14 太古の面影探索への誘い〈化石の採り方〉
太古の面影探索への誘い〈化石の採り方〉
〈化石の採り方〉
極端にいえば,すべての露頭,すべての岩石を,ハンマーで叩き割るという努力を続
けているうちに,探し方のコツらしいもの,採り方のコツらしいものが会得されていく
でしょう。化石を発見した後,化石だけを小さく取り出そうと思わず,化石の周りの岩
石を含めて少し大きめに岩石ごと化石を,地層中から取り出すようにするのがよいでし
ょう。それには化石を取り巻いて溝を掘り,ある程度掘り下げてから,根こそぎ化石を
ほじり出すというようなやり方をします。掘り出された化石の周りに付いている岩石は,
室内作業で取り除くことになります。
母岩が新鮮であればあるほど良好な岩石標本が含まれているはずです。ところが,固
い地層,特に砂岩などから,大型化石をそっくり取り出すのは必ずしも容易なことがは
ありません。そのような場合には,付近のいくらかの風化の進んだ部分を探して採集す
るのがよいでしょう。
石灰質の殻は失われいることが多いですが,その内外面の特徴は雌型(mould)に印
象されています。外型(external mould)と内型(internal mould)を揃えて持ち帰り,
適当な印象材で雄型(cast)をつくれば,一つの個体の内外面の特徴を同時に知ること
ができます。
三畳紀やジュラ紀の剥離性に富む頁岩や粘板岩では,殻の内面と外面の特徴がともに
一つの面に印象されることが多く,膨フクらみの強い種類では変形が著しいです。層理面
や節理のよく発達した頁岩では,大型ゲンノウよりツルハシや金テコが採集に威力を発
揮します。また,ツルハシや金トコは泥岩中に存在する大型の含化石コンクリーション
の発掘にも欠くことができません。沢に転がっている大きな転石やノジュールなどを割
るには大型のゲンノウが使い良いです。これは,ゲンノウの重さを利用して石を叩き割
るという力の使い方です。
一般に,地層から採集した岩石標本について,頁岩や砂岩を層理面に平行に割って化
石を探すことが大切です。つまり植物の葉や多くの二枚貝の殻片やアンモナイトなどは,
地層面に平行して埋没していることが多いからです。節理や箭断面など層理と異なる面
が発達する砂岩や頁岩では,特にこのことに留意して採集すべきです。
個体発生を検討するには,多くの異なった成長段階を示す標本が必要です。しかし,
そういった標本が同一の地層中に揃って産出するということは,特に時代の古いもので
は,恵まれた場合に限られます。例えば,アンモナイトの幼殻ばかり集まっている地層
がしばしばあります。二枚貝の場合にも,殻の厚い種類がふるい分けられて,粗粒岩に
近接したより細粒の地層中に含まれることがあります。短命のものでは大量に死滅した
年齢や季節により成長段階の一定した個体が集まりやすいことや,死殻は堆積するまで
に水中で大きさによるふるい分けを受けることを示しているのでありましょう。個体が
成長に伴って多少移動するからといういうような場合もあるのかもしれません。
大型化石の採集の場合,同一産地をただ1回訪問することにとどまらず,事情が許せ
ば,2回以上数回の採集調査を行い,初回に不備であった資料を補うように努めるのが
常識でしょう。地質学的ないしは層序学的調査を主目的とする場合には,化石採集のた
めに必ずしも多くの時間をさくことはできませんけれども,化石採集を主目的とする場
合には,同一地点での採集に何日も費やすことがあります。大型脊椎動物化石の大規模
な発掘などはこの好例でしょう。このように日時をかけた採集調査により,普通の地質
調査では得られなかったような貴重な化石資料が得られた例は,古今東西を通じて多く
の実例があります。
参考 「化石鑑定のガイド」朝倉書店発行
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