記事タイトル:巫女の髪事情 |
【管理人注】まほら櫻さんの2005/02/08の書き込みへのレスにある 巫女さんの髪に関するものを独立させました。【管理人注終了】 巫女の髪事情についてちょっと触れてみますと、 髪を纏める道具(主に和紙と紐と金属製の丈長)の種類や形態こそ各神社に よって多種多様なのに対し、髪そのものは、黒くて一つに束ねられるくらいの 長さであれば、特に制限はありません。前髪についてのみ、長く伸ばし、 後れ毛もヘアピンでしっかり止め、顔に髪がかからないようにと定めるところが 多いようです(私は前髪ありですが…)。 神社に奉職されている本職巫女さんの多くは、当然ながら髪を一般でいう ところの黒いストレート「ロング」ヘアーに伸ばしておられます。 (茶髪の方も稀におられますが、間違いなくアルバイトさんでしょう…^^;) ですが、私の知る限り、その長さはだいたい肩甲骨あたりから背中の真ん中位の 方が概して多く、それ以上に長く伸ばしているケースは実はあまり見かけません。 常勤ともなると日曜祝日もなく、しかも朝早くから時に夜に跨る仕事ですから (屋外での仕事もけっこう多い)、あまり自分の髪そのものを長くしすぎると、 さすがに手入れにばかり時間がかかって具合が悪いというのが、あまり伸ばさない 理由の一つではないかと思います。 大抵は祭事で神楽を奉納したりするような時などに、熨斗や奉書(白く固めの 和紙)などの髪飾りと合わせて垂髪(たれがみ)という添毛(多くは化繊製です) をつけ、長く見せる…という場合が多いです。 そういった事情を踏まえてか、神具装束店ではちゃんと垂髪を売っています^^ 髪を一束に纏めた時、その根元に巻いて結ぶようなつくりになっています。 でも、これはあくまで付け毛ですから、遠目にはきれいに見えてもやはり自分の 髪とは質も存在感も違います。人毛と違って絡まると厄介ですし、自分の髪の 長さや量との違いで、段々に見えてしまうことも多々ありますし…(苦笑) やはり自分の髪だけのほうが、いつでもどんな場面でも調和する気が致します。 それに、生まれたままの髪を長く保ち続けることで、心なしか気持ちまで 凛としてくるような気がします。最近、奉職先の宮司さまが、 「近頃は黒髪のまま長く伸ばす女性が少なくなり、均一な茶髪の人が圧倒的に 多く、言葉や態度といった資質のみならず外見でも日本女性の奥ゆかしさが 失われつつあるのではないか。成人式で今風の女性が猫も杓子も茶髪のまま 振袖を着、大股で大挙して街を闊歩する姿を見るとがっかりする」 と嘆いておられました。決して一部の女性ばかりを否定するわけでは ありません…しかし、そうした傾向への憂いには共感できるものがあります。 田舎の小さな神社ゆえ現在巫女は私一人しかおりませんが、資質はさておき(汗)? 何とかこの髪だけは維持していきたいと改めて思っております。 …すみません、相当話が逸れてしまいました。。 ともあれ、巫女でいて好きなだけ髪を伸ばしてもさしたる影響がないのは、 よほど髪の手入れが苦にならない方か、私のように年に数回程度しか奉職する 機会のないのんびり巫女くらいかもしれません(苦笑) ※余談ですが、垂髪というのは添毛の名称ではなく、本来は長い髪を一まとめにした 髪型のことを指すそうです(実は最近知りました;)。 例えば、安土桃山時代頃の武家婦人の髪型がこれに当たるでしょう。[2005/02/11 22:29:49]
まほら櫻さま 初めまして、草月(Sougetsu)と申します。 本職の巫女さんという方は初めてお見かけしたのでお話を興味深く読ませていただきました。 ”髪”は”神”に通じるものとして、きちんとした祭事を行っている神社では 男性の神主さん(宮司さん?)も髪を伸ばしたりするそうですね。 我が家は両親が信仰に深く昔からよく色々な神社に行っていましたが 自前の髪で”巫女さんヘア”をしている方を見ることはありませんでした。 今すんでいる地域にも大きな神社が3個所あるのですが、何処の方も皆さん短いです。 まほら櫻さまはきっととても文化を大切にしてらっしゃるのだなと思いました。 これからもその髪、大切に伸ばしてください。 そういう人がふえてくれればなと思う今日この頃です。 これからも宜しくお願いします。[2005/02/14 19:04:56]
