04 樹陰に苔生す岩やその仲間〈地質学の歴史〉
 
         樹陰に苔生す岩やその仲間〈地質学の歴史〉
 
〈地質学の歴史〉
 イギリスの運河測量技師の一人,ウィリアム・スミス(1768〜1839)は,地層は水平
ではなく,水平に対してある角度をもっていることに気がつきました。「どの層にもそ
れに特有な生物の化石が含まれ,ほかの点では疑いがある場合でも,化石を調べること
によって,その層であることが分かり,それと似たほかの地層と区別することができた」
と書いています。
 ターレス(BC640?〜546?)は,自然以外になんの力にも頼らずに自然についての説明
を行った最初の人です。また,いかなる自然の元素が根本的元素であるかという問題を
考えた哲学者の人一人でもあります。ターレスは,すべての物の根元は水であって,す
べてのものは水に始まり水に帰すると考えました。
 幾何学の分野で有名なピタゴラス(BC582?〜500?)は,地質現象の解釈でもみのがす
ことのできない考察を行っています。
 @陸地はいつかは海になる。
 A海棲カイセイ貝類の化石が,現在の海からずっと離れたところに見いだされるのは,海
  がかつて陸地に侵入したことを示している。
 B谷は流水の力で削られてできたものである。
 C島はいつかは,三角洲の発達によって大陸とつながるようになった。
 D半島は分離して島になる。
 E平野は隆起して丘になる。
 F地球内部は非常に高温である。
 これらの見解は,現在においても立派に通用するものであり,自然は不変のままで永
久に存在するものでなく,いつも変化しているものであるという正しい見方がなされて
いることに注意すべきです。
 さて,わが国の”君が代”には「さざれ石(小石)の巌となりて苔のむすまで」と歌
われていますが,小石が集まって固結したものが礫岩であること,そのような事象はき
わめて長年月を要すること,すでに源三位頼政ゲンサンミヨリマサのこの古歌にみられるように,
われわれの祖先もまた自然現象を素朴な洞察力によって正確にとらえていたことが窺え
ます。
 18世紀になって,「すべての地層(岩石)は海洋に起源がある」という水成論者と,
「花崗岩や玄武岩は地球内部の溶融した岩漿ガンショウ(マグマ)が地層中に迸入ヘイニュウし
固結したものである」という火成論者の論争がでました。
 ゲーテはファウスト第2部(1832)の第4幕において,ファウストを水成論者,悪魔
メフィストフェレスを火成論者にみたてて議論させています。
 ライエルが1830年に出版した「地質学原理」において,「地質学は有機的及び無機的
自然界に起こった継起的な変化を研究する科学である。地表と地殻の構造を変形せしめ
た変化の原因を探求する科学である。」としたことに偉大さがありました。
 この地質学原理の思想は,ダーウィンに引き継がれて「種の起源」に反映されました。
 
                参考 「やさしい地質学」築地書館株式会社発行

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