芥子(けし)の花
【解題】 芥子の花はあでやかな美しさと艶っぽい匂いを持った花で、また雨に弱く散りやすい花でもある。この歌は、美少女の魅力を芥子の花と奈良人形の風情にかこつけて歌ったものである。 【解析】 ○手にとりて|見れば うるはし| けしの花 |しをり しをれ ば タッチして|見ると、ツンと端正な |艶(つや)消しの | | 芥子の花みたいな色気のない少女だが、手折り、手折ってみると、 ○ただならぬ |匂ひ |かうばし|花びらの、 |散りにし姿 、あはれさ よ。 並みじゃない|フェロモンが|香ばしい|若い体が、男に手折られて|散った 姿がまた|何とも言えない!。 ○ |悋気(りんき)する気 も |なつの花| | 雨|には 男に|嫉妬 することも知ら|ない 、 | 夏 の花|のようなさっぱりした気性だが、情けを掛ける男|には ○ |もろき風情 |あり 。 |たれに気兼ねを | |なんにも| すぐなびく|もろさ も|持っている。放っておけば| 誰 に気兼ねをする訳でも| |なく 、 |いつまでも|なんにも| ○言は ず、じっと| し て|ゐる| |奈良人形 。 しゃべらず、じっと|前を見つめて|いる|りりしい|奈良人形のような白痴的美少女。 |
作詞:後楽園四明居 作曲:菊岡検校 筝手付:松崎検校 【語注】 しをり 「枝折り」で、枝を折ること。 なつの花 芥子は、五月頃、四弁で白色・紅色・紅紫色・紫色などの花を開く。 奈良人形 平安時代から奈良に伝わる一刀彫の人形で、高砂などの能狂言物、蘭陵王などの舞楽物、鹿や十二支の動物物などがある。大きな鑿(のみ)跡が作り出す簡潔な造形と、綿密な極彩色の彩色の不思議な調和を特徴とする。 |