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SIN

前戦でマクラーレンはスタートさえ決めればベッテルと互角に戦えると思われたが、そうはならなかった。第1スティント、第2スティントともベッテルはスタートダッシュでバトンとの差を一気に広げてしまった。
28周目、7位ペレスは1位から1分25秒遅れにいて、29周目にシューマッハの追突を受け、セーフティカー。1位ベッテルと、18秒差の2位バトンはコントロールラインを通過して1周見送らざるを得なかった。1位から38秒遅れの3位ウェバーは即座にピットイン。63秒遅れの4位アロンソは25周目にタイヤ交換したばかりのためそのまま走り続けた。アロンソはウェバーの前に出ただけで、後からピットインしたベッテルとバトンの前には出れず。しかもアロンソは真後ろにウェバーが来てしまった。今のフェラーリはレッドブルに2度抜かれることを演じるだけだった。
問題は小林のピットイン。5位ディレスタから9位ハミルトンまではベッテルから100秒差以内のため29周目にすぐピットインして正解だったが、10位バリチェロはベッテルに周回遅れにされる寸前にいて、その後ろのブエミと小林はすでに周回遅れだった。SCを利用して周回遅れにならなくさせることを狙うため、バリチェロとブエミはすぐにピットインせず、ベッテルがピットインした後に隊列がゆっくり縮まるのを狙って入った。しかし小林はベッテルが入る前にピットインしたことが響き、周回遅れを確定させてしまった。

ウェバーはスタートミス癖も問題だが、最終スティントの初めでバトンに5秒差以内に迫りながら、次第に差を広げられて大差の3位に終わったことも情けなかった。このことはベッテルが車のおかげで勝てているだけでなくベッテル本人の評価を高めることになる。
スーティルとディレスタは予選から前半までスーティルが前だったが、26周目にディレスタがスーティルを抜いたことが大きく、それが最終順位につながった。フォースインディアはメルセデスと互角の勝負を演じ、低迷し始めたルノーのコンストラクター5位が視野にはいってきた。
ペレスはタフなレースで完走10位になった。小林はブエミを抜きあぐねていたため、SC判断ミスと青旗無視ペナルティがなくても入賞は難しかった。ただしレースペースは下図の通りインディアやメルセデスと比べても悪くない。今は中団が大混戦のため、予選と戦略が重要なことに代わりはない。
ITA

スタートでトップに立って地元を沸かせたフェラーリのアロンソだが、ベッテルに抜かれた後は1秒遅いペースでどんどん離されて勝負にならず。結果的に速さのあったマクラーレンがスタートでつまづき、シューマッハとアロンソを抜くのに時間を要したことがベッテル圧勝につながってしまった。シューマッハはフェラーリよりさらに遅いマシンをあやつりマッサより前でフィニッシュする健闘。マクラーレンはシューマッハの走りにクレームをつけたが、それよりも往年の走りが戻ったかのようだ。

上位6台とそれ以下の差が大きくついたサーキットでもあった。50周で100秒、1周につき2秒も違うとなると別クラスの戦いの様相を呈す。FIAのマシン差をなくしたい方向性はまったくうまくいってない。
可夢偉は入賞したトロロッソ・インディア・ルノーと接戦を演じていて、トラブルがなければ入賞できた。ザウバーは2年続けてこの高速コースでの耐久性に問題を生じる。
BEL

レッドブルが強い理由のひとつとして、予選やタイヤ交換直後に一発の速いタイムを出して突き放すことがある。そういった場面でライバルよりも高いグリップを得るために、レッドブルはタイヤの空気圧を下げて接地面積を増やしていた。たわむタイヤはコーナーで安定感がなくなるが、前輪のキャンバー角を多めに取ってタイヤを傾けることで解決させた。
しかし、スパフランコルシャンではこれが問題となった。長いストレートでは傾いたタイヤが熱を帯びやすくなる。Q3では3周でブリスターが発生した。レッドブルはこのままではレースが危険だった。決勝前にパルクフェルメではキャンバー角を調整できない。ニューウェイが取った解決策は空気圧を戻すことだった。レッドブルの強さのひとつは失われたが、それでもレースは1-2で圧勝した。マシンの持つ旋回性能の高さが、高速コーナーの多いスパで有利だった。次のモンツァは長いストレートばかりでコーナーは少ないためこんなにうまくはいかないだろう。



