06a 森林機能保全:渓間工事
 
11 重力式治山ダムの天端厚
                                       
(1)重力式治山ダムの天端厚は,流送砂礫の大きさ,越流水深,上流側の勾配等を考
  慮しなければならない。
(2)天端厚は,次の厚さを標準とする。
  @一般荒廃渓流では1.5m
  A洪水により大転石の流下のおそれのある場合は2.0m
  B大規模な土石流発生のおそれのある場合,及び地すべり等により制圧を受けるお
   それのある場合は2.0〜3.0m
  Cシラス等流送砂礫の粒径が小さい小渓流では0.8m
                                       
12 重力式治山ダムの安定計算
                                       
 重力式治山ダムの断面は,次の条件を満たすものでなければならない。
(1)転倒に対して安定
   自重及び諸外力の合力の作用線は,原則として堤底内中央1/3内にあること。
(2)滑動に対して安定
   滑動に対する抵抗力の総和は,原則として水平外力の総和以上であること。
(3)堤体の破壊に対して安定
   堤体各部に作用する応力度は,堤体各部を構成する材料の許容応力度を超えない
  こと。
(4)基礎地盤の支持力に対して安定
   堤底に生ずる最大圧縮応力が,基礎地盤の許容支持力を超えないこと。
                                       
13 治山ダムの水抜き
                                       
 治山ダムの水抜きは,その目的を考慮して,数,大きさ及び設置個所を定めるものと
する。
 水抜きの位置,大きさは堤体の弱点とならないようにしなければならない。
                                       
14 本ダム,副ダムの間隔
                                       
 本ダムと副ダムの間隔は,本ダムの有効落差に越流水深を加えた高さの1.5〜2.0倍を
標準とする。
                                       
15 治山ダムの水叩き工
                                       
 @治山ダムの水叩き工の長さは,「本,副ダムの間隔」に準じて決定するものとする。
 A治山ダムの水叩き工の厚さは,原則として0.5〜1.5mの範囲とする。
                                       
                                       
U 護岸工
                                       
1 護岸工の目的と位置
                                       
 護岸工は,渓岸の横侵食防止及び山腹崩壊の防止,又は山腹工作物の基礎とすること
を目的として計画する。
                                       
2 護岸工の種別
                                       
 護岸工に使用される材料は,コンクリート,コンクリートブロック,石材(雑割石,
野面石),枠材(コンクリート枠,鋼枠),鉄線かご(フトンかご,蛇かご),木材等
があり,種別は,それらの材料名を冠して呼称される。
 例:コンクリート護岸工,練石積護岸工,鋼枠護岸工,木柵護岸工など
                                       
3 護岸工の高さ
                                       
 護岸工の高さは,計画最大高水位に余裕高を加えた高さとし,余裕高は流路工に準じ
て決定する。
 また,流送される土石の量が多く渓床変動の激しい渓流では,渓床の上下変動に対応
できる高さを確保する必要があり,更に曲流部の凹岸又は水衝部では,洪水時に水位が
上昇するとともに局部的な洗掘が発生するので,充分に高くするとともに根入れを深く
する必要がある。
 山腹工の基礎となる護岸工の高さは,以上述べた点のほかに山腹工の計画縦断形を充
分検討し,土留工との関連を考慮して決定しなければならない。
                                       
4 護岸工の構造と基礎
                                       
 護岸工の構造は,柵護岸工(木柵・編柵等)や蛇かごを渓流に直角方向に伏設する場
合を除き,原則として土留工に準ずるが,水抜き孔は平水位線より上部に,下流向きに
設け,流水が容易に侵入しないようにする。
 コンクリート護岸工,又は練積護岸工(コンクリートブロック,石材)には,コンク
リートの収縮,又は不等沈下等によるキレツの発生に対応するため,10〜15m間隔で縁切
(伸縮目地)を設ける。
                                       
                                       
V 水制工
                                       
 水制工は,荒廃渓流において,流水の方向を変えて横侵食を防止する,流速を緩和し,
土砂を堆積させて護岸工の基礎を保護する,流路幅を限定して乱流を防止し,横侵食を
防止する等の目的で計画される。
 渓岸に接する崩壊地で,渓流沿いの延長が短い場合には,崩壊地の上流部に,1基の
下向きの非越流の水制工を設け流水を崩壊地から遠ざける。
 渓流沿いに延長の長い崩壊地の場合には,直角水制工とし,非越流又は天端を流心に
向けて傾斜させ,連続して設置する。
 水制工には,使用する材料によって,コンクリート水制工,コンクリートブロック水
制工,枠水制工等があるが,常に流水及び転石等の衝撃を受ける状態にあるため,流量
及び流下石礫の状況を勘案し,十分な断面と強度を確保しなければならない。また,水
制工を築設すると,渓流の水理環境に大きな変化が生じるので,その効果の確認及び周
囲への影響状態については常に注意して観察し,状況に応じて必要な対策を講じなけれ
ばならない。
                                       
                                       
W 流路工
                                       
 流路工は,荒廃渓流の下流堆積地において渓岸侵食が激しい場合,又は,崩壊地の下
流部等で縦侵食とこれに伴う横侵食が活発な場合等で,他の工法では侵食を防止するこ
とが不可能又は不適当な場合に計画される。
 流路工は,渓床の縦断勾配を規制する床固工,渓床の固定と護岸工の安定又は三面張
り流路工における地下水路の発進を防止するための帯工,及び渓流の両岸を保護し流路
を規制する護岸工とを総称した工法である。流路工は,上流山地がある程度整備された
後に施行されるのが原則であり,著しく土砂が流送される状態では,流路工内に土砂が
堆積し,流路断面が不足して工作物が破壊される原因となる。
 流路工の設計に際して,最も慎重に検討しなければならない点は,流路工内における
渓床の変動であり,特に縦断方向の渓床変動を小さくし,局所洗掘や異常堆積が発生し
ないようにすることが重要である。設計の手順は,次のとおりである。
 @計画最大高水流量の算出
 A法線の決定
 B計画高水位・流路工の縦断形及び横断形の決定
 C構造物(床固工・帯工・護岸工)の設計
計画最大高水流量は,治山ダム工に準じて算出する。

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