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小松原一男さんとハーロック

 

Harlock

<2002.10 Illustrated by Maja>

 

 

 


  小松原一男さんといえば、ちょっと昔のアニメを見ていた人なら特にそのお名前をご存知の方もきっと多いはず。
 そうです、まだアニメがテレビまんがと言われていた時代からずっと数多くのアニメに携わって大きな貢献をされてきたアニメーターさんですよね。
 「タイガーマスク」「デビルマン」「キューティーハニー」「風の谷のナウシカ」など、今でも語り継がれるようなさまざまな作品の世界を実際に現場で描き出されてきたわけですが、勿論松本アニメの世界とも大変縁の深い方です。
 特に、ハーロックとはアニメーションの世界では、この人ほど深い結びつきのあるアニメーターの方はいないといっても過言ではないかもしれません。

  先日、その小松原さんの画集が発売されました。
 それは勿論松本アニメだけでなく、小松原さんの生涯関わったいろんな作品がまとめられており、素人から見ても小松原さんという人に対しいろんなことを感じ入ることの出来たものでしたが、小松原氏とハーロックについても改めて伝わってくるものがありました。
 そこで、しばしここで小松原一男さんとハーロックについて取り上げてみたいと思います。

  小松原一男さんとハーロックとの関わりは、一番初めにアニメーションでのハーロックが誕生した時から。
 そう、ご存知1978年の「宇宙海賊キャプテンハーロック」からです。
 原作のハーロックをアニメーションにするにあたってアニメ用にキャラクターの設計をする、ということを小松原さんは最初に取り組んだ方なわけですが、これが素晴らしくてなかなかこれを超えるものって今だに出てこないように思います。
  しかし確かにアニメならではのハーロックになっているので、当時原作のハーロックのイメージが強いと違和感を持つ人もいたというのも頷けますね。
 ただ原作のハーロックをアニメーションの世界で小松原さん独特の個性と解釈がプラスされて創り出された「宇宙海賊キャプテンハーロック」や「劇場版銀河鉄道999」のハーロックは、圧倒的な存在感や原作とはまた違った魅力があったのも事実でした。
 やっぱりこれはその当時他の人では真似出来ないだろうときっと誰もが思っていたかもしれません。
 ともかく氏の描くハーロックは圧倒的な支持を得て、小松原氏以外の描くハーロックなんて考えられないというほど、氏の描き出したハーロックのイメージはすっかりアニメーションのハーロックとして不動のものになってた感がありました。
  「宇宙海賊キャプテンハーロック」以降、1979年の「劇場版銀河鉄道999」、その続編「さよなら銀河鉄道999」、そして「TV版999」のハーロック、1982年のハーロック主演映画「わが青春のアルカディア」、その続編「無限軌道SSX」…。
思い返してみると、なんと小松原氏はアニメーションでの昔のハーロック作品で関わっていない作品は1つもなかったんですね。
 これって考えてみると結構凄いことではないでしょうか…?
  まさしく、アニメーションでのハーロックを語る時には決して氏の存在抜きでは考えられないほど、またなくてはならない人だったことが改めてよくわかります。
 大きな目からみて、数々のジャンルの作品を手がけた一人のアニメーターとしても偉大な方だったと思いますが、アニメーションの世界でのハーロックに関してもとても偉大な功績を残された方でもあるんですね。

  ところで、私自身は昔小松原氏がハーロックというキャラクターについてのコメントしたものってあまり見た記憶がなかったんです。
手がけられたハーロック作品について、その仕事についてのコメントならいろいろ読んだことがあるのですが…。
 そういうインタビュー記事の中ではハーロックに関連したことというと、その作品をアニメーターとしてどういう姿勢で描いているかとか、そういうあくまでも職人としての仕事意識を感じさせられる言葉だけだったんですね。
 例えば「ハーロックは止まっているだけでも絵になるキャラなのですぐにボロが出てしまうのでとても神経を使いました」というような。
  近年になって松本アニメがまた続々と今度は若手アニメーターの手によって作り出されていますが、1998年の「銀河鉄道999エターナルファンタジー」では、ハーロックが出ている作品で初めてでしたね、小松原氏が携わらなかったのは…。
 それを見た時、一体氏はどんな思いでこの作品をご覧になっていたんだろうなぁ…と思ってました。
  実は、私は昔読んだインタビュー記事でとても仕事に対して職人意識を感じられたので、今は取り組まれている作品に徹していて、もしかしたら氏にとってハーロックのことはその当時一生懸命やっていた過去のことになっているくらいなのかなぁとも思ったりしていたのです。
  ところが、それから最近の松本アニメでは遂に一度もそのお名前を見ないうちに、小松原氏が亡くなったということを知りました。
  そして、亡くなってから、ようやく雑誌の追悼記事などで小松原氏の近況などがわかり、氏は身近な方々に「ハーロックをやりたい」とおっしゃっていたことを初めて知ったのでした。
 私はその時氏がハーロックというキャラクターに対して向けられた個人的な気持ちを初めて聞いた気がして新鮮な驚きに似た感動があったことも覚えています。
 やはり小松原さんにとってもハーロックはその時々でプロ職人としての仕事で描くキャラクター以上だったのでは…?!と。
 ハーロックに強い気持ちを持たれたのは、自分の描いたものが文化の違う国の人にも大勢の人に支持されていることも当然ながら非常に大きいかもしれません。
 でも本当にそれだけだったのでしょうか。
 そして、先日発売された画集には、更に小松原さんがハーロックに対して持っていた気持ちがわかることが書かれてありました。
 小松原氏が最も愛したキャラクターは恐らくハーロックだろう、という言葉…なかなかファンの側からはわかりにくいことですが、氏の身近で仕事ぶりをよく知る親しい人のコメントだからこそ余計説得力があるように思うのです。
 それからやはり小松原氏自身のハーロックというキャラクターに対する貴重なコメントがありましたね。
 それを読んだ時、小松原氏はハーロックを仕事で描き出すキャラクターという枠を超えて、やはり私達と同じように人間的な魅力を感じて、夢や理想を見出していたのではないかとふと共感するものがありました。

  私はそういう小松原氏の描き出されたハーロックに出会えて、本当に良かったなと思っています。
 今でもあの時のハーロックはしっかり私や今でも大好きでいる人の心の中に生き続けているのです。


 

 

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update : 2002.10.7.mon