『鳥インフルエンザ問題の今後(Z)』



私達は今度侵入して来たH5N1が、97年の香港の同型や、その後それが進化した東南アジアを含めた家禽に対する広範囲流行型とは違うとの説明を受けて、直接人体に影響がないならと、それだけの意味では一応安心していたが、国内ではそれ以上の説明を受けないまま、外国の研究者の論文などから、97年以前の在来型ではなく、やはり複合進化した新型ではないかと疑わざるを得なくなって来た。

香港大学名誉教授のケン、ショートリッジ博士の説明によっても、それ以前の古典的な型ならアヒルなどに病原性はない筈だし(同一配列とされる韓国のアヒル死亡例)カラスなどが感染したことや鶏での病勢の激しさなど我が国の研究者をして想定外とする事例が続発したことでも水鳥、家禽間に種間伝播し異種動物間に双方向性を持つとされる東、南アジア型に近いとして養鶏現場でも警戒する必要があるのだろう。

1996年、ガチョウの感染斃死例を受け、翌97年ヒトへの感染死亡を含めた家禽類での大発生をみた香港政府が1968年のH3N2香港風邪以来のパンデミックを懸念して徹底した摘発淘汰をおこない一旦鎮圧したかにみえたが、不顕性のH9N2が介在して摘発の徹底を阻まれ、2年後更なる大発生をみて今回の歴史的にも異例な家禽類での広範囲同時発生に発展したとある。

その香港ではそれらの体験を踏まえてワクチネーションを実施し、南、東アジアで唯一発生のない国となった。 従って今更我が国で、香港97年以前の祖先ウイルスを想定した対策、つまり「摘発淘汰」を繰り返すのは、もはや時代遅れと云うべきだろう。確かに表面的には諸外国の研究者たちも、我が国の、根絶公表を信じた形で、今回の処置を評価しているが、我々養鶏現場としては、あくまで再発はあるものとして備えなければならず、その際は、より危険な進化型を想定しなければならない筈であり、香港での例を見るまでもなく防圧には徹底したバイオ・セキュリティの実施と共にワクチネーションが絶対必要となる。

ウイルスが進化する過程で、家禽への影響、ヒトへの危険性がどう変化するかは予測出来ないだろうが、南中国でのH9N2のような別の未知のウイルスの存在もあるだろうし、何よりも既に種間伝播する能力はあると想定されるのだから、古典的な摘発淘汰だけでは対処できないのは明らかである。確かにAI問題は、ひとり鶏の病気としてだけでなく、国際的に公衆衛生上の脅威(ケン・ショートリッジ教授)としてとらえねばならず、初期的には先ずその根絶を期して摘発淘汰の重要性が叫ばれるが、その可能性の見極めと同時に、家畜衛生と経済損失の脅威(同)も重要であり更には環境衛生、食料自給にかかわる多くの問題を惹起することにもなり一筋縄では行きそうにない。

それにしても数日前の報道の大分の埋没処理の地下水への影響が事実になれば大問題だ。ドロドロに液状化したものは、辺りに滲み出ない限り半永久的にそのままである。どっちにしても地域の死活問題になりかねないし、繰り返すように養鶏場の存続に係わる環境問題に発展しかねない。更に鶏を処理する際、作業関係者に服用させたノイラミニダーゼ阻害剤の副作用問題も急浮上した。正に難問続出で、農水省が一つ覚えの清浄国論を振り回しているうちに、ますますのっぴきならなくなりそうである。