04b 森林の土を掌に〈土壌の調べ方 その1〉
 
 △土色
 断面内に見られる多くの形態的特徴のうちで,土色は土壌の生成環境を最もよく反映
しています。
 一般に土色の判定は,断面調査時の水分状態における土壌の色を用いて示します。土
色の表色法は,色を色相,明度,彩度の3属性に分け,それらの組み合わせにより数量
的に色を表すマルセル式表色法は,調査者の主観が入る余地が少なく,また微細な違い
が表現できるうえ,再現性が高いなどの点で優れていますので,現在では広く国際的に
採用されており,わが国でも「新版標準土色帳(農林水産省農林水産技術会議監修1967
)」として採用しています。
 
             土色帳色片の配列例
 
         7.5YR        ・      7.5YR
                   ・                                      
   灰色  ・  浅黄橙   ・ 黄橙 ・
8/ 8/1  8/2 ・8/3 8/4  8/6 ・ 8/8 ・  8/  淡 褐灰  淡 橙   橙
                   ・                                      
   灰褐灰 ・ にぶい橙・ 橙 ・ 黄橙 ・明
7/  7/1  7/2 ・7/3  7/4 ・7/6 ・ 7/8  ・る 7/         灰 橙      
                   ・い                                  
  褐灰・灰褐・ニブイ橙  ・   橙   ・↑
6/ 6/1・6/2 ・6/3  6/4 ・6/6   6/8 ・  6/
                   ・                                      
  褐灰・灰褐・ニブイ橙  ・  明橙  ・
5/  5/1・5/2 ・5/3  5/4 ・5/6  5/8 ・  5/  褐 灰   灰 褐   明 褐
                   ・明                                    
  褐灰・灰褐・   褐    ・   |度
4/ 4/1・4/2 ・4/3  4/4  4/6 ・   ・  4/
                                     ・                                      
    黒褐 ・ 暗褐  ・      ・
3/ 3/1 3/2 ・3/3 *3/4 ・      ・↓ 3/    褐   暗 褐
                   ・                   
   黒 ・黒褐・極 暗褐・       ・暗
2/ 2/1・2/2 ・*2/3  ・       ・い 2/  黒
                                     ・                                      
  黒 ・               ・
1.7/ *1.7/1              ・ 1.7/
                   ・                                      
   /1  /2  /3  /4  /6  /8  ・    /1  /2  /3  /4  /6  /8   
 
 ・土色の由来並びに生成環境
 土壌の色は暗色系統,褐色系統及び灰色系統の三つに大別されますが,それは土壌中
における腐植及び鉄化合物の量や形態などと密接な関係があります。
 暗色系統の色は,主として動植物の遺体から土壌動物や微生物の作用によって二次的
に生成された暗色の有機物,すなわち腐植に由来する色で,その程度は土壌中の腐植の
含有率,すなわち腐植の生成や集積並びに分解作用などの進み具合と深いかかわりを持
っています。一般に湿性型土壌では,腐植の集積が進み,黒褐色のA層が厚いですが,
乾性型の土壌では腐植の生成及び集積があまり活発ではありませんので,灰〜黒褐色の
A層が薄いです。
 また高海抜地や高緯度地方などの寒冷な地域では,有機物の分解作用が緩慢で多量の
腐植が集積されるため,そのA層は温暖地方のものに比べて概して黒色味が強く厚いで
す。わが国の黒色土は火山灰に由来し,土壌中のアロフェンが草本植生による多量の腐
植と結合することによって生成されたと考えられています。
 褐色系統の色は主として鉄化合物に由来します。これは造岩鉱物などに含まれていた
鉄が風化作用により土壌中に遊離したもので,水といろいろの程度に結合した加水酸化
鉄の形態のものが多いです。そのうち褐色森林土など褐色を呈する土壌に含まれている
加水酸化鉄は,一般に加水度が高く結晶化が進んでいませんが,黄色土や黄色系褐色森
林土など黄褐色を呈する土壌のものはかなり加水度が低く結晶化が進んでおり,さらに
赤色土や赤色系褐色森林土などが赤褐色を呈する土壌中のものは非常に加水度が低く最
も結晶化が進み,一部のものは結晶水を持たない酸化鉄,いわゆる赤鉄鉱になっていま
す。
 灰色系統の色は,主として土壌を着色している腐植や鉄が溶脱されたり,あるいは鉄
が還元され2価鉄になったため,珪酸などの無色鉱物の色が現れたものであり,後者の
場合は2価鉄化合物のため青色味を帯びることがあります。
 
 △A0層
 適潤性〜弱湿性のところでは植物遺体の分解が速やかに進行しますので,F層やH層
は発達せず,植物遺体が粗に堆積したL層のみが見られ,その下にA層が発達します。
このようなA0層の形態をムルと呼びます。
 一方寒冷多湿なところでは,L,F,H各層とも良く発達します。このようなA0層
の形態をモルと呼びます。
 乾燥や寒冷多湿の程度が弱まると,A0層の発達も弱くなり,その状態がムルとモル
の中間的なものとなるA0層の形態をモダーと呼ばれ,酸性の度合いや可給態養分量並
びに肥沃度も両者の中間であり,乾性〜弱乾性の土壌型などによく見られます。
 
 △腐植
 土壌有機物はA0層として地表に存在するほかに,黒褐色の非晶湿物,いわゆる腐植
として鉱質土層中に存在します。
 この鉱質土層中に存在する腐植の量は,土壌の色とかなり相関が高いので,野外にお
いては土色の暗さの程度により,おおよその腐植含有率を推定して「乏し」,「含む」,
「富む」,「すこぶる富む」の4段階に区分しますが,正確には実験室において化学分
析します。
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