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2001年6月10日号

福祉の町、鷹巣町を視察して
民生文教常任委員会の一員として  砂田喜昭

 高齢者福祉の先進地、秋田県鷹巣町を、民生文教常任委員会の行政視察で訪れました。人口2万4千人の、農業を中心とした町です。

福祉が新たに300名の雇用の場を

 福祉の拠点施設ケアタウンたかのすは昨年4月にオープンしたばかり。110名の高齢者・障害者の入所にたいして100名余りのスタッフが働いています。私服の若い女性が車椅子を押していたので、ボランティアですかと問いかけますと、「いいえ、職員です。入所者のお世話は全部職員で行ないます」とのことでした。補助器具センターなどを含め全体で125人の常勤職員、臨時職員・パートが36人の体制でした。
 この他に社会福祉協議会では24時間体制のホームヘルパー派遣を中心に在宅支援の活動を常勤職員95人、パート非常勤合わせて112人の体制で行っています。福祉に力を入れたことで300人近い新たな雇用が生まれ、若者が生き生きと働いていました。

町民の意見が染み込んだ施設作り

 ボランティアの方は見学者の案内役でした。「この施設の一つ一つに私たちの声が染み込んでいるのですよ」と語っていました。たとえば個室の床のこと。住民と行政が一緒につくっている「ワーキンググループ」で施設建設の内容を検討してきましたが、多くの住民が畳にすべきと主張してきました。一人の車椅子の方が、「畳はダメ。杖をついたりしなければならないし、すぐにぼろぼろになる」と言われ、使う立場の意見にみんなが納得して現在のつくりになったそうです。その代わり家族と交流するスペースには畳をしいた和風のつくりにしました。食堂のスペースには日本庭園を前に持つ居酒屋風の店もありました。
 建設に際し、はじめに一部屋だけをモデルルームのように作り、ケアタウン探検隊と称して約700名の町民がそれを見学、そのうえで90項目の提言をし、行政と話し合いを持って設計を見直し、つくりあげたそうです。そのときの一こまが床の話です。

町民の団結の力が政治を動かす

 福祉の町づくりのきっかけは、10年前に現在の町長が当選し、北欧の福祉を視察したことだそうです。町長選挙のしこりもあったのか、議会は2度もこの建設の予算を否決(94年、96年)、ついに町民が議会を変えようと議会選挙で新しい議会を作り(96年3月)、予算が成立しました(96年6月)。「住民が主人公」を文字通り実行したもので、このドラマは映画にもなっています。

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