初めて触れてくれた人は
納屋橋近くのお店でした
もう少しで年が終わる日のことで
灯りが少ない夜でした
思春期といわれる時に
いじめられっ子だった少年に
浴びせられた異性の目は
汚いものを見るような
軽蔑の、白い冷ややかで痛いものでした
俺は女性から汚く見える奴なんだと
近寄ることもしなくなりました
初めて触れてくれた人は
一日何回も人の肌に触れる人でした
あの時、二人っきりになって
とても怖かった
触れてくれないんじゃないかって
あの白い目を向けられるんじゃないかって
でも五十分間、淡々と触れる手に
ためらいもあの冷ややかさもありませんでした
初めて触れる手は
とても暖かく
あの時、向けらていた
生きていく気持ちすら奪うような視線を
消し去ってくれたんです
人目を避けて歩く通り
安っぽいネオンをつけた店を見ていて
俺は
生きていってもいいんだと
納屋橋近くで思った記憶があるんです