性同一性障害について、ロングヘアマガジンの立場から簡単に紹介します。女装や同性愛・ニューハーフと混同する場合もありますので、それらとの関係についても説明します。
性同一性障害とは、身体的性別は男性(女性)でありながら、自分の性別は女性(男性)であると認識していて、身体的性別と自分の性認識とが食い違っているものです。性同一性障害者は、自分の身体的性別に対して強い違和感を感じておられます。
性同一性障害と判定された場合、ホルモン治療(女性ホルモンの投与)を受け、希望者は性転換手術(性別再判定手術)を受けます。
ロングヘアマガジンは、性認識(自分の心の性別)が女性である性同一性障害者で、髪が長い人は、ロングヘア女性として扱います。
女装が趣味の男性の中には髪を長く伸ばしている人が少なくありませんが、髪の長い男性=女装趣味の人ではありません。また、女装趣味の男性=同性愛者というわけでもありません。男性同性愛者の多くは女装をしないそうです。
女装趣味の男性の多くは、自分が男性であることに違和感を感じておらず、恋愛や性愛の対象は女性であることが多いようです。つまり、女装趣味の男性=性同一性障害者ではありません。歌舞伎の女形をイメージすれば分かりやすいかもしれません。
性同一性障害の人の中には、フルタイムで心の性別に従った生活をしている人と、普段は身体的性別に従った生活をしている人とがいます。後者の場合、時には自分の心の性に従った服装をすることがありますが、それは他者からは異性装とみなされる場合があります。しかし、身体的には男性である性同一性障害者にとっては、それは女装ではなく、女性が女性の服装をしているだけにすぎないという意識です。ただし、性同一性障害とははっきり自覚していない人が女装を経験する中で性同一性障害であると自覚することもあるということなので、異性装と性同一性障害とは無関係とは言い切れません。
日本では、女性の男装はファッションの一つとして受け止められています(宝塚の男役のトップ女優はスターですし)が、男性の女装は変態行為や倒錯的趣味とみなされる場合も多いです。そのため、女装趣味の男性や性同一性障害の女性(身体的性別は男性)は悩みを背負うことになります。
なお、インドなどでは男性もスカートを穿きますから、どんな服装をすると異性装になるかは国や民族によって違います。袴は洋服的な表現をすればロングのキュロットスカートのようなものですが、日本人で男性が袴を穿くことに違和感を感じる人はいないと思います。
心の性別が女性(身体的性別は男性)である性同一性障害者の少なくない人達は、男性を恋愛・性愛の対象としています。ですから、男性同性愛者のように見えます。しかし、その人達の心は女性なので、心理的には異性愛者です。同性愛者の多くは、自分の身体的性別と自分で感じている自分の性別(心の性別)とは一致しています。
女装趣味の男性や男装趣味の女性が同性愛者であることもありますが、同性愛者だからといって異性装をするとは限りません。
ぼくの知人に同性愛者や両性愛者が何人かいますが、両性愛者も同性愛者も、自分の恋愛や性愛の対象が多数派(異性)ではなく少数派(同性・両性)であることで、色々な苦しみを感じておられることが多いようです。
ニューハーフは、生誕時の性別が男性で、女性の外見や女性っぽい仕草でショーパブなどで活動する人のことです。ニューハーフには、自分の心の性別は男性そのものの人も含まれています。しかし、ニューハーフの中で、性転換手術を受けたり、ホルモン投与を受けている人は性同一性障害の人が多いと考えられます。ただし、一部の国(フィリピンなど)では、少年に対してその親族が性転換手術を受けさせ、ニューハーフとして仕事をさせる場合があり、その場合は手術を受けていても性同一性障害者とは言えません。
性同一性障害ではない人と同様、性同一性障害の人も、ショーパブで働くことを希望する人は多いとは言えないそうです。
性的な傾向は、先天的または幼い時期に決定されており、性的少数者は性的傾向を決める部分の脳の機能が性的多数者とは異なっているという有力な研究・学説があります。もちろん、性的傾向以外の脳の機能(知性など)は多数派と同様で、社会的に大きな成功を収めている(た)性的少数者も少なくありません。
同性愛(行為)などは猿でも見られることですから、ぼくは、性的少数者の性的傾向・行為の一定部分は、人類誕生以前から引き継いでいることではないかと思っています。また、性的傾向は個性の問題であり、性的多数派が性的少数派に対して批判・攻撃・差別するのは問題があると考えています。
ただ現実には性的少数者に対する偏見があるため、性的少数者であることを知られると、それを暴露すると脅されることがあります。
異性装と同性愛・性同一性障害との関係については、何年も前になりますが、女装を趣味にしておられる異性愛者のある男性から詳しく教えていただきました。この場を借りてお礼申し上げます。
精神科医杏野丈の Gender
Euphoria Clinic
性同一性障害をかかえる人々が、普通にくらせる社会をめざす会
性同一性障害理解マニュアル第1版
性の権利宣言
2005/11/01記
ロングヘアマガジン