文責:倉島
尋問において、効果的に相手を攻めるためには、第二立論や反駁で相手の議論のどこを、どう攻めるかを決めていなければなりません。したがって、時間順では逆転しますが、「反駁のしかた」を先に読まれてから、本章をお読みになることをお勧めします。
なお、文中のオレンジ色の文字の部分は、実際の場面に応じて変更してください。
尋問にあたっては、以下の点に気をつけましょう。
尋問は以下の3つのステップを踏むと効果的です。
一般に尋問と言うと、相手から有利な情報を引き出す「攻め」にばかりに気が行きがちですが、まず、相手の立論の不明点をなくし、攻め所を確認しましょう。せいては事を仕損じます。
効果的に相手を攻めるには、まず、相手の立論を明確に理解していなければなりません。
相手の立論で、聞き逃した所をもう一度言ってもらったり、わからなかった所や曖昧な所についてさらなる説明を求め、相手の立論を明確にします。ここで、聞き逃したままにしていたり、曖昧のままにしておくと、「私はそういう意味でなく、こういう意味そう言ったのです」というように、第二立論や反駁のときに逃げ道を作りかねないので注意しましょう。特に、メリット/デメリットのラベルは、発言どおりに記録しておくと第二立論や反駁のとき反論に使えることがあります。
ここでのポイントは、次のステップに早く移ろうとして、あせらないことです。わからないところは完全になくしましょう。
尋問の例
- メリットのラベルだけもう一度言ってください。
- 1番目のメリットの発生過程をもう一度言ってください。
- 2番目のデメリットでの引用文献の出典をもう一度言ってください。
- 1番目のメリットでの引用文献をもう一度読み上げてください。
- 2番目のデメリットの発生過程を要約すると、「発生過程要約」ということですね。
相手の立論をよく理解できたら、次に、第二立論や反駁での攻め所を見いだしましょう。
よくできた立論は、一度聞いただけでは攻め所をうまく見いだせません。ここだと思って攻めていったところ、意外と防御が固く、崩せないこともよくあります。あわてずに攻め所を見極めましょう。
まず、「反駁のしかた」でも述べた5個所の攻め所から、最も効果的と思われる攻め所を決め、それに応じた尋問をします。ここで、穴があると判断したら次の「攻めのステップ」へ移ります。穴が見つからない場合は、攻め所を変えて、別の尋問をします。もちろん、立論が穴だらけの場合は、この「ジャブのステップ」を飛ばして、次の「攻め」のステップに転じます。
ここでのポイントは、質問はしたが穴はなさそうだとわかった段階で、すぐ別のところの質問に移ることです。
攻め所ごとの尋問の例
1.相手の根拠の矛盾点や問題点を指摘して、その主張は成り立たないと主張する
1番目のメリットの発生過程で、「原因」だから「結果」とおっしゃいましたが、それはなぜ「原因」だから「結果」なのですか?
2.別の根拠を持ち出して、相手の主張は誤りであると主張する
1番目のメリットについてですが、「別の根拠」と考えれば、「相手の主張のラベル」は成立しないのではありませんか?
3.情報や証拠の不足を指摘して、相手の主張は成り立たないと主張する
1番目のメリットでの引用文献の筆者は、「筆者の立場や所属」ですから、本来論題を肯定する側の立場にあり、中立的な立場の人とは言えないのではありませんか?
1番目のメリットで「根拠」とおっしゃいましたが、それを裏づける証拠はありますか?
1番目のデメリットで「費用がかかる」とおっしゃいましたが、具体的にいくらかかるのですか?
4.相手の主張は認めるが、その重要性がとるに足らないと主張する
1番目のデメリットで「デメリットの内容」とおっしゃいましたが、それは単に「デメリットの重要性」というだけで、深刻なものではないのではないですか?
5.相手の主張は認めるが、現状の改良で同じ効果が得られると主張する
2番目のメリットは現状を、「現状の改良方法」のように改革すれば達成できるのではありませんか?
攻め所が決まったら、たたみかけるような質問で、相手を窮地に追いやり、自己に有利な情報を引き出して、第二立論や反駁への足がかりとしましょう。ここが尋問のクライマックスです。ここで優位に立てば、反駁がぐっと楽になります。場合によっては相手に尋問の段階で、論点を捨てさせることもできます。
忘れてはならないのは、ここでの成果を第二立論や反駁に反映させるということです。いくら素晴らしい尋問ができても、それを第二立論や反駁で利用しなければ、ジャッジにとってもらうことはできません。
ここでのポイントは、たたみこむような質問で、有利な情報のみを引きだし、相手に説明させないことです。相手に説明のチャンスを与えると、せっかくの穴をふさがれかねません。(ここでのニューアーギュメントは許されます)そして、引き際をわきまえることも大切です。
尋問の例
ここでの尋問は、相手の主張の穴によって千差万別のため、ご自分で検討してください。