アメリカにおけるディベート教育(大学編)

大学編ではコロンビア大学のディベートチームをご紹介します。 議会制ディベートチームの副部長、サノー(Sanoj) は、大学3年生でとても人望のあるまさに米国東部の優等生といった感じです。大学構内のカフェテリアで一時間以上に わたり議会制ディベートやクラブ活動の様子を説明してもらいました。

 

<議会型ディベート (Parliamentary Debate)>

このディベートの特徴は、イギリス議会の形式をとり肯定側を与党側、否定側を野党側と呼び、準備時間が10分から15分と短いことです。ですから普段から新聞、雑誌 などで情報を集めておきます。

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与党党首立論     7分  

野党党首立論     8分  

与党党員立論     8分  

野党党員立論     8分  

野党党首反駁     4分  

与党党首反駁     5分

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論題には、たとえば、「米国において死刑を廃止をすべし」「マリファナの所持、使用を解禁すべし」「法人税を廃止すべし」「国連は、日本に安保理常任理事国入りをさせるべし」です。この国連に関する論題は、私達日本人にとって米国人がどのように日本を見ているのか知るのにぜひ観戦したい論題のひとつです。  

そして、より議論を闘わせることを重視しているこのディベートの判定のポイント は、2点あり、 (1)Persuasiveness (説得力) 内容、構成、議論の流れをみて、どちらがより議論をうまく闘わせ説得力があったか (2)Presentation (プレゼンテーション)話し方、アイコンタクト、手の使い方、声の調子などみます。このアイコンタクト(人の目を見て話す)というのはジャッジを説得させる有効な手 段の一つです。

 

<クラブ活動 (Parliamentary Debate Team)>

既に、高校時代、ディベートを経験している部員約50名からなるチームは、週に一 度ミーティングをします。ほぼ毎週のように行なわれる大学対抗試合(Parliamentary Debate Tournament)に臨んでいます。ちょうど私と会った次週には、ワシントン大学で 試合があるということでした。きちんと相手の目をみてわかりやすく、しかも礼儀正しく話すことのできるサノーが 初心者を指導する時のテキストは、議会制ディベートのガイドブックGuide to Parliamentary Dedateです。まずデモンストレーションを見せ、次にディベート用語や テクニックを教えます。

たとえば、プレゼンテーションの始めにこれから話すことを手短かに説明すること を Sighposting (道標)といいます。これはとても大切で日本ではロードマップといいます。これをわかりやすく説明します。始めにサンドイッチを思い浮かべてください。一番上にパンがあります。それを「今からこのサンドイッチの中身について説明します」というラベリングのラベルだと思ってください。その次に、中身を説明します(卵でもチキンでもなんでもけっこうです)最後にパンがまたきます。つまりラベルだと思 って初めのパンと同じことをいえばいいのです。このように説明した後は、実践あるのみで練習をします。

サノー自身、高校時代にディベートを経験しもっと勉強したくてチームに参加しました。ディベートを通して批判的思考(Critical Thinking )や幅広い知識を得られることが魅力のようです。こうして一時間の昼休みは本当にあっというまに過ぎてしまい今度はぜひトーナメン トを観戦したい気持ちでいっぱいになりました。

このディベートチームの人に会うために何人かの大学生や大学院生に尋ねやっとの思いで会えました。驚いたことに大学生みんなとてもきちんとプレゼンテーションをして いたことです。これは、おそらく人前で話す訓練をディベート教育などを通して経験しているからこそだと思います。人は、訓練しだいで身のこなしが変わるものだと実感し ました。

そして最後にこのシリーズに登場したスタイバソンハイスクールのグゥレイ先生、コ ロンビア大学のサノーに会うにはとても多くの人のおかげで実現しました。とても印象的だったことは、たて社会の日本では想像しにくいことですが、男女、先 生生徒、先輩後輩の差なく、横ならびの中でディベートを楽しんでいたことでした。さあみなさんLet's Enjoy Debate!

 

 

ニューヨークこぼれ話――その5ー本屋での話

N.Y.に行ったらぜひ手に入れたいものの中には、ディベート関連の本でした。残念な ことにディベートコーナーはなく、店員の人もおそらく 教育コーナー(Educatiion) にあるのではないかという心もとない返事。なぜディベートがアメリカでさかんなのに コーナーもなく店員も知らないのでしょう。その理由は、一つには、ディベートの授業 は高校で受けているにもかかわらず、テキストを使わずにディベートコーチが直接指導します。ですからテキストは、あまり必要がないようです。また 、もう一つには、たとえ存在を知っていても$20、$30するテキストは高くて手に届きにくいというのが実状のようです。(ちなみにプレゼンテーション(Presentation)のコーナーにありました。ひっそりと 置いてあったNTC's Dictionary of DEBATE に出会えた時には、思わず「こんな所に あったのね」と心の中で叫んでしまいました。)