2008年版解説

2008年版表紙

 2008年版は3月6日発売された。なお、ミシュラン社の公式プレスリリースは3月3日に公表されている。

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フランス全土で26軒
(昇格1軒、降格1軒)
パリ
[周辺部を含む]

【昇格】(0軒)

【降格】(1軒)
○パリ7区、パレ・ロワイヤルの一角にある名門レストラン、"グラン・ヴフール(Grand Vefour)" が降格。戦後、91年以来シェフを務めるギー・マルタン(Guy Martin)のもとで2000年に三つ星に昇格していたたが8年で再度二つ星に。ミシュランガイド編集長のナレ氏の新聞コメントによると "consistency"に問題があるとの評価の模様。そういえば、マルタンは、フィガロ紙の「三つ星の再検討」という企画で、19人中の16票を集めて、三つ星に価しないシェフランキングの堂々トップを占めていた。まあ、料理のスタイルが最近のミシュラン好みではないという面もあるかもしれない。

パリ以外

【昇格】(1軒)
○南仏マルセイユのホテル・レストラン"プティ・ニース(Petit Nice)" が昇格。2007年版では昇格候補(espoir)になっており、下馬評でも有力視されていた。まずは順当なところ。マルセイユでは初の三ッ星とのこと。オーナーシェフはジェラール・パセダ(Gerald Passedat)。1917年、ジェラールの祖父(ジェルマン(Germain))の時代に開業。父親(ジャン=ポール(Jean-Paul))の時代にミシュランの星を獲得。79年に一つ星、81年に二つ星。三代目のGeraldは85年に若干25歳で店を引き継ぎ、20余年を経て三つ星を獲得したことになる。

【降格】(0軒)

三つ星候補(espoirs)
(3軒)

○新しくespoirとなったのは、パリ8区のホテル・ブリストル内のメインダイニング、ル・ブリストル(Le Bristol)。シェフのエリック・フレション(Eric Frechon)は93年に36歳でM.O.F.を受賞した俊秀。99年にブリストルに迎えられ、01年には二つ星を獲得している
○南仏エズのシャトー・ドゥ・ラ・シェーブル・ドール(Château de la Chèvre d'Or)(シェフ:フィリップ・ラベ(Philippe Labbe))、ボルドーはポイヤック村、シャトー・コルデイヤン・バージュ(Chateau Cordeillan Bages)(シェフ:ティエリー・マルクス(Thierry Marx) )の2軒は昨年からの引き続き。
○2007年版に載っていたパリ、ホテル・クリヨンの「レザンバサドゥール(Les Ambassadeurs)」(シェフ:ジャン=フランソワ・ピエジュ(Jean-Francois Piege))。南仏ナプル、「ロアシス(L'Oasis)」(シェフ:ステファン・ランボー(Stéphane Raimbault))、南仏グラースの「バスティード・サン・タントワーヌ(Bastide St-Antoine)」(シェフ:ジャック・シボワ(Jacques Chibois))の3軒はespoirから外れた。

   



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フランス全土で68軒
(一つ星からの昇格が8軒、三つ星への昇格が1軒、一つ星への降格・閉店が6軒、三つ星からの降格が1軒)
パリ
[周辺部を含む]

【昇格】(1軒)
○7区の「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション(L'Atelier de Joel Robuchon)」。06,07と2年続けてのespoirであり順当な昇格。ロブション強いですね。

【降格】(0軒)