レースは13周目にセーフティカーが出て1位ベッテルはタイヤ交換に入ったが、コースに戻っても3位でロスが少なかった。新しいタイヤを生かしたベッテルはウェバーとアロンソを抜いて1位を取り戻す。そこで勝負はついた。マクラーレンはハミルトンの不注意による接触リタイヤと、バトンの予選失敗が痛かった。それがなければレッドブルの楽勝は許さなかった。
シューマッハの最下位からの5位は往時を彷彿させる走りだった。1周目は混乱に乗じて14位に浮上。セーフティカーですばやくピットインしたのが効き9位に上がる。その後ペトロフとペレスを抜いて7位。34周目にスーティルを抜いて6位に上がり、ロズベルグの後ろについた。そしてデビュー20周年記念を飾る5位入賞を決めた。

可夢偉はセーフティカー前に4位まで上がったが無線トラブルですぐ入れなかったのが響き12位。うまくやれば8位に行けたかというとそんな簡単ではなかっただろう。スーティルについていけず、マルドナードに迫られただろう。ここへ来てザウバーの戦闘力は相対的にどんどん低下しているのが気になる。
HUN


優勝争い5台のスティント分割は、バトン11-16-15-28、ベッテル12-16-13-29、アロンソ12-13-11-11-23、ハミルトン12-14-14-12-4-14、ウェバー10-15-14-12-2-17。
70周レースの過半数39周を1位で通過し勝てたはずのハミルトンは、20周目に2位バトンに9.110秒差まで広げていた。しかしハミルトンは磨耗が激しいのか早めのタイヤ交換を余儀なくされる。3回目の交換後は象徴的だった。雨が再び降り始めて誰もが滑りやすく苦しい。バトンは2コーナでコースオフしたところをハミルトンに抜かれる。だがハミルトンはウェバーとともにインターミディエイトに交換し、これが失敗。ベッテルも2度コースアウトしながらバトンやアロンソとともに我慢し続ける。これが表彰台につながった。アロンソは早めの交換で1回多いため3位にとどまる。フェラーリには低温が厳しかったか。
ベッテル(234点)は選手権上、ウェバー(149)・ハミルトン(146)・アロンソ(145)の3人より前でフィニッシュしたことで十分な結果となる。19戦中11戦終了。ライバルへの85〜89点差は3勝+α。F1史上でこれほどの大差を逆転した例は1976年の16戦中9戦目で35点差(当時優勝で9点)のみ。このときラウダは10戦目の事故で11-16戦目に7点しか加点できず。追い上げるハントは残り7戦で4勝など43点取り逆転。これを今に当てはめると、ベッテルが事故などでガタガタになり、ライバルが一人だけ強くなるという条件になる。可能性はかなり低い。若いベッテルはマクラーレンとフェラーリの進化を必要以上に恐れないことだろう。


小林(予選13位、1周目10位)のスティントは12-22-34-7。これに対しディ・レスタ(予選11位、1周目9位)11-16-15-27、ブエミ(予選23位、1周目14位)12-13-18-26、ロズベルグ(予選7位、1周目4位)12-15-23-4-15、アルグエルスアリ(予選16位、1周目15位)13-11-23-22。
なお予選で好位置だった二人、スーティル(予選8位、1周目20位)は12-14-24-18、ペレス(予選10位、1周目19位)は12-12-8-12-24とスタートの遅れが致命傷となり取り戻せなかった。ハンガロリングはロータスを抜くのも至難の技だった。
小林の3回目の交換は難しい判断だった。ライバルより後ろにずらすことで差を広げたかったが、48周目(小林の第3スティント14周目)の9位走行時点でアルグエルスアリに13秒差、ディレスタに15秒差、ブエミに16秒差しかなかった。49周目からの雨はむしろ差を縮めてしまった。52周目でブエミに6秒差、ディレスタに9秒差、アルグエルスアリに12秒差。乾いてからは1周で3秒近くも遅く、56周目に追いつかれる。
小林にとって、速く走りたかった第3スティントで前車に詰まったのはこのコースでよくあることなので仕方ない。結果論でいうと前が開けていた第2スティントでもっと速く走っておけばよかった。だがいつものロングランを考えでそうはしなかったのか。ならば第2スティントはもっと長く走り続けられなかったのか。
次戦以降、インディアとトロロッソはコース適性から相当に手ごわい。自分らの強みと弱みを踏まえて貫いてほしいところだ。

