11 さくら/樹木の成分と効用
 
            さくら/樹木の成分と効用
 
                     参考 森林総合研究所所報 NO.55 '93-4
 
 サクラはバラ科サクラ属サクラ亜属に分類される一群の樹木の総称であって,サクラ
という特定の種はありません。植物分類学上ではサクラ属はスモモ,モモ,サクラ,ニ
ワウメ,ウワミズザクラ,バクチノキの6亜属に細分類されます。亜属のなかはさらに
近縁の種の集まりである節にまとめられ,サクラ亜属はサクラ節ほか6節,スモモ亜属
はアンズ節ほか2節に分けられています。植物の代謝する成分で植物の類縁関係を系統
付ける学問を化学成分分類(ケモタクソノミー)といいます。中略
 サクラ成分の効用としては葉,樹皮,花の利用があります。オオシマザクラの若葉は
サクラ餅を包む皮用に塩漬け品が出荷されています。生産量は西伊豆地方6社で年間約
6万缶(5000枚入り/缶)あります。香り成分はクマリンで,生葉ではβ-グルコシルー
オルトークマール酸として存在していて匂いませんが,加工中にクマリンへ変化して匂
うようになります。紅葉,乾葉も同じ仕組みで匂います。最近,ウワミズザクラ葉から
プルヌノールA,Bなる強力な抗酸化物質が発見され,新しい抗酸化剤の開発が期待さ
れています。ヤマザクラ及び近縁種のコルク層を除いた樹皮はサクラ皮(オウヒ)と称
し,鎮咳,解毒薬製造用に徳島,宮崎,鹿児島などで採取されています。成分としてサ
クラニン,グルコゲンカニンなどのフラボノイドが知られています。サクラ樹皮は天然
染料としても使用されてきましたが,フラボノイド色素が有効成分です。ヤニはサクラ
ゴムと呼ばれ,ポリウロニドからなる多糖類ですが,糊料,薬用に用いられてきました。
ヤマザクラ系のサクラは匂いがあり,多摩森林科学園には匂いのよい品種が33種あると
のことです。サクラの香り成分として2-フェニルエチルアルコールやリナロオールなど
多数の成分が知られています。
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