09 こんにちは昆虫たちよ〈有害動物〉
 
         こんにちは昆虫たちよ〈有害動物〉
                                       
〈ダニ類〉
 ダニは節足動物門,蛛形綱,ダニ目に属し,顎体部,胴体部とからなり胴体部に4対
(幼虫は3対)の脚を有し,他の多くの節足動物にみられる体節制はほとんど消失して
います。ダニ類を研究する分野をダニ学といいます。一般に動物に寄生するダニをハダ
ニと呼び,動物に寄生するものをマダニと呼びます。そのほかハダニの天敵となる捕食
性のダニ,貯蔵食品に発生するダニ,昆虫に寄生するダニなどがあります。
 ハダニは葉の細胞(一般に柵サク状組織)に口器を挿入して細胞の内容物を吸収します。
したがって加害(ミカンハダニ)を受けた細胞は萎み,内容物は凝固して葉緑粒は減少
し,しばしば白い斑点として残ります。
 ハダニ類は一般に卵,幼虫,第1若虫,第2若虫を経て成虫になります。大部分のハ
ダニは雌雄が存在しますが,受精卵が発育したものは雌となり,未受精卵が発育したも
のは雄となります。したがって雌は倍数体ですが,雄は半数体となります。
 ミカンハダニは雌の体長450μ内外,卵は赤色で上面中央に1本の柄があり,ここか
ら葉面へ放射状に10本内外の糸が張られます。柑橘カンキツ,ナシ,モモ,クワ,ビワに寄
生し,カキ,リンゴ,サンゴジュ,カボチャにもつきます。10月の地面温度18℃の線以
北のものは休眠します。
 リンゴハダニは雌は暗赤色で体長410μ内外,卵は赤色で放射状の糸は張りません。
リンゴ,ナシ,オウトウ,スモモ,アンズなどのバラ科植物に寄生し,冬は休眠します。
 ナミハダニは雌体長580μ内外で淡黄ないし淡黄緑色,胴部の左右に顕著な黒紋を持
ちます。果樹,野菜,花卉,林木,野生植物などの極めて多数の植物に寄生します。特
にリンゴ,ナシ,ブドウ,ダイズ,ナス,キュウリ,スイカ,イチゴ,クワの害は著し
いです。
 カンザワハダニ雌はくすんだ赤色,体長530μ内外,チャ,ナシ,モモ,リンゴ,柑
橘,クワなどのほか,ナス,ダイズ,サトイモ,イチゴ,ウリ類,イネ,トウモロコシ
など種々の花卉にも寄生し,特にチャの重要な害虫です。
 そのほか,ニセナミハダニは施設の花卉類を加害し,スギノハダニはスギの重要害虫
です。
 上記のハダニ以外にもヒメハダニ科のブドウヒメハダニ,チャノヒメハダニなどがそ
れぞれの作物を加害し,ミカンサビダニは柑橘の重要害虫です。
 各種球根類にはネダニは雌の体調700μ内外,胴部は乳白色,顎体部,脚は赤褐色で,
ユリ,チューリップ,タマネギ,ラッキョウ,ヒヤシンス,スイセン,グラジオラスな
どの球根を加害し,菌との複合病が知られています。
 なお衛生方面ではツツガムシ,イエダニ,家畜害虫としてマダニの害があります。
 ハダニは年間世代数が多く.抵抗性の発達が著しいので,薬剤のローテーションや混
合剤の使用も工夫されています。
 ハダニの天敵は多く,特にチリカブリダニは捕食力が高く,施設内でのハダニの生物
的防除に有効であり,薬剤抵抗性カブリダニの総合防除への使用も試験されています。
                                                                              
〈線虫類〉
 線虫類は線形動物門に属し,昆虫類につぐ大きな動物群で水生,陸生,動物寄生性,
植物寄生性,自由生活性など,あらゆる生活型を持っています。動物寄生性のものは一
般に大型で人に寄生する蛔中,蟯虫や,家畜や昆虫に寄生するものもあります。植物に
寄生する線虫は植物寄生線虫といわれ,一般に小型で体調0.5~1.5mm内外で,円型,放
射対称,ミミズ型ですが,体節制はありません。線虫それ自体として作物に被害を与え
ますが,さらに病原菌と共存して複合病を起こすことも少なくありません。
 線虫の防除法は線虫の種類によって異なりますが,種子につく線虫(コムギツブセン
チュウ,イネシンガレセンチュウ)などは種子消毒(加熱処理),土壌に棲むものに対
しては,輪作や抵抗性品種の利用,天敵の利用を考えるとともに,殺線虫剤による防除
が行われています。
 わが国の主要線虫類のうち,特にジャガイモシストセンチュウは1972年はじめて北海
道で発見されたもので侵入害虫として重要です。マツノザイセンチュウはマツノマダラ
カミキリにより,マツの激害型枯損を起こすことで重要です。
                                                                              
〈その他の有害動物〉
 有害哺乳類では,ネズミ類として家屋内ではドブネズミ,クマネズミ,ハツカネズミ
があり,農林地では前記のほかハタネズミ,アカネズミ,エゾヤチネズミが害を与えま
す。ネズミは農作物や貯蔵穀物を害食するほか,細菌性疾患の媒介者(鼠咬症)にもな
ります。
 ノウサギの被害は林地に多く,幼齢木の中心枝の切断,樹皮の食害では大きな被害が
でることもあります。そのほか野兎ヤト病への家畜感染があります。
 イノシシやシカは山間地の山田や山畑の被害があり,シカは林業上にも重要です。
 鳥類としてはスズメ類,ハト類,カラス類,ムクドリ類,ヒヨドリの果樹園,食用作
物への被害が著しいです。
 腹足類のカタツムリ,ナメクジなどは施設園芸に被害を与えます。
 
               引用 「新応用昆虫学 -改定版-」 朝倉書店発行

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