フラゴナール Fragonard 1732‐1806
水浴の女たち 1765
音楽のレッスン 1765-72
ブランコ 1766
霊感 1769
読書する女 1770-72
閂(かんぬき) 1778
フランスの画家。フランス南部のグラス Grasse に生まれ, 7 〜 8 歳のころパリに出る。ブーシェのアトリエに学び,のちにバン・ロー C.van
Loo にも学ぶ。 1752 年ローマ賞を得,56‐61 年イタリアに留学。この間,画家ロベール,富裕な美術愛好家サン・ノン修道院長と密接な関係を保ち,ティボリ,ナポリなどで彼らとともに描く。帰国後,アカデミー入りの資格作品として描いた《コレシュスとカリロエ》は,
1765 年のサロン (官展) に出品されてディドロの激賞を受け,王にも認められる。また,ゴブラン製作所より下絵の注文を受け,ルーブル宮殿に一室をあたえられる。
しかし彼は公的な経歴を望まず,優雅な風俗画や,魅惑と典雅さを失わない,宮廷生活を描写した〈閨房画〉,あるいは風景画,自由な感興のおもむくままに巧みな素描力により描かれた肖像画など,市井の注文にも応じ,イタリア留学時代に培われロココの感性を受けついだ自由な筆触,光と動きの戯れ,魅惑的な主題は多くの顧客を集めた。とくにサン・ジュリアン侯爵のために描いた《ぶらんこ》 (1766) は,版画化されて彼の名声を高めた。 71‐72 年にはデュ・バリー夫人の注文によって,ルーブシエンヌの館のために〈愛の進行〉を主題とする
4 部作を描くが,新古典主義の風潮の高まりのなかで,この作品は実際には彼女の館を飾ることはなかった。大革命とその後の趣味の変化は,いっそう彼の画作を孤立させた。そのロココ最後の画家としての感性,また先ロマン主義的な傾向,自然の光への目は,
19 世紀以降再認識されている。