>草月さまへ。 こんにちは。初めまして^^ だらだらと長い拙文を読んでいただき、恐縮です。 >”髪”は”神”に通じるものとして、きちんとした祭事を行っている神社では >男性の神主さん(宮司さん?)も髪を伸ばしたりするそうですね。 ↑ いやはや、これは私も存じませんでした^^; 古来は男性も髪を伸ばし、元結等使ってきっちり髷を結っており ましたが、現代の男性神主さまでも髪を伸ばしている方がおられるとは…。 恐らく、代々神主職を受け継いでいる由緒ある家の方々かと思います。職を 重んじ、誇りある伝統を今でも堅く守ってこられているのかもしれませんね。 とても素敵だと思います^^ 以前、「長い黒髪の持ち主=新しい価値観を受け入れない時代遅れ」みたいな ことを公然と言っていた知人がおりましたが、それは決して当てはまらないと 思っております。折々のファッション文化や流行の波がどんなに個人の スタイルに影響を与えようと、どんなに古い時代のものが便利で快適な 新しい世代に置き換わろうと、いいものは時代を経ても残ってゆきますし、 自由な自己表現の前には古いも新しいもないはずだからです。 「自由に」自分のありのままを髪を伸ばすことを喜びと分かち合える この場に参加できたことは本当に幸せです。 草月さま。これからもよろしくお願いいたします^^[2005/02/19 03:27:42]
こんにちは草月です。 >男性の神主さん(宮司さん?)も髪を伸ばしたりするそうですね。 と断言してしまいましたが、 これは私が、他人様から”聞いた話”なので確かな話ではありません。 一応、責任を感じNetで色々と調べてみたのですが ”かつら”で済ましている件が多く、 本当に伸ばしているという記事は見つかりませんでした。 時間があったら書籍等も調べてみたいと思います。 自分の書き込みが独立スレットになっていて少々焦った草月でした(^^;ゞ[2005/02/27 21:09:45]
まほら櫻です。驚きました^^; 巫女の髪について軽く触れたコメントがいつの間に独立していたとは! ♪草月さんへ。 かつらとはいえ、恐らく“垂髪”を活用されているその男性神職様は、 非常に敬虔な方ではないかと思いますよ。現在男性で地毛を長く伸ばす には、芸能関係の方ではない限り、なかなかの勇気を必要とするかと 思いますので…(以前江戸ちょんまげの愛好会という物珍しい男性の 方々をテレビで観た記憶がありますが、背広を着てちょんまげ頭で 歩く姿はかなり奇抜でした^^;)。男性神職様は祭事等では冠 (お内裏様の着用している形)や立烏帽子をかぶりますが、昔は その中に頭頂部に結い上げたちょんまげを隠していました。 垂髪をつけた現代の神職様も、何らかの工夫を凝らしてちょんまげを 結っておられるのかもしれませんね^^ さて、実は私からも間違い訂正がございます。 「垂髪」についてです。最初のコメントで 『垂髪というのは添毛の名称ではなく、本来は長い髪を一まとめにした 髪型のことを指す』などと申しておりましたが、実はそうではなく、 ↓ 髪を頭の中央で左右に分け、背中に長く垂らしただけの髪型をいい、 厳密には「髪を結ばない」形を指すそうです。分かりやすく換言すると、 いわゆる長い長いワンレングスのダウンスタイルですね^^ このサロンに参加されている皆様の中にも、この髪型が一番好きと いう方もおられるでしょう。言わずもがな、歴史的にも最も基本的と いうか素朴な髪型で、それこそ有史以前、古墳時代頃から室町時代頃に いたるまで、あらかたの女子はこの髪型だったという記述もあります。 別に「すいはつ」とか「すべらかし」とも読み、この髪型こそ、 平安時代、宮中等で優雅な暮らしを営む女性達が髪の美しさを存分に 披露した髪型だったわけです。しかし、よほどの御公家の身分でも なければ生活活動上不便であると考えられ、そのために垂髪の 一箇所ないしは数箇所を元結(水引みたいな紙縒り)または丈長 (幅のある固い和紙)でまとめたりしていたのでした。 この髪型も広く『垂髪』と呼ばれております。 巫女の髪型は、これらの日本女性美の歴史を忠実に踏襲しています。 日頃の雑務でも元結や和紙で髪を一まとめにするのはもちろんのこと、 祭事での舞などでは花簪(菊や桜など)を挿しますが、古来日本女性も 垂髪に花や木の葉を挿し、天然の髪飾りとしていました。 髪型も髪飾りも天然のままをさりげなく活用した姿。いいですね^^ 簡素な中にも雅さが漂います。 ワンレングスのダウンスタイルがお好きなお方。 あなたはご自身の髪への思い入れだけではなく、日本女性の歴史の 美を現代に蘇らせられている、稀有な方といえるかもしれませんよ^^ ぜひ春には、野に咲く美しい草花でその黒髪を飾ってみては…。
[2005/03/02 21:27:51]