05c 森林機能保全:山腹工事
(4)実播工
実播工は,山腹斜面に直接草本類や木本類の種子を播種して,緑化を図る場合に計画
する。
実播工を,導入形態,施工形態に応じて大別すると次のようである。
@導入形態によって,筋実播工(斜面に溝を切って種子と肥土を混合したものを播く
方法)と,面実播工(斜面全般に手で播き,その上をわらやむしろ等で覆う方法,
種子と肥土及び侵食防止剤等を同時に又は別々に吹き付ける方法)に分けられる。
A施工形態によって,地上散布(ポンプ及びガンによる方法)と,空中散布(航空機
による方法)に分けられる。
実播工の播種方法には,@草本類種子のみを播く方法,A木本類と草本類を混播する
方法,B木本類の種子のみを播く方法とがある。
木本類種子と草本類種子の混播では,混播比率,導入種類が適切でないと,木本が草
本類に被圧されて枯死する場合がある。播種する場合は,草本類と木本類の組合せ,播
種比率,播種量,播種時期等について十分検討する必要がある。特に播種時期について
は,地域における気象条件,土壌条件などを考慮して,適期に施工することが肝要であ
る。
A 筋実播工
筋実播工は,斜面や階段に溝を掘って基肥を置き覆土し,その上に種子を播き付
ける(種子,肥料が展着している二次製品もある)工法である。一般には,階段上
とか比較的傾斜の緩い堆積土砂の斜面に計画される。
B 斜面実播工
斜面実播工は,原則として崩壊地の傾斜が緩やかで湿潤な土砂の堆積地など,土
壌条件の良好な個所に計画される。
斜面実播工は,種子,肥料,土を混合して,それを直接斜面に散布する場合と,
水を加えて液状にして播く場合があるる
(5)吹付工
種子吹付工は,土壌条件や地形条件などから他の実播工では困難な場合,また経済的
に有利である場合等に計画される。この種の工法には,種子,肥料,展着材及び養生材
を用いる普通吹付工と,植生の生育基盤材を厚く吹き付ける特殊吹付工とがある。施工
地の土壌条件に応じて生育に必要な基盤造りと同時に,播種が可能であることから近年
は多用されている。
普通吹付工は,土壌条件の比較的良好な斜面で,混入する展着材で種子の流亡を防止
できるような個所に計画する。また,特殊吹付工は,亀裂の覆い岩石,石れきの多い急
斜面等で土壌条件が悪く,相当量の基盤を必要とする個所などに計画する。
(6)伏工
伏工は,階段間斜面が降雨によって破壊されたり,また凍土霜柱等によって斜面の崩
落のおそれのある場合に,斜面保護のために施工される場合と,実播種子の流亡を防止
することを主目的として施工される場合とがある。両者とも斜面植生の発芽,生育や侵
入を容易にし,植物による斜面の安定及び固定を図ることを目的に計画する。
A そだ伏工は,凍上,霜柱が発生し易い寒冷地帯で最も効果的な工法である。そだ
は縦に使用すると,それに沿って雨裂が発生し易いので横使いを原則とする。
B むしろ伏工は,凍上,霜柱等が著しい斜面における表土の崩落,寡雨乾燥地帯及
び軽しょうな土質地帯等における表土の流亡等を防止するために計画する。
C わら伏工
わら伏工は,崩壊斜面の水分の蒸散を防止するとともに,実播工,吹付工等の種
子の発芽を促進させたり,流亡を防止するために,軟弱な斜面や浮土斜面,あるい
は階段間斜面を稲わらで被覆するものである。
D 網伏工
網伏工には,崩壊地の階段間斜面や整地した斜面に網を伏せ,その上に実播工,
吹付工を実施する場合と,斜面勾配が急で落石や崩落を防止する場合とがある。寒
冷地や急斜面の個所では,凍土,霜柱,降雨によって植生が崩落するのを防ぐ有効
な工法である。
E 二次製品を用いた伏工
二次製品を用いた伏工を計画する場合は,斜面の土質,地形条件,気象条件等を検
討し,最も適切なものを選定する。
(7)植栽工
植栽工は,植栽地の土壌及び環境条件に十分留意し,最も適切な樹種及び植栽本数を
計画する必要がある。植栽施工地は,一般には土壌条件の悪い場合が多い。土壌改良,
施肥,植栽方法については,立地区分に応じて決める必要がある。
植栽樹種は,環境条件を十分検討し,生長力が盛んでよく繁茂し,根張りがよく土壌
の緊縛能が大きいものがよい。また,せき悪地,乾燥,寒害,虫害等に対しての適応性,
抵抗性が大きく,土壌改良効果が期待できるものを選定するとよい。
一般に用いられる主な植栽樹種は,次のとようなものがある。
主林木 :アカマツ,クロマツ,エゾマツ,トドマツ,スギ,ヒノキ
肥料木等:ハンノキ,ヤマハンノキ,ヤシャブシ,ヒメヤシャブシ,ヤマモモ,ヤナ
ギ類,ニセアカシヤ,イタチハギ,グミ類,ウツギ類,ハギ類
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