27a 緑化と微生物〈連作障害〉
 
〈土壌微生物相制御の基本〉
 これまでは土壌の微生物相は,人為的に制御できないと思われてきました。その主な
理由は,自然界には天文学的な数字の微生物の種類と数が存在し,実験室や限られたと
ころで成功しても,一般に広く普及することは困難であるということです。
 対症療法に微生物の拮抗作用を活用する場合は,被害部や予防的接種が中心となりま
すが,土壌全体の悪化を防止するという観点に立てば,新たな展開が可能となってきま
す。空気や水や土壌の浄化力の高い木炭やゼオライトが土壌改良材として再認識される
ようになったのは,主として土壌汚染の除去能力です。いずれもイオン交換能力や抗酸
化性に優れているため,イオン化し有害化した各種の無機物質を分子状すなわち非イオ
ンの状態にする力があります。したがって,菌根菌が木炭やゼオライトの存在下で急速
に活性化するのもそのためです。
 πウォーターやイオン水や磁気処理水なども類似の効果が認められますが,直接的な
肥料効果や物理的改善効果がないにもかかわらず,作物が健全に育つ場合は,すべて土
壌の汚染除去と連動していると理解すべきものです。
 筆者の開発した有用微生物群であるEMは,連作障害や病害虫多発土壌において著し
い効果が認められています。その作用機作は有機物の有用発酵による可溶成分の円滑な
増加と,その第二次代謝物質である各種の活性ホルモンや抗酸化物質による土壌の肥沃
化と浄化作用によるものです。
 
〈生き返った香川県善通寺のマツ〉
 マツの名所香川県善通寺の天然記念物について,EMによる方法と,農薬による方法
を実地に行ったところ,農薬で対処した松くい虫のマツは枯死しました。EMを十分に
施用した自主管理のマツは赤茶けた枝全体に新芽が発生し,回復しました。
 EMには食菌性,寄生性にかかわらず,すべてのセンチュウの増殖を抑制する力があ
ります。そのうえ,多様な生理的物質や抗酸化物質を生成するため,土壌を浄化し植物
全体を活性化する力に優れています。EMはすでに世界41カ国で普及している,安全性
及び信頼性の極めて高い微生物です。
 
〈EMによる緑地管理法〉
 前述のように,単純な人工植栽の土壌微生物相は放置すれば徐々に悪化します。その
結果腐敗性の微生物が中心になれば,地下部の機能が不全になり,病害虫の被害が著し
くなってきます。この段階に至っては農薬は必然的なものでありますが,地下部の微生
物相を発酵及び合成型の微生物を中心とする微生物相に転換できれば,農薬は不用とな
ります。
 農薬の現場においては,EMによる無化学肥料無農薬はすでに常識であり,トータル
コストとしては1/2から1/4以下です。有機物も収穫残渣や生ごみや緑肥などがよ
く,堆肥を作る必要がありません。
 極論しますと,公園や街路樹管理の過程で発生する雑草や枝打ちされた粗大有機物を
その場でチッパーにかけ,敷き詰めた後にその上からEM1号液と糖密を500倍にし,
全体が十分に温めるように散布するだけです。堆肥や中耕も不要です。
 このようにすれば,発酵液で雑草の発生を押さえるばかりか,ごみ減量効果と土壌の
改良及び病害虫抑制のほかに様々な余得があります。液状散布が困難であれば,米糠や
油糟でEMを増やし,それを(ボカシ)トラッシュの表面にバラまいてもいいです。い
ずれの方法にせよEMの密度を高めさえすれば著しい効果があります。
 松くい虫対策にかかる個々の特定のマツについては既述のとおりですが,森林の場合
は糖密でEMを活性化した後,降雨後(梅雨期)に航空散布をしますと効果的です。い
ずれも梅雨期に集中的に数回散布しますと,土壌中のフザリウムの密度が著しく低下す
るため,農薬に代わる全く安全な新手法となる可能性は大です。

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