24 やぶ〈薮ヤブとは〉
             やぶ〈薮ヤブとは〉
                                       
                    やぶの中には,キイチゴなどの美味しい果
                   実がありました。キノコがありました。そし
                   て,アシナガバチの巣がありました。
                    秋田のやぶは,必ずといっていいほど「バ
                   ラの刺」のあるやぶです。
                    農林出版発行の斎藤基夫氏著「やぶ」を参
                   考に,薮ずくしです。         SYSOP
 
〈薮とは〉
 「やぶ」とは,人間の意思の働かない自然界の現象として,タケ類が勝手に山野に群
がり,はびこっている状態のものをいいますし,「竹林」とは,人間が竹材又は筍タケノコ
を生産する目的をもって育成し,いわゆる肥培管理(竹林のほか,人工の森林の場合も
あります SYSOP)しているものをいいます。すなわちこれを要約しますと,「やぶ」と
は「自然にできたもの」であり,「竹林」とは「人間が作ったもの」ということになり
ます。
                                       
〈”やぶ”の方言〉
 やぶから 薮。 やぶ。 青森・岩手県釜石・秋田県鹿角・山形
 やぶごっそ 叢。やぶ。 高知
 やぶっから 薮。やぶ。 千葉県長生
 やぶっかや 薮。やぶ。 長野県上水内・茨城県新治・千葉
 やぶろ やぶ。薮。叢。 大分県大野
 やぶくろ 薮。くさむら。長崎県樺島・対馬
 やんざ 山林などの潅木などが乱れ茂ったところ。愛媛県大三島
 
〈"やぶ"という名の「人物」〉
 △薮医竹庵ヤブイチクアン
 ご存知「ヤブイシャ」の異名を持つ薮医竹庵がいます。
 △薮鶴堂ヤブクワクダウ
 儒者,名は平,字は太平,平三と称す。古希の後平曳と称す。淡州福良の人,大阪に
住す。
 △薮狐山ヤブコザン
 肥後熊本藩の学職,名は愨カク、字は士厚,狐山はその号,また朝陽山人と号す。通称
茂次郎,震庵の子,少なくして力学博く経史に渉り能く詩文を属す鬱然名あり。
 △薮震庵ヤブシンアン
 肥後熊本藩士,名は弘篤,震庵はその字,後慎庵と改め久右衛門と称す。
 △薮中茨之助ヤブナカイバラノスケ
 勇士,尼子十勇士の一,もと播磨国宝明神の祠官主水正の子,卯之助と称す。
 △薮六右衛門ヤブロクエモン
 陶工,加賀小野村の人,天保12年肥前有田焼に倣ひて築窯し,染付磁器を出だせり,
文化3年五国寺村松谷の土砂を発見するに及んで,ややその良好なるものを作り九谷染
付業に貢献する所ありき。
 △薮田岩松ヤブタイワマツ
 三重県出身の実業家,元安田銀行支配人。
 △薮氏ヤブウジ
 本姓藤原氏。閑院家の一門。
 △薮内流ヤブノウチリュウ
 茶道の一流派。
 △薮野椋十ヤブノムクジュウ
 著述家・新聞記者。佐賀県出身。渋川玄耳(本名は柳次郎)の別号。
 △薮柑子ヤブコウジ
 物理学者寺田寅彦博士の別号(ペンネームは吉村冬彦)。
 △薮常夫ソウツネオ
 元広島県林務部勤務
 △ブッシュ(仏手ブッシュ,ルイス・ブッシュ氏)さん
 英国人。元山形高校英文科教授。
 
〈その他〉
 △”やぶ”という名の「人間状態」
 ・やぶにらみ:薮睨
 ・やぶいも:水痘の異名。ミヅイモ。ミヅバウサウ。
 ・やぶこ:私生児。
 ・竹林の七賢:老荘虚無の学を崇尚して礼法を軽蔑した隠者。
 ・竹林の七妍ケン:竹林に七人の美人を描いた浮世絵(風俗画)。
 △”やぶ”という名の「職業・営業」
 ・薮医者:医術のまずい医者。
 ・薮奉行・筍奉行:藩政において,竹林担当の奉行と,筍担当の奉行。
 ・薮蕎麦ヤブソバ:甘皮の色を入れた淡緑色の蕎麦切(更科そばは白い)。
 ・天ぷら”やぶ”:”やぶ”という天ぷら屋。
 ・やぶ旅館:東京浅草の「やぶそば」に由来する,長野市にある旅館。
 △”やぶ”という名の「作業」
 ・薮巻法:雪害を防ぐために,竹林の立竹を十数本ずつ地上2〜3尺のところから梢
  端部の方まで,縄でぐるぐる巻きにして縛り上げておく方法。
 ・やぶやき:焼畑ヤキハタ(林地上の雑木・雑草を焼き,そのままの跡地に穀類を作付け
  すること)のこと。
 ・やぶきり:切替畑のことで,3〜5年間作物栽培し,地力が衰えるとそのまま放置
  して森林原野とし,それを繰り返すこと。
 ・薮出し:伐倒して丸太にしたものを運搬しやすいように集材すること。
 ・やぶ退治:薮を退治して健康な森林を造成すること(筆者)。
 △”やぶ”という名の「民俗」
 ・薮入り:江戸時代,正月十六日とお盆に奉公先から実家へ帰る(宿さがり,宿おり,
  宿入り)ことで,弥生入とか,養父入という。
 ・薮神:村落の一隅に祠られ,祟りをなして祭を要求する小神。
 ・薮役:旧藩時代の立木竹などに賦課する税金。
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