作品名『最後の個体』 2006.03.19

上の絵は、2004年9月、『主体展』(主体美術協会・第40回記念展)に出展された作品です。作品名は『最後の個体』額縁の上に横たわる鳥は「最後の旅行鳩」のマーサ、初代アメリカ大統領ワシントンの夫人名です。(マーサは1914年にシンシティー動物園で死んだ最後の一羽)。


このハトは旅行鳩(和名)と言われ、主に北アメリカ(西部)に生息した。名前(旅行鳩)のとおり冬場には寒さを避けるためメキシコに移動した。1800年代には、何億羽(推定では50憶羽とも言われる)も生息していたため絶対に絶滅はしないと思われていました。しかし、鉄道が開通して、西部開拓により生息域を奪われ、畑を荒らす害鳥として狩猟され始めました。そのうえ、羽は羽布団の材料として大量に使用されたため大量に殺されました。また、娯楽のスポーツ狩猟により無差別・大量に殺されました。それでも個体として絶滅することないと思われていたために狩猟は続きました。気がつくとあんなに空を真っ黒に覆うほどいた旅行鳩は、1850年から急速に姿を消し始め、ついに1914年に絶滅しました。

 絵の額縁うえに横たわるハトが「マーサ」です。足には最後の一羽を証明する博物館のラベルが付けられています。絵には暖める親を失い永遠にふ化することのない多数の卵が描かれています。

榎本香菜子さんは、この絵により「損保ジャパン美術財団」奨励賞を受賞されました。言葉や解説のいらない、まっすぐ心に響いてくる作品です。2006年、同作品は、「損保ジャパン美術財団選抜奨励展」の秀作賞に選出されました。


 旅行鳩について………

COLUMBIFORMES  ハト科 COLUMBIDAE Ectopistes migratorius
最後の野生の旅行鳩は1899年に死んだ。シンシティー動物園に飼われていた最後のハトも1914年に死に地表から姿を消した。

左は、Morris caの絵(1885年)。右はC.O.Whitmanの絵である。(1919年)