ドナドナ
細めの軽い癖毛、どちらかといえば張りのある髪。
純粋無垢の髪。
健康だったと思います。
矯正する前は鎖骨辺りでしたが、縮毛矯正をした後は癖の部分が伸び、背中の真ん中あたりまで届きました。
ショートボブ。
長さよりも、健やかな毛質の状態を維持しながら伸ばすこと。
自分の癖毛をコンプレックスに思い、サラサラ・ツヤツヤの髪に憧れて、縮毛矯正しました。
ミスターハビット、リペア、サラ、他。多種類。値段はそれぞれ20000〜35000円程度。
値段よりも技術(髪をいたわる等)に比重を置き、信頼のおける美容室をネットや電話帳、地元紙などで探して選びました。
過去7年間、年に2回のペースでこれまで15回近くかけました。
矯正後、自分を映した鏡を目にして、思わず目を見張る自分の髪の艶やかさ、美しさ。その至福感は何物にも替え難いものです。
その幸せなひと時は、大体矯正後〜3ヶ月ほど続きます。そして4ヶ月頃あたりから、少しずつ毛根から癖毛が伸び始め、半年後には整髪料では少し押さえられない程度にそれらは伸び膨らみました。
「またあの綺麗な髪に戻りたい。今度はもっと綺麗な髪になりたい」
施術費用が高いために縮毛矯正を即断するには至らないものの、日々癖毛が伸び行くのを鏡で見ながら、縮毛矯正への羨望と欲求を募らせ続け、矯正後7ヶ月を待たずして、縮毛矯正維持のために、というより以前の矯正後の美しかった自分の髪型の幻影を追いかけるように、美容院探しをしました。
そして矯正後に綺麗な髪を手に入れるものの、その半年後には、伸び出した自分の癖毛を疎み始め、艶やかな自分の髪に戻りたいと切望し、また美容室探しへと奔走する・・・。
延々と続く、その繰り返しです。
1日間→髪を濡らさない。
2日間→シャンプーしない。
2週間→髪を結ばない。
私は、縮毛矯正という自分の理想とする「夢の髪」を手に入れた人の陥る悪循環にぴったりとはまってしまいました。
私はこの悪循環から脱するのに7年も掛かりました。「矯正後のあの麗しい髪を、もう一度手に入れたい」という欲求にはどうしても勝てませんでした。高額な施術料を捻出するために、バイトをし、節約しお金を貯め、涙ぐましい努力をも決して厭わない、こうなるともはや、縮毛矯正は、美髪へ憧れる禁断症状を伴う嗜好品です。
縮毛矯正して手に入れた「作られた美髪」に陶酔していた私は、7年という歳月をかけて徐々に蝕まれ取り返しのつかないほどに傷んでしまった自分の髪の惨状に、全く気付きませんでした。縮毛矯正の回数を重ねる度に、どんなに技術の高い美容室で施術し、ヘアケア本を読み漁りヘアケア研究・実践・努力をしても、髪は矯正されにくくなり、しかも、伸びだした無垢の癖毛が今までの自分の毛質とは異なるゴワゴワ・ギシギシに変化していることに、友人からの指摘「矯正前よりも、なんかひどい癖毛になったよね」との言葉にようやく気付き、「もう矯正してはいけない」と自覚したのです。
その後、背中の真ん中まで伸ばしていた矯正した部分の髪を残らずバッサリと切るという「縮毛矯正断ち」をして、ベリーショートにしましたが、生えてくる髪は、矯正・カラー等の一切無い純粋無垢の髪なのにもかかわらず、ゴワゴワ・ギシギシのアフロヘア状態でした。どんなに毎日丁寧にヘアケアしたり、美容室のトリートメントパックをして、全身全霊をかけて毛質改善に取り組んでも、一向に良くなりませんでした。そのアフロ髪そのものは傷みの無い健康な状態だったのですが、毛根から天然パーマに変質したようでした。
ちなみに、美容室でのトリートメントパックの際に、私が美容師にアフロ部分の髪を指して毛質が治るのかを尋ねたところ、
「この髪は天然パーマですよね? トリートメントは傷んだ髪を修復するものですから、傷んでない天然パーマは治りませんよ。天然パーマを真っ直ぐにしたいのなら、縮毛矯正はどうですか」
