視覚と聴覚の間
成人した現在でも、私は騒がしい空港で待っている間、環境音をシャット・アウトして読書にふけることができるが、空港の騒音を押しのけて電話で話しをするのは、不可能に近い。
テンプル・グランディン『我、自閉症に生まれて』P33
私のウチでは、電話がかかってくるとテレビを消します。それに、多弁の子ども達も黙らせます(これは、当たり前)。私は、音があっちこっちから聞こえて来る中で、そのうちの一つに集中して聞き、返事をするのがタイヘンなのです。あっちこっちから聞こえてきても、その内のどれか耳に入ってきたコトバに反応すればいいのなら良いのですが…。よく、他人の会話に割り込んで入って、キョトンとされました。かといって、聞きながら答える会話ではなく、講演のように、話しを聞くだけ聞いて、あとでこちらから質問できるのなら、何の差し支えもないのです。
でも、最も得意な「頭の中で言葉の連想ゲームをする」のは、どんな環境ででも出来ます。騒音(聴覚)をシャット・アウトして、好きな本を読書する(視覚 )のも平気です。相手の話しに合わせて受け答えをするのは苦手だけれど、こちらから言いたいことを一方的に主張するのは簡単です。単純作業をしながら喋るのはいいけれど、料理(そもそも、同時にいくつも出来ない)など、段取りのある仕事をしている時に話し掛けられると、怒ります。
聞くだけならいいし、話すだけならいいのに、いろんな音や思考を掻き分けて、人の話しを聞きながら人と話すことが、タイヘンなのです。
それに、あっちこっちからいろんな音が、大きさや指向性(誰に向けられているか)がほとんど同じレベルでいっぺんに聞こえてきます。視野の中の色々なものが同時に目に入ってくると、もともといつも動いている視線が、あっちこっちにさまよい出します。これが、注意散漫ということなんでしょう(ここまでならば注意欠陥だけど、障害というほどでもないような…)。私はこの程度で済んでいるので、言語や学習にはほとんど影響がありません。(サングラスで楽になった部分も、この分野には関係がないみたいです。)
でも、視覚や聴覚の知覚が過敏で光や音が苦痛だったり、逆に鈍感で外界の情報が入ってこなければ、視覚や聴覚の障害はなくても、発達に支障をきたすに決まっています。視覚・聴覚・触覚の知覚に異常があって、外界との接触を自ら遮断してしまう程になると、自閉状態になるのでしょうか??? その場合、こだわりや常同行動の出どころはなんなんでしょうね??? 自閉ということになると、もっといろいろな要素が組み合わさっているんでしょうね??? だから、広汎性発達障害と言うのでしょう!!!
ま、医学上の分類はともかくとして、私は私の謎解きを続けます。
ところで、また今日も、面白いことをたくさん発見しました。今日は、保育園で参観会があったのです。多動はおさまったものの注意の欠陥があって言葉の理解も悪く、このまま行くと学習上の困難が出るだろうと予想される次男の様子をしっかり見ながら、私は私を観察しました。その結果、
- 人が集まると、まず、一生懸命に「字」や「模様」や「絵」を探そうとする。
- 誰かに話しかけられないように、とりとめのない世間話を聞かないように、頭の中の何処かで外界へ通じる回路が遮断されて、その結果、ボ〜っとする。
- 大人の会話に巻き込まれないように、できるだけ子どもの近くに移動する。でも、そんなことをしなくても、子どもの方から寄って来る。何故かって? 子どもの方が話題に困らないので、私がついつい子どものちょっかいに乗ってしまうのを、みんな知っているから。
- 先生などのお話が始まると、そのコトバに注意を向ける。そして、頭に浮かんだことを、聞いてくれそうな人にすぐに喋る。
- 先生の話を聞こうとすると、まっすぐ顔を見るよりも、外の景色を眺めていた方が、よく聞こえる。
どうやら、私は自ら努力して、ヒトに関する情報を受け付けないようにしているみたいだ。
う〜ん、今日の発見は、やめたくないものばかりだった。
そうそう、視覚と聴覚と言えば、「特定の音を聞くと、いつも色も見える」(『ガイドブツク・アスペルガー症候群』P214)と表現される"共感覚"がちょっとあります。
私はたいてい、人の歌声に反応します。楽器の音については、中学か高校のの時に「プロコフィエフの[青い影]の、最初のオルガンの音が黄色い」と表現したのを、誰も解ってくれなかったので、やめてしまったみたいです。
私の場合、思い浮かぶのは形が多いのですが、色の時もあります。例えば、
- 小松未歩の声は、デビモン(デジモンというゲーム&アニメに出てくる悪魔)の羽根をグレーにしたもの。
- 浜崎あゆみの声は、透き通った水色。
- hitomiの声は、緑がかかった茶色。
- 似たようなバラードなのに、ZARDの声は、軽くて・端っこが丸まっていて、聞きたくない。
好きな方は、目をつぶって聴くと自然に出て来たり、突然思い浮かんだりします。嫌いな方は、聞いたときになんか気持ちが悪くって、考えると出てきます。好き嫌いの理由というわけではないのですが、私は何故か、四角・三角系の音が好きです。ま、いっか、どーでも。
ちなみに、今日は何の感情もないので、壁紙はシロです。とーでもいーけど。
「恐怖の日常会話」へ 「ペンギン日記」へ 「ここではない、どこかへ」へ