船霊は「ふなたま」と読みます。「船玉」と書いている文献もあります。海上安全を祈る信仰ですが、船霊様のご神体として、女性の髪を船に祀る場合があるということです。牧田茂氏によれば(後述)、船霊様のご神体としてもっとも古いものと考えられるのは女性の髪だということです。
「船霊とは特定の神ではなく、祖霊のようなもので、船頭の家の女が祀っている神が船を守るのであって、それゆえに女の髪の毛などが御神体とされる。」(引用元:「神奈備」の「船霊について」)
「御神体の中で、もっとも古いものと考えられるのは髪の毛であって、沖縄のヲナリ神信仰との関係は明らかであるが、「山原の土俗」には、難船した際、船頭が自分の毛髪かカコの毛髪を切って海に投げ込んで無事を祈るということがでているが、本土にも同様の習俗があったことは「擁書漫筆」「雨窓閑話」などにも出ているところである。つまり、弟橘媛が日本武尊のために海に身を投じられたように、海神に捧げるためか或いは嵐の神をしずめるための用意として、姉妹がその髪を船旅に出る兄弟のために与えたのがはじまりであるとみられぬこともないのである。」
「近頃わたくしは船霊様という特殊の神が元来あるのではなく、家の神が船旅の守護として祀られた場合に、船霊様とよばれたものではないかと考えるようになった。その証拠は沖縄のヲナリ神信仰およびそれを今に伝えたとみられる船主の妻や娘の髪を御神体とする風に残っていると思うのであるが、焼火の神銭が魔除けやお守りとして授けられたという事実もそのヒントの一つになっている。
(二九・一〇・二五)」
「焼火信仰と船玉信仰」(牧田茂 山陰民俗五号(昭和二十九年十月二十五日))
[2007/02/24]船霊信仰と髪 wind
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