鳥インフルエンザ問題の今後(111)



鶏病多発期に入った。あちこちの技術指導でも、各種抗体が十分備わっていることが大切であると説かれて居る。ただ、ことAIに関してだけは清浄性が問題にされるので、講師のほうも各種抗体を充分持たせることによってAIも有る程度カバー出来ると考えるのか、そうでないのかで話は大分変わってくる。つまり講師によって防疫の方向もまるで違ってしまうので聴講するほうも注意が肝要であるし、肝心のAIに実効がある方法すら分からないのだから家で寝て居た方がマシであるかも知れないと苦笑する。

未だに殺処分が続く茨城での混乱振りは、それが最早や過去の流行型であり臨床的にもLPAIとしても問題にならないだけでなく、検査面においても従来のH5ウイルスを用いては把握出来ないほど流行型から離れた抗原性の変化したものを、偽ワクとして追い回した結果であり、今後抗原として全国的に茨城株を用いるような方策がとられたとするなら、摘発率は飛躍的に上がっても、肝心のH5N1対策にとって、見当違いのその弊害は計り知れないことになる。

それら抗原性、強毒変異の可能性、HPAIとしての位置付けの可否などを具体的に、問題のH5N1との関連性を根本から比較検証して実際効果のある方向への舵取を一刻も早く行うことが小委員会に課せられた使命ではないか。それを抜きにしていたずらに、そしてやみくもに監視摘発強化の方向を打ち出す地方の方針は全く解せない。

国のプロパガンダに過ぎない偽ワク問題、高病原性としての茨城株、これらを根本から検証し直さず、是正もせず無条件に受け入れて抗原を茨城株に切り替えて摘発を全国に広げたら、抗原的に茨城一県の問題だったものが全国に波及しかねず、消費も壊滅的になるだろう。そして肝心のH5N1防圧には何の効果もない。

今回の35例目(茨城34例目イセ農場)を見ても、陰性群が感染、抗体産生にいたるまでそれこそ旬朔を出でずである。ウインドウレスでの経過を見ても感染そのものはほんの僅かのウイルス量で事足りるのであろう。従来の考えでは鶏にHPAIが感染発症するには10の5乗程度のウイルス量が必要とされたが、発症を見ない今回の型は感染だけなら100万個のウイルスはウインドウレス内の換気に拡散されて数十万羽への伝播が可能と推測されそうである。

ならば陽性の野鳥も見つかりそうなものだが、従来もなかなか成功しなかった。抗原的に合わせるのが難しかったのだろうが、其の点今回の野鳥調査では引っ掛かりが期待出来た。しかし色々都合があるのか今度は何時迄で経っても発表されない。

しかし繰り返すように鶏の場合も、97年当時既に人型のH1、H3については東北以西に拡がりが確認されている。同じ型が豚、猪では80%の陽性とされたのに比較すると家禽の場合、言葉で補足せねばならぬほど検出率そのものは低い。例のレセプター説によっても同じ型を持つ豚から鶏へは豚→←人同様、環境中で高い感染が起きて居ても不思議ではない。とすると鶏の場合は発症を伴った形でないと抗原そのものを合致させるのが難しいらしいと推測され、実際にはLPAIの浸潤はかなりあるものとして認識してきた。

従って冒頭の演者のいわれるようにAI以外の各種抗体を充分備えて置くことで、交差免疫、競合排除、干渉作用による細胞吸着での干渉やINF産生の期待など特異ワクチン以外の自然抗体を含めた免疫効果に期待してきたのはこれまでも述べた通りである。このように実際単独では症状を出さない今回の茨城型のようなLPAIの存在自体はこれまでも有ったものと認識してきたが、その鶏での検出の難しさは度々聞かされそして存在は証明されて来なかった。

目下、茨城県下で続々陽転群が見つかって居るのは、一部の報道のように当局の追求によって養鶏場の隠蔽体質が解かれた(よくも云ったものだ)からではなく、ここへ来て実際のLPAI感染が起きて居るからに外ならない。このことは実験室での結果を待たずとも、少ないウイルス量で換気装置に乗って空気感染的に拡がるウインドウレス若しくはそれに準じた大型鶏舎内の臨床的事実を目の当たりにしたことになり、国のこれまでの方針を直ちに転換させる緊急動議がなされるべきである。

鶏舎間でのこの伝播力をもってすれば茨城型LPAIの拡がりは押さえることは不可能だろう。ただ従来型の検査抗原では検出されないだけのことであり、恐らく伝播中に茨城抗原を用いれば茨城県内に止まって居る不思議は一気に解消し、周辺の鶏は片端から摘発されて居なくなるだろう。そうは云ってもIBの場合もそうであるように宿主側の条件によって伝播は一様では有り得ない。同一農場内でも、その中の一群に初発をみた場合は、離れた鶏舎でも同一のロット分に必ず飛び火する傾向がある。それぞれの養鶏場の形態、条件、そして対策は様々であり一様には行かないことはたびたび体験させられて来たことであり、中間にやられない家が残っても別に不思議ではない。

もう一つ、検査一辺倒の国の方針で、技術が伴わぬ場合、いつでも心配になるのが非特異反応の問題で、特に防御するほうが、特異ワクチン以外のインターフェロンや細胞吸着における干渉作用などに頼ろうとする場合、モノカイン、リンホカイン、キラーT細胞誘導などの免疫反応がもともと非特異的に起こることを利用しているからである。インターフェロンの産生増強を図る際も、さらにHI検査自体の問題としても、実際現場の不安の一つではある。

H 17 11 20. I,SHINOHARA.
No.16814-16815