 
GER

50周目を終わり残り10周で1位ハミルトン、2位アロンソ2.016秒差、3位ウェバー7.391秒差。勝負を分けた51-54周目のハミルトンとアロンソのピット前後の走り。先に入ったハミルトンの51-54周目は1:37.962、1:52.869、1:34.821、1:34.620(合計400.272秒)。アロンソは1:35.366、1:35.810、1:37.993、1:51.807(合計400.976秒)。合計差は0.7秒でハミルトンに軍配。とりわけハミルトンの53周目1:34.821が効いた(ハミルトンは52周目のセクター3から速くなっていた)。アロンソが1周早く入っていたら際どかったが、タイヤの温まり差でハミルトンが勝っていた可能性が高い。
スティント分割でハミルトンは16-15-20-9、アロンソは16-16-21-7、ウェバーは14-16-26-4。アロンソがもっとピットを遅らせれば良かったという考えもあった。だが1回目のストップで新しいタイヤのライバルより1秒遅いペースで走るのは我慢できなかっただろう。2回目のストップも同様である。
今回のハミルトンは速く、かつ頑張った。第1スティントの11周目以降にタイムが落ちながらウェバーがピットした15周目にタイヤが限界なのにタイムを上げている。第2スティントの序盤33周目もアロンソがピットしたときにすさまじいタイムを叩き出しアロンソに3秒差をつけた。

ウェバーは第2スティントでトップを走ったが、第3スティントは遅く、トップを明け渡しただけでなく差を広げられた。26周も長く走ることを想定してタイヤを持たす走りだったのだろうか。タイヤは持ったが2人の元チャンピオンにはかなわなかった。
ベッテルは全体的に振るわず。8周目にアロンソに抜かれた直後の9周目にスピンを喫し、1回目のピット後にトップから20秒近い差になってから2ストップ策にしたとはいえ精彩を欠いた。レッドブルの2人は次戦ハンガリーも苦戦が予想されるためマシンの改善が急務と語る。

小林のQ1落ち17番手からの9位入賞は見事だった。ニュルブルクリングは難しいコーナーが多く、他のドライバーはコースオフやスピンでタイムが安定しなかったが、小林は実に安定していた。マシンの速さではフォースインディアより1秒遅い。また、ルノーの2人の速さを生かせないパフォーマンスにも助けられた。ザウバーは入賞しても今年前半のように優勝者と同ラップというわけにもいかなくなった。トップチームとの開発力の差が後半戦になり如実にあらわれている。インディアとルノーにミスがなければ入賞も難しくなるかもしれない。あとはドライバーの力によるところにかかっている。
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予選前のプラクティスではアロンソが1:31.401でベッテルに0.063秒差と迫り、最終予選はアロンソが1:30.516でPPウェバーに0.117秒差だった。エグゾースト・ブロウン・ディフューザーをもとに開発してきたレッドブルとマクラーレンは禁止で打撃を受ける。そうでなかったフェラーリは0.5秒の差を縮めた。シルバーストンはバルセロナや鈴鹿とともに高速コーナーが特徴であり、スペインGPで遅かったフェラーリが突然速くなった。
雨上がりのレースは、濡れた部分と乾いた部分に分かれて難しいコンディションの序盤となり、1位を奪ったベッテルが腕で逃げる。ウェバーは差をつけられる。
7位ディ・レスタ、小林、シューマッハの3台は1周目から接近戦を演じていたが、9周目にシューマッハが小林に追突。シューマッハはブレーキミスを認めたが、ドライブスルーでなくストップゴーのペナルティには不服。小林はその後に調子を落としリタイヤに追い込まれる。シューマッハは最後に入賞。
10周目から乾いてきてタイムは急速に向上。いち早くドライタイヤに交換したシューマッハが1分50秒台の壁を破ると、他車も続々と交換する。
ドライに替えたばかりのアロンソは苦しく、ハミルトンに抜かれて4位に落ちる。だがハミルトンはタイヤに厳しく24周目にアロンソが抜き返す。ハミルトンはその周にタイヤ交換を余儀なくされる。
21-24周目のアロンソはコンスタントに1:38秒台でレッドブルより速い。27周目は一気に1:35.551をマーク。ベッテルはアロンソに5秒差があったのに28周目の同時タイヤ交換でミスしてハミルトンの後ろ3位に落ちる。ウェバーはその前の周に交換しミスはなかったが、アロンソの速さに逆転された。
タイヤ交換後、アロンソは2位ハミルトンを突き放す。レッドブルはハミルトンに詰まりアロンソにどんどん差を広げられてしまう。
ベッテルは2位ハミルトンを抜けず、37周目に先のタイヤ交換で前に出る。アロンソは誰より遅い40周目の交換ですんだ。
1位アロンソと2位ベッテルの差は残り12周で10秒。しかしベッテルは追撃できず、差はむしろ広がってしまった。今までマシン性能の差が大きかったが、それがなくなるとアロンソのドライバー力ががぜん意味を持ってきたようだ。





