夏やせ
【解題】 思い通りにならない恋なのに、周囲からは羨ましいと誤解され、辛い思いは募り、痩せるばかり、それを夏痩せのせいにしてごまかす事を歌っている。 【解析】 ○逢ふことの、絶え間がちなる| |仲なれど、 | 名 立てがましく | 皆人の、 逢うことが、絶え間がちな |二人の|仲なのに、ことさら|浮き名を立てたいように|周囲の皆 が、 ○羨ましい と、捨て言葉 にも、 | 言はれて |いとど 、物思ひ 、 羨ましいよと、捨て台詞みたいにも|言うが、そう言われると|いっそう|物思いがつのる、それを ○酒で|散ら して、紛れて みても、心 ひとつ に、 迫る |や ら、 酒で|ごまかして、紛らわせてみても、胸もいっぱいに|物思いが迫るの|かしら。 ○辛気(しんき)|辛気 |辛気 |辛気 ぇ、 |浮かぬ |姿を、嬲(なぶ)られて、 つらい |つらい|つらい|つらいねェ、こんな|浮かない|姿を、からかわ れて、それを ○隠す 言葉も、夏痩せ と、人に答ふる 、涙 川 、 深い契りと、 隠すための言葉も、夏痩せですよと、人に答えても|涙が川のように溢れる。こんな深い間柄に|なったのも、 ○わし 故 に、 浮き名立たせる、身 となら ば、 |今の思ひを、忘れ草 。 私 が原因で、浮き名を流させる 身の上となったならば、いっそ|今の恋心を|忘れてしまいたいものだ。 【背景】 この歌詞は、次の歌が踏まえられている。 〇 逢ふことは|玉の緒ばかり | 名 の立つ は|吉野の川の あなたと逢うことは、玉の緒ほど の短い時間なのに、評判が立つことは、吉野の川の 〇たぎつ |瀬のごと みなぎり流れる|瀬のように|やかましいことよ。(古今集・巻第十三・恋三・673・読人知らず) |
作詞:不詳 作曲:山田検校 【語注】 迫るやら 「やら」は「や(あ)らん」が圧縮されたもの。 玉の緒 玉を貫いて結ぶ紐。ここでは、短いものの喩え。 |