08b 陸水散歩〈利水・治水と生態学〉
〈琵琶湖の総合開発と生態学〉
△問題の内容
琵琶湖の水資源を活用することとして,琵琶湖に堅田―守山の線で締め切り堰堤をつ
くって,南湖の水位変動をなくし,淀川の流量を一定に保つようにします。このために
北湖の水位を最高3mまで低下させるということです。
△調査結果の概要
「琵琶湖の生物資源をめぐって」からの調査概要を述べます。
・過去100年の水位記録から,平年+0.3m〜−1.2mと計算でき,20年に一度くらい−
3mに下がります。
・水位低下による影響は少ないかもしれません。ただ湖水は北湖→南湖の移動はあり
ますが,南湖→北湖の移動がなくなることに問題がありそうです。
・沿岸部とか内湖のプランクトンの量に変化が生ずると考えられますので,このこと
は子稚魚の生息場の見地から,重要になりそうです。
・エビモは増殖最盛期に湖水の最大減水期となるので全滅のおそれがありますが,他
の水草の現存量には格別の変化はないでしょう。
・水位低下により,沿岸に棲む水生昆虫の幼虫などは大きな影響を受けるでしょう。
・大底泥露出がなければ,貝類やエビ類の生産量には大きな変化はないでしょう。
・湖水分断でニゴロブナ,ゲンゴロウブナ,ホンモロコなどが移動できなくなり,水
位低下でアユ,ビワマス,ニゴロブナ,ゲンゴロウブナ,コイなどの産卵に大きな影響
を与えます。
・水位低下により,内湖や沿岸の浅いところの真珠やコイの養殖に影響を与えます。
〈水資源の開発と水質汚濁〉
水資源の開発や広域的総合的な水の高度利用は,水質汚濁につながる公算が非常に大
きく,また大量に取水されたものが汚水となって帰ってくるなどの問題があります。
結論として強調したいことは,取水(利水)と廃水処理は常に継ぎ目のよく通った,
途中でカットされないパイプラインとして実行してほしいということです。
参考 「川と湖の生態」共立出版 THE END
[次へ進む] [バック]