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ニホンミツバチの集団防衛(熱殺蜂球)


ニホンミツバチの巣にはオオスズメバチやキイロスズメバチなどがやってきます.キイロスズメバチは巣門の近くで待ち受け,成虫を捕獲して巣に持ち帰るだけですから,巣が大きなダメージを受けることはありません.

オオスズメバチも最初はキイロスズメバチと同じように成虫を捕獲し,肉団子にして巣に持ち帰るだけですが,巣の入り口付近に腹部から出る餌場マークフェロモンが塗る付けられると,この匂いに多数の働きバチが誘引されるようになり,やがて集団攻撃に発展します.

オオスズメバチの攻撃に対する対抗手段として,ニホンミツバチは熱殺蜂球を作りオオスズメバチを熱殺するという戦術をとります.オオスズメバチが46℃で死亡するのに対して,ミツバチは48℃まで耐えられるという温度差を利用したもので,ニホンミツバチの巣の近くにオオスズメバチの死骸が落ちているのをよく見かけます.

また,最近の研究から,スズメバチが死亡する原因として,この温度差だけでなく蜂球中の炭酸ガス濃度と湿度が影響していることが明らかになりました.炭酸ガス濃度と湿度の影響によりスズメバチの致死温度は2℃以上低下しますが,ミツバチの致死温度には変化が見られなかったという結果が得られています.


2004年8月26日,千葉県立博物館で開催されていた企画展 ” あっ!ハチがいる! 世界のハチとハチの巣とハチの生活 ” を見に出かけました.企画展示室を同館のM主任研究員の案内で見学中,屋上で飼育されているニホンミツバチが蜂球を作っているという連絡が入りました.大急ぎで現場に駆けつけてみると・ ・ ・.展示の一環として飼育されているニホンミツバチの巣にはオオスズメバチやキイロスズメバチが飛来していました.

今回のターゲットはオオスズメバチではなくキイロスズメバチでした.最初は飛来したキイロスズメバチに対して多数の働きバチが巣の入口付近の壁面に止まり,一斉に翅を震わせる震身行動で対抗していまいしたが,1頭のキイロスズメバチが巣に近づいた瞬間に多数の働きバチが襲いかかりあっというまに蜂球ができたそうです.


13時29分 蜂球は巣箱のすぐ横にできてたいた. 13時31分 木の板を使って手前に引き出した. 14時00分 多数の蜂が球をつくっており,中心にいる.スズメバチは全く見えない.
14時04分 蜂球を手の上に乗せてみた.中心部の温度は48℃にもなるので,確かに暖かく感じる. 14時18分 働きバチの数も次第に減ってきた. 14時28分 針金でほぐすとキイロスズメバチが見えてきた.
14時29分 働きバチの数はさらに減少した. 14時30分 キイロスズメバチは死亡している.