ちょっとしたコラム      
               
05.6.18付


本塁打

 通算記録では王貞治(巨人)の868本塁打が不滅の金字塔となっている。2位を200本以上も引き離す断トツ記録である。2位の野村克也(西武)は27年、3位の門田博光(ダイエー)は23年という長い現役生活を送ったが全く及ばない。まさに空前絶後の記録である。王は22年間で868本を打ち、年平均39.4本とほぼ40本近いペースで毎年打ちまくった。

 800本台1人、600本台も1人。そして500本台になると今季に史上8人目の通算500号本塁打を達成した清原和博(巨人)も含めて6人。となると打者として現実的な数字としては500本あたりが挙がってくるのかもしれない。しかし、清原に続く現役選手となるとローズ(巨人)であり、17本を上積みしたが通算350本とかなり差がある。続く江藤智(巨人)は349本であるが、今季は完全な代打要員でありまだ本塁打ゼロである。いずれにしても清原との差は150本以上も離れており、次の500本塁打は誰がいつ達成するにしても遠い話となりそうである。となると500本も今後は現実味の薄い数字になるのだろうか。

 もうワンランク下げて400本塁打はどうだろう。これならばローズ、金本知憲(阪神)、小久保裕紀(巨人)あたりが到達出来そうである。平均35本で行けばローズは今季も含めて2年、金本も3年で到達可能。共に1968年生まれの37歳だが、ローズは昨年45本で本塁打王であり、金本も13年目にして自己最多の34本塁打を放っている。今季も共にリーグ3位タイの17本塁打と長打力は健在。
 小久保も昨年41本塁打と実績十分で、こちらも平均35本ペースで4年で400号到達となる。今季もリーグ2位の19本塁打と順調に記録を伸ばし、300号は軽く通過しそうである。

 しかし、彼らにしても歴代ベストテン入りは厳しい。400本を超え、474本まで伸ばしてようやく10位の田淵に並ぶ。3歳年下の小久保の方が、最終的にはローズや金本を上回る可能性が大きいが、棒に振った03年が惜しまれる。
 現役ベストテン内では前田智徳(広島)にも400本の可能性はありそう。小久保と同じ1971年生まれで、昨年まで3年連続20本塁打。ただ小久保と違って本質的にはホームラン打者ではなく、25本を超えたのが93年(27本)の1度だけ。しかし今季はすでに15本塁打と自己最多ペース。今季で250本塁打に到達し、来季以降も25本前後のペースを維持出来れば400本は不可能ではない。

 若手では岩村明憲(ヤクルト)が昨年44本塁打を放って飛躍を見せた。高卒8年で126本は野村克也(西武)の137本に11本足りないだけ。コンスタントに30〜40本を打ち続ければベストテン入りは十分狙えそうだ。同様に昨年40本塁打とブレイクした多村仁(横浜)は今季も21本でリーグトップと好調。しかし遅咲きの為、今季で29歳ながら現時点では通算93本と100本塁打も達成していない。通算では300は行くだろうが、400本塁打は難しそうだ。

 1年目からレギュラーの福留孝介(中日)や高橋由伸(巨人)にしても、今後の展開次第では400本の可能性があるが、本質的には中距離打者タイプであり歴代10傑に入るほどのホームラン打者となるのは難しそうだ。今季の本塁打は二人とも8本ずつと、このペースでは20本がやっとと言う感じ。むしろ長距離打者としての資質を感じるのは松中信彦(ソフトバンク)と城島健司(ソフトバンク)の二人である。広い球場を本拠地とするこの二人は、逆にそういう球場で試合をする事により、ホームランを放つ技術に磨きがかかった感さえある。

 松中は長打力がありながら、なかなか40本台に乗せられなかったが昨年8年目にして初の40本塁打をクリアすると今季はここまで23本塁打とすっかりホームラン打者としての地位を確立したようだ。城島も昨年は五輪参加で17試合に欠場しながら自己最多の36本塁打を放った。フル出場していたら40本はクリアしていただろう。通算では松中220本、城島203本。

 メジャー移籍時点までの数字を王と比べると、松井秀喜(ヤンキース)は10年目で356本対332本と24本少ないだけだった。王貞治以降、最も伝説の世界に近づいたと言ってもいい松井のメジャー移籍は本塁打記録の面からは日本球界の大きな損失だった。プロ入り10年、28歳時点で早くも2位野村の本数の半分を超えていた事を思うと、歴代2位以上は確実。どこまで王の記録に迫れるかが焦点だったのだが。願わくば松井秀をも超える新しいホームラン打者が日本球界に誕生する事を期待したい。

