横槌(よこづち)
【解題】 砧の横槌と打盤に事よせて、男女の恋愛から来る言い争いと仲直りを歌った曲。 【解析】 ○横槌は、もしや|とばかり | 合 槌が、逢ひに来るか と|棚の端 、こけつ まろびつ | <アヒ> <アヒ> 横槌は、もしや| |愛人の合 槌が|逢いに来るかも | |とばかり思って、 |棚の端を、転んだり倒れたりして| ○かたで |打ち、力一杯| 色つやを、打ちいだしたる| 片 手で|打ち、力一杯|布地の色つやを|打ち 出 し 、 | 色気 も| 出 して |打盤のことを忘れて働いたので、横槌と打盤は ○口説(くぜつ)ごと| 、宵の| 砧 は|きぬぎぬ に 、悲しき風 の|袖の| 雨 。 <キヌ> <キヌ> 《衣》 《袖》 言い争い |になり、宵の| 砧夫婦 は|翌朝の別れには、悲しい風が吹いて|袖が|涙の雨に濡れる始末。 ○ |乾く間 待ちて、明日の夜も、 |固い約束、 |打盤の、背中を撫でたり叩いたり。 その袖が|乾くのを待って、明日の夜も、また二人仲良くと、固い約束、横槌は|打盤の、背中を撫でたり叩いたり| |して機嫌を取った。 |
作詞:惺園篁鳳 作曲:幾山検校 【語注】 横槌・打盤 「打ち盤」の解説参照。 合槌 本来は、鍛治師が鉄を打つとき、向かい側に立った弟子が、主人と交互に打つ槌の意。ここでは、横槌と拍子の合う相手、愛人の意味で使われている。 きぬぎぬ 衣々。後朝。脱いだ衣を重ねて共寝をした翌朝、男女がめいめいの着物を身に付け、別れること。「きぬぎぬの別れ」とも言う。 |