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ベッテルが優勝し、ウェバーはアロンソに敗れて3位。このことからレッドブルが速いと言うよりもベッテルの力によるものが大きかった。レースは第3スティントまで3台の接戦だが、ベッテルは常にピットが最後で最終スティントのミディアムタイヤの周回を最も短くしたとともに、差を広げて接戦に終止符を打った。ベッテルのスティント分割は14-16-17-10だが、アロンソは14-15-16-12で、ウェバーは13-15-14-15だった。ウェバーがアロンソの再逆転を許したのは自らのミスだったが、ミディアムが長すぎて終盤にタイムを落としており、ミスがなくてもアロンソに抜かれた可能性がある。
4-6位の3人、ハミルトンは12-12-18-15、マッサは15-16-17-9、バトンは14-16-18-9だった。マッサとバトンはベッテルに近い分割で、ハミルトンは第3スティントが長い分割。だが上に来たのはハミルトンだった。バトンの敗因はスタートで出遅れてロズベルグを抜いたのが6周目、ハミルトンから7.4秒遅れになり後半KERSを失ったこともありその後は縮めることができなかった。マッサは第2-第3スティントがアロンソに比べて遅かったのが響いた。ハミルトンは第2スティントまで短くつないだおかげで19周目までトップに5秒差だった。第3スティントがロングで苦しくここでトップから離される。4位になれたのは第3-最終スティントでのタイヤ交換直後の走りが速かったたまものだった。
ただ前戦までのマクラーレンの速さは影を潜めた。ディフューザーのルール変更の影響(ダウンフォース低下)をもろに受けたチームとなる。フェラーリはレッドブルに近づいたのか。しかし次戦シルバーストーンはバルセロナと似て高速コーナーが多く旋回性能が問われるコース。バルセロナでズルズル後退した悪夢を再現させない進化があるかどうか。

小林は16位と残念な結果に終わり、本人が速さがないことをあげた。だがそれは7位までの相手に対してである。8位以降との差は少なかった。アルグエルスアリは予選18位から2ストップで8位に上がるという小林のお株を奪うような成績。19-23-14の分割が成功した。長い第2スティントを速いペースで走れたのが効いた。ただし渋滞にまったくはまらない運の強さもあった。チームメイトのブエミはアルグエルスアリの前にいながら3ストップで渋滞にはまり入賞を逃した。
今回は3ストップで9位を取ったスーティルは最後にアルグエルスアリに追いつく速さを見せた。10位ハイドフェルドは同じ3ストップで終始スーティルの後塵を拝したため予選9位を生かせず。
ペレスは1ストップでしぶとい走りだが追い抜きしにくいコースのおかげもありチームの保守的作戦が疑問。小林はアルグエルスアリの戦略を取っていればとの後悔もあるが今回は仕方ない。

バレンシアは今年の割りには追い抜きしずらい残念なコースになってしまった。
CAN


最終周の逆転勝利はF1史上で何度もあるが、同時に途中最下位まで落ちながらとなると過去にない。バトンは2度の接触によるウィングやパンクの修理、ペナルティ、さらにタイヤ交換の賭けに失敗して、通常では圏外に去ったと思われたのに優勝してしまった。長いF1の歴史にも類を見ない逆転劇だった。
レースは赤旗中断2時間を含めた総時間が4時間に及んだ。ラップタイムが序盤が雨で1分36秒台、後半は乾いて急激に上がりファステストが1分16秒台と幅が大きかった。上図で60周目以降の急加速ぶりがわかる。

バトンは予選7位からセーフティカースタートし、8周目にハミルトンと接触。2度目のセーフティカーでピットインし14位に下がる。その後12位に上がったがセーフティカー時の速度違反によるドライブスルーペナルティでまた15位に下がり一進一退。そこからブエミ、スーティル、マルドナード、ディレスタを抜いて18周目に8位まで浮上。
20周目、雨が激しくなり3度目のセーフティカーが出てタイヤ交換。25周の赤旗中断で10位だった。ドタバタしながらもセーフティカーのおかげで1位との差は11秒にしか開いてない。