パリ以外

【昇格】(7軒)
○トゥールーズ近くのプジョドランにある「ル・ピュイ・サン・ジャック(Le Puits St-Jacques)」。97年に一つ星。06,07年のespoirであり、順当な昇格。シェフは、ベルナール・バッハ(Bernard Bach)。
○ロワール河流域のオンザンにある「ドメイヌ・デ・オ・ドゥ・ロワール(Domaine des Hauts de Loire)」。ここは06年に一つ星に降格となったが二年で二つ星に復帰。シェフは、レミ・ジロー(Remy Giraud)。
○サン・テミリオンの「オステレリー・ドゥ・プレザンス(Hostellerie de Plaisance)」。ここも06,07年のespoir。シェフは、93年からフィリップ・エチェベスト(Philippe Etchebest)。彼は2000年のM.O.F.受賞者。
○サン・ジャン・ピエ・ドゥ・ポールの「レ・ピレネー(Les Pyrénées)」。2000年に一つ星に降格となっていたが8年ぶりに二つ星に復帰。シェフはフィルマン・アランビド(Firmin Arrambide)

○サン・ジュスト・サン・ランベールの「ル・ヌヴィエム・アール(Le Neuvième Art)」。シェフのクリストフ・ルゥル(Christophe Roure)は07年のM.O.F.受賞者。
○サン・マルタン・ドゥ・ベルビルの「ラ・ブイット(La Bouitte)」。03年に一つ星。シェフは、ルネ・メイヤー、マキシム・メイヤー父子(René et Maxime Meilleur)。
○トゥールーズの「ランフィトリオン(L'Amphitryon)」。シェフは、ヤニック・デルペク(Yannick Delpech)。店の名前の「アンフィトリオン」とは、フランス語で"晩餐のもてなし役(ホスト)"のこと。なお、全く同名で02年に二つ星になっているレストランがブルターニュ地方にある。こちらのシェフはジャン=ポール・アバディ。

【降格】(6軒)
一つ星への降格は2軒
○エクス・アン・プロヴァンスの「ル・クロ・ドゥ・ラ・ヴィオレット(Le Clos de la Violette)」。二つ星昇格は99年。
○ラ・ロッシュ・ベルナールの「オーベルジュ・ブリトン(L'Auberge Bretonne)」

閉店等により星が無くなったのは次の4軒
○トゥ−ルの「ジャン・バルデ(Jean Bardet)」は今年2月末で閉店。
○ヴァンスの「ジャック・マキシマン"ターブル・ダミ"(Jacques Maximin"Table d'Amis")」も閉店。
○カンヌの「ラ・ヴィラ・デリス(La Villa des Lys)」は、08年中は工事のため閉店
○リヨンの「レオン・ドゥ・リヨン(Léon de Lyon)」は、シェフのジャン=ポール・ラコンブ(Jean-Paul Lacombe)が07年一杯で引退。これに伴い店のコンセプトをブラッセリーに変更。
バルデ、マキシマン、ラコンブと一時代を画した名シェフ達が揃って一線を退くこととなった。ただし、ジャック・マキシマンは、コンサルタントとして、アラン・デュカスのグループに協力するようなので、マキシマンのレシピに基づく料理は今後も味わえるかもしれない。

二つ星候補(espoirs)
(5軒)

○パリは1軒。16区の「グラン・カスカード(La Grande Cascade)」。ブローニュの森の中にある有名レストラン。97年に一つ星。建物はナポレオン三世時代のもの。シェフはフレデリック・ロベール(Frederick Robert)。
○パリ以外では4軒。アルルの「
ラトリエ・ドゥ・ジャン・ルック・ラバネル(L 'Atelier de Jean Luc Rabanel)」。シェフのラバネルは、ゴー・ミヨー08年版で"今年のシェフ"に選ばれて話題になったばかり。オーガニック素材の料理は時代にマッチしているということか
○ヴィシーの「
ジャック・デコレ(Jacques Decoret)」。07年に引き続いてのespoir。シェフのジャック・デコレは、96年のM.O.F.受賞者。ヴィシーの調理学校出身だが、パリの三つ星アストランスのパスカル・バルボ(Pascal Barbot)も同窓。地方の調理学校侮るべからず。
○ボルドーの「
サン・ジェームス(Le St-James)」。ここも07年に引き続いてのespoir。シェフのミシェル・ポルトス(Michel Portos)は、トロアグロの料理長を務めた後、独立して一つ星を獲得したが、02年から現在のホテルのメイン・ダイニングを受け持っている。上述の、ティエリー・マルクス、フィリップ・エチェベストと並び、現在のボルドー地区を代表するシェフの一人。
○その他に、南仏ビオットの「
テレイエール(Les Terraillers)」。

