6月
ろくがつ


6月2日(木) 裏方の悲哀

私たち演奏家は、いつでも、どこでも、裏方を担うスタッフの力に助けられている。傲慢にならず、謙虚に、このことをけっして忘れてはいけないと思いながら、私は仕事をしているつもりだ。

ということで、裏方の悲哀が歌われた、替え歌の動画のリンクを貼っておきます。ものすごおおおく、よくわかる(笑)。

じろーの『音響屋さんのマーチ』




6月3日(金) 平日昼間のライヴ

喜多直毅(vn)さんと、雑司ヶ谷・エルチョクロで続けている“平日昼間のライヴ”。今日で4回目のこころみになる。

これまで、平日昼間のほうが外出しやすい、あるいは、夜は外出できない、といった方たちがけっこう足を運んでくださった。また、このときのライヴがきっかけで、他での仕事が決まったりしたこともあった。

が、残念ながら、今日は少し少ない集客になった。喜多さんが4&5月とほぼ日本にいなかったことも大きかったとは思うけれど、自分の集客力のなさに情けなくなる。




6月4日(土) 電子楽譜情報

「6月3日(現地時間)、テラダ・ミュージック・スコアは、フランス・カンヌで開催中の音楽フェスティバル「midem 2016」にて、楽譜専用デジタルデバイス「GVIDO」(グウィド)の試作モデルを公開した。同社によれば、電子ペーパーを使った2画面タイプの電子楽譜専用端末は世界初だという。」

電子楽譜専用端末

画面にタッチしてページをめくる、画面に直接書き込める、値段はいくらなのだろう?といろいろ思う。未だにガラケーのおばさん、時代についていけるだろうか?(苦笑)




6月5日(日) 競馬ピクニック

東京競馬場まで徒歩10分余りのところに住んでいることもあって、G1レースが行われる春と秋に、ときどき“競馬ピクニック”を主催している。これは、昼間に友人たちと集まって、芝生のうえでお弁当を広げ、お酒を飲み交わし、馬券を買いたい人は買う、というシンプルなピクニックだ。

今日は春の東京G1の最終レース、安田記念の日。どういうわけか、仲間のなかに馬主さんが何人かいるようなピクニックに成長(?)している(笑)。今日はメイン以外のレースで、別の友人が持っている馬が一等賞を取った。

でも、最終レースが終わった後、全員、首が下を向いているという結果。誰も勝たないと、こんなに静かなのね、という感じ(笑)。




6月9日(木) 市長と語る会

夜、「市長と語る会」に初めて参加した。市長さんの声を聴いてみたいというのが、なんともはやのミーハーな動機(笑)。

私はてっきり市長の話をたくさんの人で聞くと思っていたら、つまり、もっと大勢いるのかと思っていたら、参加者は18人。市の職員が市長を含めて11人(だったと思う)の集まりで、会場に着いてから、自分が勘違いしていたことに気づいた(苦笑)。

現市長はラグビーをやっていたらしく、この市には東芝(先のワールドカップのときのリーチ・マイケル主将がいる)とサントリーのラグビー部や、女子サッカーの澤選手を輩出した小学校もあったりするので、この日のテーマは「府中市スポーツ推進計画」について、広く市民の意見を聴くというものだった。

ラグビーのワールドカップ(2019年)、さらに東京オリンピック(2020年)に向けて、「スポーツタウン府中の発展」ということで、「週1回以上スポーツをする市民(成人)の割合を60%以上に」というような目標も掲げられているらしい。

これを聞いて、正直、なんだかどこかの国の総理が「一億総活躍」と言っているのと同質のものを感じた私だったけれど。

意見を求められたので、少し発言した。が、話しているときに、誰かの携帯電話が鳴って、すべてが右脳に移動してしまい(思いっきりハモってしまおうかと思うくらい、長く鳴り続いた 笑)、左脳に溜め込んでいた言葉が支離滅裂になってしまった(苦笑)。主として、スポーツを文化として考える視点から発言したつもりなのだけれど。

それにしても、始まる前に、あれだけ携帯電話の注意をしても、鳴る、んですねえ。ほんとに大人がダメになったなあと思う今日この頃。

ま、今に始まったことではなく、コンサートの前に、携帯電話の電源の注意や、写真撮影は断る旨を言っても、必ず、誰か、いる。そして、それはきまって、いい大人。

ところで、
『過去最悪! 首都圏賃貸アパート「空室率30%超」の衝撃』
上記の写真は、京王線 府中駅あたりを中心に南北に通っているけやき並木の光景。(真ん中奥に見えるのは、大国魂神社)

最近、親しくしている地元の不動産屋さんと話したとき、こんな話を聞いた。
「高層マンション、夜、灯りがついていない部屋が多いでしょ?」と不動産屋さん。これは、仲介業者が一度買い、「中古」として安く売れば、最初に新築で入居した人たちから文句が出ないでしょ、というからくりがあるらしい。車でいえば、新古車みたいなものになるのだろうか?