参考 300本塁打までのペース比較

<通算本塁打ベストテン>
歴代 選手名(最終所属) 記録   現役 選手名(所属) 記録 04年実績
1 王貞治(巨人) 868本塁打   1 清原和博(巨人) 492本塁打 12本塁打
2 野村克也(西武) 657本塁打   2 江藤智(巨人) 349本塁打 4本塁打
3 門田博光(ダイエー) 567本塁打   3 T・ローズ(巨人) 333本塁打 45本塁打
4 山本浩二(広島) 536本塁打   4 金本知憲(阪神) 297本塁打 34本塁打
5 落合博満(日本ハム) 510本塁打   5 田中幸雄(日本ハム) 277本塁打 0本塁打
6 張本勲(ロッテ) 504本塁打   6 小久保裕紀(巨人) 268本塁打 41本塁打
6 衣笠祥雄(広島) 504本塁打   7 初芝清(ロッテ) 231本塁打 4本塁打
8 清原和博(巨人) 492本塁打   8 前田智徳(広島) 219本塁打 21本塁打
9 大杉勝男(ヤクルト) 486本塁打   9 緒方孝市(広島) 212本塁打 26本塁打
10 田淵幸一(西武) 474本塁打   9 古田敦也(ヤクルト) 212本塁打 24本塁打

 年間記録は3人がマークした55本が依然としてトップになっている。01年のローズ、02年のカブレラと2年連続でタイ記録止まり。55号のあとも残り試合が5試合あって記録更新のチャンスは十分あったのだが、共に意識過剰になって打撃を崩した印象もあった。また、四球に過敏に反応してボール球に手を出し自らバランスを崩したようにも思える。

 現役ランキングを見ると、まさにカブレラとローズで上位独占状態である。やはり45本を超えるような本数は限られた選手しか記録出来ないという事だろうか。日本人では小久保ら3人がマークした44本が最高。50本以上でないとシーズン記録ベストテンには入れない状況で、今季の記録から見ると松中と多村あたりしか候補が見当たらない。実績あるローズは65試合で17本、カブレラは69試合で14本と共に今のペースでは40本未満の可能性がある。

 松中はチーム71試合で23本塁打。6月4日を最後に本塁打が出ていないのが気がかり。61試合目での23号は136試合では51本ペースだったのだが、現在では44本ペースに落ちている。多村はチーム62試合で21本塁打、146試合では49本ペース。5試合欠場しているため出場試合をベースに計算すると51本ペース。今後フル出場すれば50本台は十分に狙える。
 過去50本塁打はわずか8人(13度)が達成しただけの大記録。9人目の打者に名乗りを挙げるのは果たして誰になるのだろう。

参考 年度別リーダーズ(本塁打)

<年間本塁打ベストテン>
歴代 選手名(当時の所属) 記録 年度   現役 選手名(当時の所属) 記録 年度
1 王貞治(巨人) 55本塁打 1964   1 T・ローズ(近鉄) 55本塁打 2001
1 T・ローズ(近鉄) 55本塁打 2001   1 A・カブレラ(西武) 55本塁打 2002
1 A・カブレラ(西武) 55本塁打 2002   3 T・ローズ(近鉄) 51本塁打 2003
4 R・バース(阪神) 54本塁打 1985   4 A・カブレラ(西武) 50本塁打 2003
5 野村克也(南海) 52本塁打 1963   5 A・カブレラ(西武) 49本塁打 2001
5 落合博満(ロッテ) 52本塁打 1985   6 T・ローズ(近鉄) 46本塁打 2002
7 小鶴誠(松竹) 51本塁打 1950   7 T・ローズ(巨人) 45本塁打 2004
7 王貞治(巨人) 51本塁打 1973   7 T・ウッズ(横浜) 45本塁打 2004
7 T・ローズ(近鉄) 51本塁打 2003   9 小久保裕紀(ダイエー) 44本塁打 2001
10 王貞治(巨人) 50本塁打 1977   9 松中信彦(ダイエー) 44本塁打 2004
10 落合博満(ロッテ) 50本塁打 1986   9 F・セギノール(日本ハム) 44本塁打 2004
10 松井秀喜(巨人) 50本塁打 2002   9 岩村明憲(ヤクルト) 44本塁打 2004
10 A・カブレラ(西武) 50本塁打 2003          

ランキングの記録は2004年まで。今季の記録は6月17日まで。

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