レース再開後の35周目にインターミディエイトに履き替える。37周目にアロンソと接触してピットインし最後尾21位に転落。このときさすがのバトンも終わったかに見えた。だが4度目のセーフティカーでトップとの差は十数秒にしか広がってない。ここから追い上げを開始。HRT、ロータス、ヴァージンは楽に抜いて43周目に15位。デ・ラ・ロサのザウバー、トロロッソ、ウィリアムズの中団も抜いて50周目に8位に上がる。51周目、早めにドライに履き替えたのが効いて54周目に5位。55周目に小林抜き4位。前は3台だけになった。
57周目、ハイドフェルドが小林に追突して5度目のセーフティカー。ここでトップのベッテルが見える範囲になった。
シューマッハとウェバーの2位争いはバトンにとって苦ではなかった。ウェバーは64周目にバトンに抜かれたとき、あまりの速さの違いに驚く。65周目にバトンはシューマッハを抜いて2位。前はベッテルだけになり3.1秒差。

66周目、ベッテル1:19.474でバトン1:17.967(-1.5秒)。差は1.6秒に縮まる。ベッテルも応戦したが67-69周目でコンマ2〜3秒縮める。ファイナルラップ70周目に入り0.9秒差になった。DRSが使える範囲内。ベッテルは焦り、濡れた路面に滑ってバトンに首位を明け渡した。

レッドブルは最後のセーフティカー前、ドライタイヤに履き替えた54-56周目にバトンがベッテルより3秒速い驚異的なペースだったことを考慮すべきだったか。シューマッハとウェバーがふたをしてくれてベッテルは安泰と甘く見すぎたか。レース後に明らかにがっくりとした表情のベッテルは、どんなに勝ちまくっていてもまだ勝ちたい心があることを示した。だが2位になったことは選手権で後続との差を60点(2勝以上)に広げたことになった。 今日のマクラーレンのポテンシャルを見たことで後半の戦い方に意味を持つ。



小林可夢偉は金曜のフリー走行1で20位と低迷。フリー走行2は15位だが最終シケインでクラッシュ。マシンが決まらず苦労していた。土曜フリー走行でも15位変わらず。予選で13位だったのは上々だった。
レースがウェットになったのはザウバーにとって恵みだった。ザウバーのタイヤ交換を遅らせるいつもの作戦は小林を2位にまで浮上させた。なお、日本人のレース途中最高位記録は佐藤琢磨の2004ヨーロッパ(ニュルブルクリング)での1位(10-11周目)。
雨が上がり乾き始めると順位を維持することはできなかった。フリー走行の実力通りになった。小林に追突したハイドフェルドとロズベルグにも抜かれていた可能性があった。
しかし、小林が赤旗前に見せた速さは上図の5-7周目、13-19周目に表れている。また、再開後も2位にふさわしい速さがあったことは41-49周目でわかる。マッサはずっと抜けないでいた。しかし51周目に乾いてきた路面で順位を明け渡し始めた。
次戦はバレンシアで、昨年小林が12周目から52周目まで3位走行したところ。ラスト2周でアロンソを抜き、ファイナルラップ最終コーナーでブエミを抜いた。活躍の再現を期待。
MON

優勝者平均速度で全周回を走る架空車とのタイム差を示したレースチャート(但しセーフティカーの34-38周目、69-72周目は平均速度から除外)
スタート前、レッドブルはマクラーレンが少ないストップ数で来ることを恐れた。ベッテルはスタートから差を広げたかった。
序盤はベッテルが思惑どおりリードし5周目に4.668秒差に広がる。その後2位バトンは離されず13周目に3.475秒差にやや詰める。このときマクラーレンは機敏だった。ベッテルが3-12周目まで1分19秒台で走っていて13-14周目に1分20秒台に落ちたのを見て、15周目にバトンをピットインさせる。15周目のベッテルは1分21秒台に落ちる。それでも逆転は無理に思えたが、レッドブルが16周目にベッテルをピットインさせた時に手間取ってしまい4秒ロスし、バトンが1位を奪う。バトンは引き続きスーパーソフトタイヤ(オプション)だがベッテルはソフトタイヤ(プライム)に履き替えた。レッドブルはスーパーソフトにするつもりがピット内で無線が混信しクルーに正しく伝わらなかったという。だがマクラーレンが早めに動くことが予想外であわてふためいたのかもしれない。引き続き入れたウェバーは十数秒ロスして14位まで転落した。
第2スティントは1位バトンがタイヤの利を生かし24周目で14.960秒差まで広げる。この時点でレッドブルは相手を恐れすぎて負けたレースだった。ベッテルに出来ることはレース前とまったく逆に自分たちが少ないストップで逆転を狙うことになった。
バトンは33周目に2回目のピットストップを行う。マクラーレンは少ないストップではなく逆だった。レッドブルに出来うることは、ベッテルがいずれ追いつかれるバトンのふたをすることだった。絶対に勝つためにはもうピットストップしない、すなわち63周の長きにおよぶスティントで、タイヤが持つかわからないことだった。