   



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フランス全土で436軒
(昇格52軒。合計では昨年より1軒減少)
パリ
[周辺部を含む]

 【昇格】(5軒)
○注目は、何といっても和食として初の星を獲得した7区の日本料理「あい田(Aida)」。シェフは相田康次。最近とみに評価が高かったが、05年の開業から3年弱で星獲得の快挙。
○6区の「ザ・キッチン・ギャラリー(Ze Kitchen Galerie)」。隣接のレ・ブキニスト(ギー・サヴォワのセカンド店)でシェフを務めていたウィリアム・ルドゥイユ(William Ledeuil)が独立して01年に開業。もっと早くに星がついてもよかったのではないかとの意見も。
○7区の「イル・ヴィーノ・デンリコ・ベルナルド(Il Vino d'Enrico Bernardo)」。エンリコ・ベルナルドは、ル・サンクのシェフソムリエだった2004年に史上最年少で世界最優秀ソムリエコンクールに優勝。その後独立して、南仏カシス、パリ、クールシュベルと店を展開。このパリの店は07年9月オープン。ちなみに、カシスの店、ヴィラ・マディ(La Villa Madie)も今年一つ星となっている。
○2区の「プル・グリル(Le Pur' Grill)」は、ヴァンドーム広場近くにあるパークハイアットホテル内のレストラン。シェフは、ジャン=フランソワ・ルケット(Jean-François Rouquette)。ヤニック・アレノ(Yannick Alleno)が抜けた後のレ・ミュゼを引き受け、その後06年にパーク・ハイアットに。
○6区の「ル・レストラン(Le Restaurant)」。あまりよく知らない。

【降格】(7軒)
○9区のホテル・スクリーブ内の「レ・ミュゼ(Les Muses)」。浮き沈みの激しいレストラン。昨年一つ星に復帰したばかりだったが再び星を失った。ただし、スクリーブのサイトをみるとレストランからレ・ミュゼの名前が無くなっているので、店のコンセプト自体を変更し、名前も含めて模様替えしたのかもしれない(未確認)
○8区の名門ホテル、ロワイヤル・モンソー内の二つのレストラン「ル・ジャルダン(Le Jardin)」と「ル・カルパッチョ(Le Carpaccio)」が同時に星を失った。ロワイヤル・モンソーは、昨年初頭、経営権の関係で揉めたり、防火体制不備で営業停止になったりした後、全面改装で9月に再開したのだが、今回の結果は営業的にちょっと痛手だろう。ル・ジャルダンは、シェフのクリストフ・ペレ(Christophe Pelé)が独立した影響もあると思われる(ペレは、17区でラ・ビガラード(La bigarrade)という店を経営)。
○16区の「ル・ルレ・ドゥ・パルク(Le Relais du Parc)」は、その昔、ロブション及びそれを引き継いだアラン・デュカスと同じ敷地でセカンドレストランとして営業されていた店。デュカスがプラザ・アテネに移った後はアラン・デュカスグループの一つとして06年に一つ星を獲得していた。

パリ以外

【昇格】(47軒)
○ 一軒だけ紹介しておく。ストラスブールの「ビュルイーゼル(Buerehiesel)」。いわずとしれた元三つ星。昨年、代替わりに伴って店のコンセプトを変更し実質的に三つ星返上していたが、息子のエリック・ヴェスターマン(Eric Westermann)のもとでも一つ星獲得となった。今後の動向に要注目。

一つ星候補(espoirs)
(13軒)
○パリには候補は無く、地方に13軒。