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2000年12月10日号

突然持ち上がったケーブルテレビ計画

他に良い方法がないか、
議会や市民が検討できるだけの情報公開を


 12月議会初日の5日、小矢部市が「となみ衛星通信」というケーブルテレビ会社に出資し、全世帯にケーブルテレビを導入する計画が明らかにされました。

「今更、ケーブルテレビか」
議員の中から疑問の声も


 議案説明会では、これに対してある議員から、「BSデジタル放送ですでに数十チャンネルのテレビを見ることができるし、今更ケーブルテレビというのは時期遅れでないか」などと批判の声が出されました。砂田議員は「私もその議員と懸念を共有するものだ」と述べ、「ケーブルテレビで市議会の中継など市民に行政をわかりやすく伝える意味では評価できる点もあるが、しかし、それがケーブルテレビでしかできないのか、他にもっと効率的な方法がないか、いろんな角度から検討する必要がある。そのために、現在市当局がもっている情報を全部公開し、市議会や市民が十分検討できるようにすべきだ。その検討が済むまでは、『となみ衛星通信』への出資を凍結すべきだ」と主張しました。

国のIT関連予算で突如浮上した計画

 大家市長は、「臨時国会の補正予算でIT産業浮揚予算が突如として出てきた。小矢部市内全部、稲葉山から田んぼの端まで1年間でカバーするために必要な14億円の費用をほとんど国で負担するというきわめて有利な条件があり、あさってまで意思決定すべきといわれ、私は敢然と手を上げた」と述べました。

どれだけの費用がかかるのか、
資料もない市長の口頭説明のみで
納得しろとは無理な話

 小矢部市の9、368世帯全部を結ぶと650キロメートルの伝送路(光ファイバーケーブル)になるそうです。そのための工事費と放送設備の費用を14億3000万円と見込み、このうち、郵政省の補助金(新世代ケーブルテレビ施設整備事業)が4億8千万円、残り約10億円のうち、1億8千万円はケーブルテレビを申し込んだ人の加入金でまかない、後は元金利息の返済分を国が地方交付税で面倒を見てくれるという市の借金です。砺波広域圏では、この事業の説明のために見積り額も含めた詳しい資料を出しましたが、小矢部市は議案説明会での市長の口頭説明だけです。これで十分な検討や判断が議会としても、市民の側としてもできるでしょうか。
 今の時点で懸念される疑問点、問題点は次のとおりです。

ケーブルテレビの利用者を
どれだけ見込めるのか
 
 @果たしてどれだけの加入者があるかです。テレビ放送は地上波、衛星を使ったBSデジタル放送、CS多チャンネル放送ですでに行なわれています。どれだけの家庭が加入金5万円、引き込み工事1万7千円、宅内工事1万2千円、毎月の使用料3千円、有料チャンネル利用料2500円(となみ衛星通信の料金体系)を支払って、ケーブルテレビに移行するか不明です。
 アンケートで7割以上がケーブルテレビに期待するとしていますが、アンケートの対象になったのは商工会の会員1230人で、しかも回答率はわずか12%、仕事でコンピューターを使い慣れた人たちが中心です。

ケーブルテレビ以外に良い方法はないのか

 Aケーブルテレビが今後果たして生き残れるのか、あるいは他にもっと有効なやり方がないかという問題です。ケーブルテレビを使って加入者からも情報を送れる双方向性と、議会中継など地域情報の提供にメリットがあるとされていますが、このほとんどはすでに電話回線利用のインターネットで可能であり、双方向性は一部BSデジタル放送でも実現しています。NTTの電話回線は電電公社時代から国家的事業として数十年かけて日本のほとんどの家庭を有線で結んだ、国民の貴重な財産です。この銅線を使って大量の情報をやり取りする新しい技術の導入(xDSL)や、NTTが今後10年かけて家庭を光ファイバーで結ぶ計画(FTTH)が進められています。日進月歩の技術革新が続く中で、大きな設備投資を迫られるCATVがどこまで生き残れるか、疑問の声もあがっています。

14億円でほんとうに完成できるのか

 B果たしてほんとうに14億円で散居村を抱える小矢部市全域をカバーできるのかという問題があります。小矢部市の場合は、試算すると1キロメートルあたり220万円となりますが、都心を抱えた金沢ケーブルテレビの場合でさえ271万円かかりました。総事業費が予想を上回った場合、だれが負担するのか、今後の問題です。

となみ衛星通信の経営と
どうかかわるのか

 C加入者が増えず、となみ衛星通信の経営が悪化した場合の市の負担がどうなるのかという疑問があります。

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