しかし33周目、マクラーレンに皮肉な出来事がおこる。もう一人のドライバーのハミルトンがマッサと接触し、マッサはトンネルでクラッシュしてしまう。これでセーフティカーとなりバトンの優位が失われた。
再開後、バトンは41-47周目にかけてベッテルの真後ろで速く走れない。48周目、バトンは2度目の交換に入る。マクラーレンにまだ目があったのは、ベッテルのタイヤが持たなくなることだった。バトンはプライムで1分17秒台の驚異的に速いタイムを出し見る見るうちに迫っていく。
さてアロンソに目を転じると、2スティント目で速く走れず、プライムのベッテルに迫れなかった。フェラーリは相変わらず厳しかった。だが1回目のセーフティカーでアロンソがプライムにスイッチしたとき、光明が見えてくる。より長く走っているベッテルに追いつくことができたのだ(57周目に0.779秒差)。
ベッテルにとってきつかったのは、ラップタイムが49周目から下り坂になっている所。だがベッテルは歯を食いしばって耐えた。58周目から再びタイムを上げている。
とはいいながらバトンも62周目に追いつく(0.727秒差)。3台が団子になる状態で、一番タイヤが厳しいのは1位ベッテル、次に2位アロンソ、一番有利なのが3位バトンという状況だった。
ベッテルは67周目に1分20秒台に落ちた。このときタイヤは限界が来ていただろう。そして2度目の幸運をもたらしたのが68周目の多重クラッシュによるセーフティカーだった。73周目からの5周スプリントレースはタイヤを交換し、序盤に強いレッドブルを再現すればよいだけだった。なお、ピレリは赤旗中断後の再開ではタイヤ交換禁止にすべきと後に語っている。
ハミルトンは74周目にも1コーナーでマルドナードと接触しリタイヤに追い込んだ。これもセーフティカーになりかねない事故だった。この日のハミルトンはかつての頭に血が上る男だった。マクラーレンは勝てるレースを失う原因を自らのチーム内に抱えていた。

小林はスタートでディ・レスタにかわされ11周目まで13位走行。プライムでスタートした1ストップ策は小林だけでなく、スーティルもそうだった。
25周目時点で、小林8位、スーティル9位。その前を走っていた4位マッサ、5位マルドナード、6位ペトロフ、7位バリチェロらは25-32周目にピットインした。彼らはセーフティカーでピットインしなかったので裏目に出たことになる。1回目のセーフティカー直前33周目で小林4位、スーティル5位まで上がる。34周目に二人がピットに入り、スーティルが前に出た。二人は4-5位のままで、25周目で前にいた連中を出し抜くことに成功した。
小林は38周目からウェバーに後ろに付かれて苦しかった。タイヤを持たせながら抜かれないという困難なドライブだった。それでも小林は54周目まで順位を守り続けた。ウェバーが55周目にピットインして一息。
それから小林はスーティルとの戦いに専念できた。どちらもオプションタイヤで長いこと走っていた。先にタイヤが音を上げたのがスーティルだった。61周目からスーティルのタイムは1分21秒台に下がる。65周目に小林は抜いた。スーティルが限界を超えていたのは68周目に多重クラッシュの引き金となったバリアへの接触で明らかにもなった。
小林はスーティルを抜いた後の65周目からタイムを上げており、68周目は1分19秒台でトップ争いのタイムに匹敵していた。ウェバーはそれを上回るタイムだったので赤旗がなくても抜かれていただろうが、小林は最後までタイヤを持たせる力を持っていた。
上図のレースペース図(0.5秒刻みで各タイムを何周走ったか)で小林(青)はトータルで決して速かったわけでないことがわかる。まさに混戦にこそ勝負強い真価を発揮した。
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バルセロナは高速コーナーがいくつもあるのが特徴で、旋回性能が試される。ここで2-3位に入ったマクラーレンの力は本物で、フェラーリ以下はダメというシーズン評価が定まりそうだ。
このレースでハミルトンは勝つチャンスがあっただろうか。ハミルトンはスティントを11周-12周-12周-14周-17周と忠実に分けた。2ストップ目でライバルが早めの18-19周目に入ったのに対し、ハミルトンは自らの配分を守り23周目に入った。このため24周目時点で1位ベッテルに4.9秒差に広げられてしまった。だがハミルトンは25-29周目に1分27秒台を連発し、差を1秒台に詰める。
3,4ストップ目でハミルトンはいずれもベッテルの1周後にピットに入る。どちらもピットアウト後は2秒差でベッテルに前に行かれた。ここでマクラーレンが違う戦法を取るとしたら、1つは3ストップ目でベッテルより先の33周目にピットインすることが考えられる。ベッテルの33周目は1分30秒台に落ちていたため前に出た可能性があった。ベッテルのスティント分割は9周-9周-16周-14周-18周だが、3スティント目がオプションタイヤにしては長い。このことは気がついていたはずで、賭けるならここだった。アロンソらの失敗から早めに動きたくなかったのかもしれない。待つことと動くことを1レースの中で行うのは難しかったか。
もう1つはハミルトンの最終ストップをもっと後にずらすことが考えられる。だがハミルトンの4スティント目の14周は限界に来ていたことと、ベッテルの最終スティントの出だしが速かったことから、これは無理だった。
とはいうものの、マクラーレンが同じピットストップ回数でレッドブルに迫ったことは驚きであり、これからのレースでは上回ることも考えられる。