と縮毛矯正を勧められました。。。
「もはや矯正もできない髪を持つ私は一生アフロ髪・・・」とロング美髪への夢を完全に失いながらも、崖っぷちに立つ思いでヘアケアに余念の無い惨めな自分を嘲笑しつつ、悲嘆の日々を送っていた私は、ようやく艶のあるしなやかな毛髪が根元から生え始めていることに気付きました。縮毛矯正の呪縛から解けた半年後に訪れた奇跡です(奇跡ではなく必然かもしれませんが)。その髪を鏡で確認したとき、本当に長く辛かった今までのことを想起して、思わず涙がこぼれました。
今では、毛根から10センチ程度の長さの部分が、矯正前と同じ、少し癖毛の真に健康な艶やかな髪で、それ以下の髪はどうにも手のつけられない無残なアフロ髪です。今の私の夢は、ようやく生まれ変わり健康を取り戻した髪を大事に維持しながら少しでも長く伸ばすこと、それだけです。とにかく金輪際、縮毛矯正・パーマ類・カラーリングはしないつもりです。
縮毛矯正で得たものは、私にとっては、本当に高すぎた代償です。施術費用の値段的にも、アフロとなり変質した毛髪という失った髪全てに関しても、実にハイリスクでした。
縮毛矯正で作られた美髪は、確かに本当に素晴らしい。あの夢のような滑らかな指通り・艶やかな天使の輪・・・。
見目麗しい天然ロングヘアが本人の努力の賜物であり、一朝一夕に得られないことを考えると、美容師の技術のみに依存し本人の努力無しに得られる人工の美髪である縮毛矯正は、お金さえあれば簡単に手に入れられる容易さが支持を得ているのかもしれません。
1〜2年の短期的な視野でみれば、縮毛矯正は、まさに夢の技術です。就職活動や気合を入れた合コンなど、他者からの見た目を特に気にする場合には、短期決戦の道具の一つとして、簡単に美髪をゲットできる縮毛矯正は良いかもしれません。
しかし、これからロングヘアにしたい、これからもずっと少なくとも10年以上はロングヘアでいるという方には、伸ばした髪を全て無にする可能性もある縮毛矯正はお勧めできません。
私の体験であり、個人差はあるとは思いますが・・・
一度でも縮毛矯正を行うと、矯正以前の髪に戻るには、矯正部分の髪を全て切ったとしても、矯正部分と隣接していた髪の毛質は毛根から全てゴワゴワとなり、これはどんなにヘアケアしても矯正以前の健康な状態には決して戻りません。それから完全に新しく生えてきた髪は、矯正以前の健やかさを待つものの、毛根から生えてきた髪が1ヶ月で1センチ伸びると計算しても、少なくとショートボブになるまで2年以上かかることになります。
巷でよく言われる縮毛矯正に関する評価について。
「とてもよかった」
→短期的な視野では、その通りです。ひとときの艶やか滑らか美髪、そのままですから。
「髪がすごく傷んだ」
→長期的な視野では、その通りです。美髪のために何度も矯正すると、(私のような)取り返しの付かない天然アフロになります。傷んでいないのに傷んだように見える貴重なアフロです。
私はこれから失われた2年をしっかりと背負いつつ、ヘアケアを懸命に頑張ります。
・・・人工の天使の輪を得たひとときの幸せ。
これによって失った代償は、余りにも大きかったですね。。。
これから縮毛矯正をされようと考えている方、今まさに縮毛矯正をなさっている方へ。私の体験談を反面教師として受け取っていただけたら幸いです。
追伸・・・ 自分のアフロヘアがとても鬱陶しくて切りたい衝動が起きたとき、「ロングヘア入門」のコーナーにある「髪は伸ばしてみたいけど・・・」のwindさんのコメントをコピーしたものを、何度も読み返して、髪を伸ばす励みにしています。本当に感謝しています。ありがとうございました。