降りている早朝に摘みます。鋭い棘に刺され
ないようにするためです。この管状花を陰干ししたものを生薬の紅花コウカと呼びます。産
後の回復に,婦人病(冷え性・生理不順),更年期障害などに効力があるとされています
が,子宮を刺激して収縮させるので妊婦への使用は避けて下さい。また出血しやすい人,
月経過多の人にも不向きです。
 紅花をサフランに見立てて鶏肉を加え,パエリヤ風のお粥に仕立てました。女性向き
に脂肪分を抑えたあっさり風味です。冷え性や生理不順の方も召し上がって下さい。
 材料:4人分/鶏殻スープ800ml,鰹出汁600ml,白米180g,紅花6g,薄口醤油30ml,
  味醂10ml,清酒45ml,塩少々,鶏肉60g,サフラワー油1ml
 作り方:@分量の鶏殻スープに鰹出汁・薄口醤油・味醂・清酒・塩を入れ,白米・紅
   花を加えて,お粥に炊き上げる。
  A清酒を振りかけて10分蒸した鶏肉に,サフラワー油をまぶし,お粥に載せて戴く。
 メモ:サフラワー油は,血液中のコレステロールを取り除き,動脈硬化予防に効くと
  云うことでファンも多いようです。鶏肉は地鶏を用いますと脂肪分も少なく,旨味
  があります。
 
[紫蘇シソ粥]
 食欲のないとき,お腹オナカの調子が悪いときには,白粥に梅干しが定番です。これに紫
蘇と若布ワカメをプラスして,酷コクのある鶏殻ベースのお粥で戴きますと,ご馳走の仕上げ
にぴったりの一品になります。
 梅干しはクエン酸・リンゴ酸などを含み,食欲増進,整腸などの効果があります。
 紫蘇の芳香には鎮静効果があります。また,風邪のときや咳止めに,そして消化促進
効果や殺菌力があるため,わが国においても中国においても広く用いられて来ました。
 海草は「海の野菜」と云われ,ヨードとカルシウムがたっぷり含まれています。ヨー
ドが不足しますと低体温やイライラ,精神不安定の原因となります。体の抵抗力も落ち,
老化現象も起こって来ます。日本人にバセドー氏病が少ないのは,海草類を多く食べて
いるためと云われています。放射線障害を防止する働きもありますので,現代人は積極
的に摂りたい食品の一つです。
 材料:4人分/鶏殻スープ800ml,鰹出汁600ml,白米180g,青紫蘇の葉6枚,梅干し
  4個,若布40g,薄口醤油30ml,味醂10ml,清酒45ml
 作り方:@分量の鶏殻スープに鰹出汁・薄口醤油・味醂・清酒・白米を加えて,お粥
   に炊き上げる。
  A炊き上げたお粥に,青紫蘇の葉・梅干し・若布を添える。
 メモ:紫蘇は振り掛けや漬物など様々な加工食品が出回っています。彩りに生の青紫
  蘇をあしらいますが,好みによっていろいろ試してみて下さい。振り掛けを用いる
  ときは,塩分を摂り過ぎないように梅干しを一人分半個位に減らして下さい。
 
[茯苓ブクリョウ粥]
 茯苓はサルノコシカケ科の茸で,松類の根に付きます。松が切り倒された後の切株の
周囲から採取します。茸採りは経験を積んだ専門家の仕事です。泌尿器系の炎症や下痢,
慢性胃炎に効くと云われています。
 茯苓のもう一つの効用は,魂を安らかにし,精神を養うと云われていますが,正月に
松を飾る日本人の慣習と一脈通ずるものがあります。
 材料:4人分/鶏殻スープ800ml,鰹出汁600ml,白米180g,鶏肉40g,茯苓24g,絹莢
  適量,薄口醤油30ml,味醂10ml,清酒45ml,塩少々
 作り方:@茯苓は前日から水に浸けて戻して置く。
  A分量の鶏殻スープに鰹出汁・薄口醤油・味醂・清酒・塩を入れ,,白米・鶏肉・
   戻した茯苓を加えて,お粥に炊き上げる。
  B仕上げにさっと茹がいた絹莢の細切りを飾る。
 メモ:@茯苓は医薬品のため,分量を守ってご使用下さい。
  A茯苓が入ってるため,多少粉っぽさを感じるかも知れません。
  B茯苓は天然物で内部が白いものが最高級品ですが,人工培養されたものも用いら
   れます。なお,内部が赤褐色のものは苦味があるので,調理には向きません。

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