02a 竹文化〈竹の生態/竹は草か木か〉
△実竹ジツチク
実竹は古くは宮城県松島の福浦島の名産として知られていました。この島のマダケは
島で生育し,地下茎は伸びて断崖に出ると行き場を失って空中に伸び,竹稈となって育
ちます。したがって孔がないという地下茎的な性質が保たれて伸びますので,杖,印材,
スキーのストックなどに利用されてきました。今日では人工的に地下茎の先端を土管な
どに入れて空中に出す工夫が行われるなどの増産をしています。
クマザサ類の筍は,地下茎が少し地中を這い,その先端が上向きして稈となりますの
で,常に弯曲する性質があります。このグループのうち最も大型で顕著なものをネマガ
リダケといっていますが,これがいわゆる実竹です。
△雌竹と雄竹
「最下の枝が1本のものは雄竹,2本のものは雌竹で,雌竹からは筍がよく出る」と
いう中国の俗説がありますが,わが国栽培の有用竹でありますマダケ,ハチク,モウソ
ウチクはいずれも2本ずつ枝を出しますが,最下枝に限って1本のことがあり,これを
雄竹と呼んでいました。筍は雌竹が増収するとか,雌雄が1対2のときの竹林が最も筍
がでるとかいわれていますが,これは根拠がありません。
また,よく肥えて土中にある短くて太い三角形をした白いものほど,繊維が少なくて
甘み成分のチロシンを多く含んでいますので美味しいです。このようなものを雌筍とか,
白子シロコといいます。細長い,長三角形で黒色を帯びた味のえぐいものを雄筍とか,黒
子クロコと呼びます。
ここでいう雌雄筍も,雄竹雌竹と同じく,性の雌雄とはまったく関係がありません。
〈竹の原産地〉
△マダケ・ハチクは日本原産
@ハチクの葉らしい化石が発見されていること,Aマダケ,ハチクともに変種や品種
が多いこと,Bカビ性斑竹のあること,C島々をめぐる各地に野生のマダケ,ハチクが
あること,D同属の残存種であるヒメハチクが関西,関東の太平洋岸に分布しているこ
と,E筍のまずいマダケが早い時代に渡来するはずがないこと,F名称そのものから中
国渡来とは結びつけられないこと,G弥生時代の古墳層の中の笊ザルや,竹の網代アジロ
の形をした土器が発見されていること,H神話・伝説に数多くの記述があること,など
から日本での自生説を主張したいです。
△モウソウチク伝来
モウソウチクはもと中国の産で,琉球に生育していたものが鹿児島県に移植されたも
のとされていますが,当時(1736)は禁輸であったため,琉球経由としたものと考えら
れます。琉球への移植は,中国から鹿児島県に渡来の後に行われましたが,琉球での生
育はよくなく,太いもので小指ほど,高さ2〜3m程度です。
〈竹の花〉
△花の謎
3〜4月頃,マダケ,ハチクなどの薮全体が全面開花します。殆どの花は結実しませ
ん。開花から数ケ月にかけてまず地下茎・稈が衰えはじめ,次第に褐色となって立ち枯
れますが,開花竹稈の土中の基部環節のうち2,3の芽のみが枯れずに残ります。枯れ
残った芽は,秋までに大きい葉をつけて20〜30pばかりの回復笹(竹)に伸びます。こ
の回復笹(竹)には必ず花がつき,そしてその次の年に出たものが再生竹で,青葉をつ
けます。この再生竹は開花しても青葉をつけ,生き残ります。
このように竹は,世代交替することなく永遠に無性世代が継続することになります。
△開花結実の不思議
竹は数十年に一度しか開花しませんので,中国の十干十二支における60年に一度のめ
でたいものとして,吉兆〜豊作説としてきました。ところが開花して結実しますと,野
鼠が大発生して農作物に被害を与えたり,地下茎の枯損によって山地崩壊するなど,次
第に凶作説へと変わってきました。
△竹の寿命
寿命は,笹ではおおよそ50年,竹の類では100年内外です。
竹の年齢の10倍が人の年齢です。地下茎は2年(人の20歳)で筍が出ます。3,4年
の地下茎からは太いものが出ますので,このころが一番剛健なときです。
参考 「竹」法政大学出版局
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