03a 竹文化〈竹利用〉
 
 △竹篭の変遷
 ・笊は丸形から角形へ:弥生時代や古墳時代の遺跡から発見された笊は,いずれも丸
形です。その後,葛篭ツヅラなどの影響を受けて四角形,矩形へと変遷してきました。角
形のものは持ち運びが容易で,かつ保管しやすいなどの利点があります。そして箱形を
経て,竹行李が作られました。
 ・竹行李タケコウリ:竹行李は主に箱根山のハコネダケ,富士山麓のスズダケ,高地帯の
ネマガリダケで作られます。
 
 △竹筒と日常生活
 ・竹枡:私的な自家用枡で,1〜2合程度の食用油や穀類を量るものとして用いられ
ました。
 ・よろず:2尺程度のマダケを3段に穴を切り込んで柱に掛け,箸や杓子,うちわな
どを差込んでおくものです。
 ・がらじち:鹿児島県沖永良部島では,太いモウソウチクの筒に味噌を入れて出漁し
ました。
 ・よぎり:宮崎,鹿児島では,竹筒を樺皮で包んで水筒にしたり,火にかけたりしま
す。東南アジア系の外来語にようです。
 ・柄杓:コップにようなものです。
 ・竹筒の音:シカ,イノシシ,サルなどの侵入を防ぐため,流水と竹筒で音を出す添
水ソウズで,古い庭にはよくあります。
 ・しいづつ:宮廷などで用いられました尿器です。
 ・潮凝シオゴリ:潮凝は海水を天日で結晶にしたもので,これを竹筒のまま油紙に包ん
で保管しました。
 ・竹筒の願掛け:島根県の古いしきたりで,青竹筒に酒を盛り,細い藁縄でくくり,
一端に干魚を添えて神前の横木に掛けて祈ります。
 ・銭筒:洛北の古寺などの山門に提げている拝観料を入れる銭筒ゼニツツです。掛け花
挿しや置物にも使えます。
 ・ささのしずく:竹筒の中に羊羹を入れて真青な笹葉で蓋をした京名菓「ささのしず
く」があります。
 
〈竹と建築〉
 △竹と住居
 ・竹の家:350年前に造営された桂離宮は,こまい竹,屋根裏,窓,縁側,腰張りな
ど家屋材料の半分は竹です。
 ・大和葺:大和葺きは,マダケやモウソウチクの稈のまっすぐなものを半分に割り,
はじめ溝部を上向きにして並べ,次に覆いの部を下向きにして重ねます。
 ・屋根下地:瓦葺きは,まず竹を割って編み,その上に練った粘土を敷いてから瓦を
並べます。
 ・竹壁:小舞コマ竹の壁は,マダケ,ハチクのがら竹(屑竹)を横軸に,縦軸には安価
な細いメダケ,ネザサの丸竹を使います。網代編みの竹壁も暖かい地方では使われまし
た。
 ・竹の床:笹葉を敷きますとその香りは防虫となり,竹簀を編んで敷きますと防湿効
果があります。
 ・竹釘:木造建物の縁側の天井,腰板,桧皮葺き屋根など腐蝕しやすいところにはマ
ダケで作った竹釘を使います。
 
 △笹屋根の味わい
 但馬路から海辺に沿って能登半島にかけてクマザサ類で葺いた笹屋根が見られます。
笹屋根のクマザサは,毛のないヤネフキザサが用いられます。
 
 △エチオピアの竹の家
 エチオピアの竹篭の家「ツクール」は,40℃を超える灼熱の国に適した,涼しい家で
す。10年で建て替えるとのことです。
 
〈竹と日常生活〉
 △竹箸と皿
 ・御器竹:広義の御器竹は,ゴキタケ,アズマザサ,ネザサなどです。ごく普通に手
に入る竹ですので,山野などでの食事にはその稈を手で折って箸にします。
 ・八世紀の竹箸:天皇御即位に行われます大嘗祭には,古くからピンセットのように
して使う1本ものの竹箸が用いられます。大阪府豊中市にある八世紀の遺跡からも,こ
のようなマダケの箸が発見されています。
 ・竹の皮の皿:日本産の竹の皮は軟らかくて皿には不向きですが,バンブー類のもの
は珪酸が多く,水に濡れますと一層固くなり,皿として十分使用できます。
 
 △竹の履物
 第十四代仲哀天皇の熊襲クマソ征伐のとき福岡県香椎宮カシイノミヤで,竹の皮の草履を作ら
せたという記録があります。今ではほとんど無くなりつつありますが,南部表オモテの草
履が残っています。
 日光下駄は表をマダケの皮で編んだもので,社寺関係者が常用しています。
 そのほか竹皮の草履や鞋,竹スケートなどもあります。
 
 △竹とかさ
 ・番匠笠:マダケやハチクの皮で編んだもので,バッチョウガサなどろいろな呼び方
があります。
 ・雨傘:唐傘は”からくり”から派生した呼び名で日本に発達した雨傘です。竹の骨
が30本以上のものを蛇の目といいます。
 ・番傘:長野県伊那郡喬木タカギ村は,江戸の初期から阿島アジマ傘の産地として知られ
ています。それが戦中戦後に増産していわゆる”番傘景気”として有名になりました。
 
〈保護と竹〉
 △防風竹林
 九州西南部にはカンザンチク,ハチク,マダケなどの護基竹ゴキダケの薮が目につきま
す。特にカンザンチクは稈は密生し,弾力があって葉が大きく冬の寒い風を防ぐには第
1位です。カンザンチクの筍は8月末まで採れ,笹類では最も太くなり,わが国にはタ
ケの種類が600種もありますが,この筍の味は一番美味しいです。
 このほかの防風竹林としては,関東のナリヒラタケ,御殿場のハコネザサ,潮岬のホ
ウライチク,琉球のシチクなどが代表的です。
 
 △水防竹林
 水防竹林は元禄時代から藩有林を設けて,薮奉行や筍奉行を置いて保護育成してきま
した。今も河川の堤防に延々と竹林があるのはその名残りです。東北地方ではアズマネ
ザサやアズマザサ,本州南部ではハチクやマダケ,小さい川ではメダケやネザサ,九州
地方ではマダケやハチク,小さい河川やシラス台地ではホウライチクが植えられていま
す。
 
 △薮巻法
 東北・北海道では寒さとともに,稈が雪害で被害をうけますので,竹の栽培はふるい
ません。薮巻法は雪害を防除する一つの方法です。ハチクやモウソウチクは,降雪前に
稈を10〜20本ずつ縄で縛ります。
 マダケは寒さに強くはありませんが,枝の短いナリヒラダケやリクチュウダケは雪が
あまり積もらず雪害に強い系統です。
 庭の観賞用のトウチク,クロチク,シホウチクなどは梢端と枝を剪除して雪害に備え
ます。
 
                         参考 「竹」法政大学出版局

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