アロンソの後半の4、5スティント目は悲惨だった。通常は軽くなって速くなるはずのタイムが逆に遅くなった。アロンソは10周-9周-10周-10周-26周というプライムが40%にもなる展開。フェラーリが目先の順位にこだわらず、忠実なるスティント分割をしていれば3位は守れただろうか。しかしマッサともども後半のフォースインディアより遅いタイムでは勝負にならなかった。
ウェバーはアロンソ対策でスティント分割が狂ったこととバトルでタイヤを痛めたことが響いた。プライムタイヤの走りでは前戦までの切れがなく、最後はバトンに離されてしまった。この3-4位対決でもマクラーレンの進化が見て取れる。
メルセデスは2台とも3ストップ策で周回遅れにされてしまった。スタートでシューマッハがロズベルグの前に出て、以後はずっとそのままでくっついて走る。ロズベルグが前だったらどうだったろうと思わせる。
ルノーは2台が予選で明暗を分けたのにともに3ストップ策。ペトロフが11周-15周-15周-24周、ハイドフェルドが21周-15周-14周-15周。結果はハイドフェルドに出て、ペトロフはガタガタになった。中団は混戦で最初にプライムタイヤを履いてもそれほど差がつかない。逆に最後にプライムにするとオプション勢のえじきになった。


ザウバーは3ストップで2台入賞。ペレスは7周-22周-18周-18周、小林は1周(パンク)-24周-19周-22周。ライバルのフォースインディアとトロロッソも3ストップだったが、ザウバーにはここぞというところでの速さがあった。ザウバーは前半をプライムで耐え、後半に軽さとオプションの組み合わせでトップチーム並みの速さを出す作戦が功を奏した。だが、メルセデスが視野に入ってきており、今後のレースでは積極的な策もあってよくないかと思わせる。
TUR

(優勝者平均速度で走る架空車とのタイム差の推移図、優勝者が最終周にタイム差0となる)
トップチームはバトン以外が4ストップを選択。ベッテルは3ストップでも行けそうだったが前戦の教訓から4回目のストップを行う。
ウェバーとアロンソの2位争いは51周目にウェバーが抜き返して決着したが、ウェバーの終盤プライムタイヤでの快走は毎度のことになりつつある。速いレッドブルに乗っているのならレースの大半を占めるオプションタイヤでの遅い走りが問題だろう。アロンソは今季初表彰台で、オプションタイヤでの速さが明るい材料となった。
逆にマクラーレンは前戦優勝の勢いが3週間の間で止まった。高速コーナーの旋回性能が求められるコースで遅かったことは次戦スペインも厳しい。それがタイヤ磨耗によるものかマシン本体かのどちらだろうか。バトンの3ストップ策は終盤にタイヤが持たなくなり6位も危なかった。


(ラップタイム推移)
メルセデスはラップタイムでオプションタイヤがとても遅いことが明白となった。レッドブルやフェラーリより1秒も遅くては追い抜き可能時代で勝負にならない。ルノーも同様で、この2チームはトップと差がつけられてきた傾向にある。マッサは予選10位だったのにこの2チームの車に抑え付けられたことと、3ストップ直後のコースアウトで渋滞につかまったことが響き入賞を逸した。
ウィリアムズは予選で今季最高11位まで上がってきて速くなったかと思わせたがレースはまったく遅かった。一方トロロッソは予選で後方に沈んだがブエミが3ストップ策を成功させ、メルセデスとルノーを出し抜きそうだったが、最後にタイヤが持たずルノー2台に抜かれた。フォースインディアはレースで遅く、入賞を狙うに至らず。

