18 植物の見方2
植物の見方2
参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
〈植物の形カタチ〉
●ラウンケアの生活形
植物の生活形については,デンマークの植物生態学者ラウンケア(1905)が考案しま
した生活形分類がその一つで,現在一般に広く用いられています。植物の生育が最も不
適な時期に,休眠芽キュウミンガがどの位置で過ごしているのかを次のように類型化しまし
た。地域の植物相における生活形の割合を調べ,生活形標準表と比較することによって,
その土地の植物気候を決めるのに有効です。生活形基準表は世界中から1000種を無作為
に選んで生活形の占める割合を百分率で表したものです。
地上植物(Ph):休眠芽が地上から30p以上のところにあるもので,ブナ,モミなど
の巨木からウグイスカグラ,コウヤボウキなどの低木までがこれに含まれます。またサ
ボテンのような多肉茎植物(S),地上植物の表面や岩上などの着生植物(E)もこれに
含めることもあり,別に扱うこともあります。
地表植物(Ch):休眠芽が地表30p以下にあるもので,例えばフユイチゴ,ナワシロ
イチゴ,コマツナギ,ネコハギなどがあります。
半地中植物(H):休眠芽が地上すれすれにあり,枯れ葉や雪で保護されているもの
で,イチヤクソウ,オオバコ,スミレ,オミナエシなどがあります。
地中植物(G):休眠芽が土の中にあるもので根茎コンケイや塊根カイコンなども含まれます。
ヨモギ,ヌスビトハギ,カラスウリ,キキョウ,ヒルガオなどがあります。水生植物(
HH)もこれに含めることもあり,別の扱いをすることもあります。水生植物にはヨシ,
オモダカ,ヒルムシロ,ハスのような抽水植物やアマモ,トチカガミ,タヌキモのよう
な底生植物があります。
一年生植物(Th):種子で越冬するもので,スベリヒユ,ナズナ,ニシキソウ,ヤブ
ジラミなど一年草にその例がみられます。
●根,地下茎
種子から発芽したときにでた根がそのまま生長して太くなったものが主根シュコンで裸子
植物や双子葉類に見られます。主根から分枝ブンシした枝を側根ソクコンといいます。単子葉
類では主根も側根も区別がなく,多数の根を束生ソクセイしますがこれをひげ根と呼んでい
ます。根が肥大して養分を蓄える役をするようになった根を貯蔵根チョゾウコンといい,ダイ
コン,サツマイモ,ヤマノイモに見られるように特殊な形に変形しています。球状に肥
大したものを塊根といいます。地上の茎から空中に伸びる根を気根といい,着生ランに
見られます。気根が地中へ入り茎を支持する支持根シジコン,つる植物で茎から細い根を出
して他物に絡まる付着根フチャクコン,根が他の植物へ食い込んで養分を取る寄生根キセイコンなど
があります。
地下茎にもいろいろ変形しているものがあります。地中を横に這うものを根茎(アマ
ドコロなど),球形に肥大し多くの芽を持つ塊茎カイケイ(ジャガイモ),球形で少数の芽
を持つ球茎キュウケイ(テンナンショウ属など),多数の鱗片リンペンに包まれます。鱗茎リンケイ
(ユリ属など),膜質外皮に覆われた外皮鱗茎(タマネギなど)などがあります。
●葉の名称と葉形
完全な葉は葉身ヨウシンと,葉身と茎を繋ぐ葉柄ヨウヘイ及び托葉タクヨウの3部分から成り立っ
ています。しかしときにその一部又は殆ど全てが退化して無くなっているものがあり,
その大部分が退化したものが鱗片葉リンヘンヨウです。葉身には中央に太い1個の脈があり,
これを特に中軸チュウジク又は中肋チュウロクといい,それから側脈ソクミャクが分かれ,更に細脈サイ
ミャク(小脈ショウミャク)が網の目状に広がって終わります。葉柄は葉身を支え茎に接している
部分ですが,葉柄の無い(無柄ムヘイ)種類も多いです。葉身と茎の間を結び水や養分など
の通路となるほか,葉身を太陽の光の方向へ向けたり,葉の重なり具合を調節するなど
の働きを持っています。
托葉は葉柄の上又は葉柄の基部付近の茎の上に付きますが,また托葉を欠く種類も多
いです。托葉の数や形,質,付く位置などは種類によって異なっていますので,種類を
識別する上で重要です。ミヤコグサ,アカネ,ヤエムグラのように葉身と同形同質のも
の,カラスノエンドウ,サクラ類,バラ類,スミレ類のように葉柄の基部付近に付いて
鱗片状となるものなど様々です。ほかに茎を抱く托葉や対生した葉柄と葉柄の間に生ず
る葉柄間托葉(葉間托葉ともいいます)もあります。タデ類の托葉は鞘サヤになって茎を
包み,葉鞘ヨウショウと呼んでいます。
葉身の外形はいろいろな名称で呼びます。これはまた托葉,苞ホウ,萼片ガクヘン,花弁な
ど扁平な部分の形を表すのにも用いられます。
上下の幅がほぼ等しいものは幅によって線形センケイ,広線形コウセンケイ,楕円形,長楕円形
チョウダエンケイ,広楕円形コウダエンケイといいます。下部の幅が広く,上部の幅が狭くなって行く
ものは披針形ヒシンケイ,長楕円状披針形,卵形ランケイ,広卵形,長卵形,ひし形状卵形,心臓
形シンゾウケイ,腎臓形ジンゾウケイといいます。これを逆にした形は上部の幅が広くなるもの
で,倒披針形,倒卵形,倒心臓形などというように「倒トウ」を付けて表します。
剣形はアヤメの葉のように先が刀剣トウケン状をなすもの,針形シンケイは針葉樹の葉のよう
に細く先が鋭く尖るもの,楯タテ形はハスやサトイモのように葉身の中央部に葉柄の付く
もの,ほこ形はかつては戟ゲキ形とも呼び,基部の耳が尖って横に張り出します。矢じり
形はかつて箭セン形とも呼び,基部の耳は尖ってその先が下を向くもの,へら形は長楕円
形の下部が次第に狭くなり匙サジ形となります。
葉身の先端は別に葉先ヨウセン又は葉端ヨウタン,基部は葉脚ヨウキャクともいい,葉先や葉脚の角
度がその植物の特徴を表すことが多いです。
葉先や葉脚は角度により,切セツ形,円形,鈍ドン形,鋭エイ形,鋭尖エイセン形などが用いら
れます。葉先には特に「頭」を付け,切頭セットウ,円頭エントウ・・・・・・などと呼ぶこともあり
ます。葉先で先が窪むものに凹頭オウトウ,微凹頭ビオウトウ,小凹頭ショウオウトウ,短く突出するも
のに凸頭トツトウ,微凸頭ビトツトウなど,他に尾のように伸びる尾ビ形,刺状トゲジョウに尖る芒
ノギ形などがあります。基部の形には心臓形,ほこ形,矢じり形,斜形,耳ミミ形,くさび
形があります。斜形は左右の形が異なります。耳形は人の耳に似たもの,くさび形は上
部が広く,基部は次第に狭くなる形です。
[次へ進んで下さい]