ZANAC

最初は一つの点だったのかもしれない。数千年の年月を経てそれは宇宙を覆うほど巨大になっていった。はるか昔有機知性体が作り出したシステムは、有機知性体がいなくなった今日も活動を続けていったのだった。このシステムはある目的をもっていた。イコン(聖像)を正しく開いたものには知識を、誤ったものには攻撃―滅亡―を与えるという目的を。

ある日、イコンの一つが誤った方法で開かれた。システムは正しく作動し攻撃を開始した。おなじものたちがこんどは正しくイコンを解放した。イコンはシステムの中枢に攻撃中止を伝えた。だがここでこのシステムを作った有機知性体もおそらく知らなかったのであろうが、システムはこの中止の命令を無視したのだ。システムはこの時点で単なる殺戮装置と化した。

イコンを開いたものたち―人類―は危機的状況におちいった。イコンは幸い正常に作動し、手持ちの知識を人類に与えたが、所詮システムのセンサーにすぎないイコンでは、システム全体に対する知識を得ることはできず、その圧倒的攻撃力の前に人類のくり出す攻撃部隊は次々に撃破されていったのである。

いよいよ人類が滅亡の危機に瀕したとき、一つの可能性が提起された。

「システムは基本的に戦略マシンであり、多数同士の戦闘を想定している。単独でシステムに向って行けばシステムは効果的に対応できないのではないか。」

危険な賭けであった。だが可能性を求めてこの計画は実行された。新型戦闘攻撃機AFX−5810=ZANAC を制作し、単独でシステムの中枢に侵入しこれを破壊した。機器は去った。――と思われた。

しかし敗北を喫したシステムは、爆発寸前他のシステムにこの事態を連絡したのである。すでにいくつかのコロニアムは連絡を絶っている。今回のシステムは前のシステムの数倍はありそうであった。最新鋭 AFX−6502=ザナックが残された時間のなか再び単独で飛び立っていった。

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