(0.5秒刻みで各タイムを何周走ったか)
小林可夢偉は予選ノータイムによる最後尾からペーターに約束した入賞まで上がった。3ストップ策が功を奏しただけでなく、速さもあった。ラップタイムの15-19周目はトップと同様の走りでバリチェロを抜き8位。その後にブエミを抜いた時の接触でパンクして17位に落とす。2ストップ後にディ・レスタに抑えられたが3ストップ目の40-44周目の走りが速く前へ出た。その後も51周目まで1分31秒台の走りが効いてマッサに抜かれずに済んだ。パンクがなければ7位も可能だったと語る。
CHN

ベッテルとレッドブルに想定外のことが起き続けた。スタートでマクラーレンの2台にかわされ、1回目ピットで前に出たがロズベルグに先行される。無線が調子悪い。レッドブルは2ストップ策に変更したが、このレースでその策をとったフェラーリ、ルノー、ザウバー、フォースインディアのいずれも最後の数周でプライムタイヤは持たなかった。
一方、前戦でタイヤに苦しんだハミルトンは、ここで見違えるように快走。チームメイトでタイヤマネジメントのうまいバトンにも勝った。ハミルトンにとって二重の意味で大きい。同じことはウェバーにも言え、レースがさらに数周あればベッテルも抜く勢いがあった。
今年は3戦して、ピレリタイヤの特性から短いスティントでピットストップした方が優位な傾向に見えてきた。

小林はフォースインディアの2台に抑えられ続けた。2ストップ策も同じだったため、自分のペースで走れなかった。もし3ストップにしていればという思いが再びよぎらざるをえない。ペトロフも2ストップだが、第2スティントを長く取っていたため最終スティントはタイヤが持っていて小林を抜いた。もはやプライムタイヤで後半のレース半分を持たせる戦法は厳しい。

KERSに加えてDRSがあるためオーバーテイクがしやすくなったことで、タイヤがきつくても順位を守り抜く考えは捨てた方がよさそうだ。プライムタイヤは持ちが良いわけでなく、遅すぎるわけでもない。各チームは積極的なレース展開が今後もみられそうだ。
MAL

レースチャート(優勝者平均速度で全周回を走る仮想車との周ごと差の推移)
上位陣は3ストップ策で共通。マクラーレンはルノーに抑えられたため早めに動く。2スティント目でフリーになったハミルトンは速く走るがオプション(ソフト)タイヤが持たない。3スティント目でハミルトンは僚友バトンに後ろに着かれてしまう。ハミルトンはピットストップのロスでバトンの先行を許すが、それがなくても今回のレースは非常に厳しく、タイヤマネジメントでバトンに劣った。4スティント目のプライム(ハード)タイヤでは誰よりも遅く、アロンソと接触しただけでなく、さらにもう一回交換を余儀なくされた。マクラーレンは速くなったが、ピレリタイヤの使い方でハミルトンは今後も改善が必要となる。
タイヤに厳しかったのはルノーも同様。これに対しフェラーリはレースで良く、2スティント目からルノーの前に出て引き離した。ただベッテルは別格の速さで迫れない。ベッテルの3スティント目はライバルたちが苦しむ中で長い周回を保ち差を広げた。ウェバーは4ストップとなり、一発の速さは出してもピレリのオプションタイヤを持たせることが出来ない問題を抱えている。

ラップタイム周ごと推移
小林(青色)に視点を置くと、2ストップ策で17-19-20とスティントを分割した。1,2スティントともシューマッハに抑えられた周回が長い。2度とも抜いたが、その後のペースが遅く、上位陣に迫ることは出来ない。ザウバーのタイヤの持ちに賭けたが、結果的に3ストップ策とレース総時間は大して変わらなかっただろう。2スティント目と3スティント目の前半のペースは上位陣と比べても良かったので、彼らと同じ戦略での積極的なレースも見てみたい。ザウバーは入賞狙いでメルセデスやインディアと戦うのではなく、ルノーと戦う気でいてほしい。


レースペース(各車が何秒台を何周走ったか)
ベッテルが1分42秒台を12周走り、安定して速かったが、バトンも負けていなかった。両者の差は予選と序盤だけだった。ベッテルを独走させないためには、1周目からついていくこと。チームで役割を変え、タイヤ磨耗覚悟で飛ばしてベッテルとバトルする者と、じっくり戦って後半に勝負を賭ける者に分けてはどうか。