今、府中駅周辺の徒歩5分圏内には、既に高層マンションが何棟か建っているが、さらに高層階の新築マンションがたくさん建設中。また、駅南口は再開発で大工事中。そのビルには300名キャパの市の小ホールなどの施設もできる予定で、上階は駅直結のマンションになるようだ。商店街はとっくに消えてしまった。うーん、正直、この町は町づくりに失敗しているなあと思う。




6月13日(月) 昭和の佇まいにほっとする

午後、神保町にある老舗の喫茶店・ラドリオで、喜多直毅(vn)さんとミーティング。

この喫茶店には学生時代から行っている。雰囲気も臭いも、昭和、だ。店内にかかっているシャンソンなどのBGMもとってもいい。ちなみに、煙草も自由に吸える。今の私にはきついけれど、やがて慣れてくる。

隣の席に座った男性は「室尾犀星詩集」、その次に座った男性は岩波文庫の「唐詩選」を読んでいた。なんだかとてもほっとする。

岩波文庫、岩波新書、たとえばエキナカにある書店などはもはやどこも扱っていない。多分10年以上前、エキナカで岩波の書籍を尋ねたら、店員さんからはそんなものあるか的態度対応されたことを思い出す。




6月18日(土) ハイフェッツの演奏

ヴァイオリニスト・ハイフェッツが演奏する、
ガーシュイン作曲「 It ain't necessarily so」の動画

すばらしい!すごい!
ハイフェッツ。なんともむっつりしている表情で、この人、演奏していて楽しいのかな?と単純に思ってしまった私だけれど。

そして、既にリハーサルが始まっている、濱田芳通さん(リコーダー、コルネット奏者)とのデュオ・コンサート(7月8日)では、このガーシュインのオペラ『ポーギーとベス』(1935年)の中から、4曲ほどメドレーで演奏する予定。

濱田さんはモンテヴェルディのオペラ3作品を、2013年秋から三ヶ月おきに連続公演されている。私は全部拝聴しているが、この濱田さんのオペラ上演に取り組む姿勢と努力はすばらしく、舞台中央で指揮する背中がすべてを語っていたと思っている。

このガーシュインのオペラは、アメリカのミュージカルの先駆けとなったとも言われていて、仮にジャズ・オペラ(こういう言い方はあまりしたくはないけれど)とすれば、この作品もまたモンテヴェルディ同様、先駆的なオペラだったということができるかもしれない。

ともあれ、上記、ハイフェッツが演奏している曲は、この中の1曲。ちょいとキザな麻薬密売人がうたう歌。

さて、濱田さんとの演奏はどんな風になりますか?!




6月20日(月) ポンコツな身体

知人に紹介された整形外科に行き、頸のレントゲンを撮ってもらう。4月下旬に右腕を壁に強く突いてしまった後遺症は、どうやら頸と肩にも及んでいるらしい。頸の右のほうは下のほうがつぶれていて、5番目の骨は突き出ていて神経の通り道に触っているらしい。

その他、明らかに年齢を重ねている自分の身体が、いよいよポンコツになってきたことを想う。涙。いつまでピアノを弾いていられるだろう?と本気で考える。




6月24日(金) 府中市美術館の騒動

私が住む町、東京都府中市の府中市美術館で、このようなことが起きているとは・・・?!(この秋には、藤田嗣治展が行われる予定になっている。)

まず、以下に、美術館の学芸員・武居利史さんがFaceBookに書いていたことを転記しておきます。


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武居 利史
6月23日 23:47

今日はとんでもないことが起きた。昨年から準備してきた展示に上の方からクレームがついたのである。中止の可能性も含めて再検討せよ、ということだそうだ。

新海覚雄(1904‐68)という画家を常設展示室を使って展示する夏の間の小企画である。

6月初めにはマスコミにプレスリリースも送っているし、ホームページにも情報は公開、明日にはちらしも刷り上がってくる予定になっていたのに、なぜこのタイミングで圧力をかけてくるのか理解に苦しむ。

理由は「内容が偏っているので公立美術館にふさわしくない」ということらしい。半世紀も前に亡くなった画家の作品を展示するだけなのに、どこがどう偏っているのか説明を求めても納得のいく説明はない。

これから対応を考えなければならないが、すでにオープンにしている以上、変更するにはそれ相応の理由が必要だと思う。

府中市美術館常設展特集・府中市平和都市宣言30周年記念事業
「燃える東京・多摩 画家・新海覚雄の軌跡」
2016年7月16日(土)~9月11日(日)
たたかうヒューマニズム―平和と労働への賛歌



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上記の文章に書かれている「上の方」というのは、国レベルからの圧力ということと理解した。府中市はもともと保守的な町だと思ってはいるが、なんというか、もう、ええっ?!という感じ。

今回の参院選で、自民党などは憲法改正を表にあまり出さないようにしているようだけれど、憲法改正を進めようとしている党の人たちの言動を見ていると、教育や文化を一定の方向へ誘導しようとしていることがあからさまに感じられる。この国、ほんとうに、危ない。

自由を愛する私は、この状況を心から憂うとともに、市民として否と言います。


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この問題は、翌日、予定通り、展示は行われる、ということで、一応、決着したようなので、以下に、併せて報告しておきます。


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武居 利史
6月23日 22:30

昨日の投稿に多くの方々の励ましの声やシェアをいただき、ありがとうございました。親しい方々に自分の近況を伝えるつもりでいましたが、反響はやむことなく広がり続け、FBの力というものを実感しています。職場の方にも、電話やメールでの問い合わせもいただきました。みなさまの暖かいご支援、また展示へのご期待をいただき、うれしく思うと同時に、深い責任を感じます。

準備段階ならいざ知らず、展覧会も直前になって、中止の可能性も含みつつ内容の再検討をせよいうことを言われて、内心憤ってしまい、語気つよく書いてしまいました。中止という言葉にインパクトがあったため反響を生んだようですが、中止の強い要請だったというわけではなく、その点に関してはやや誤解が生じてしまったような気もしております。

「燃える東京・多摩 画家・新海覚雄の軌跡」については、職場の上司・同僚とも協議をしまして、計画通り実施いたします。

ただ、いろいろいただいたみなさまからのご意見は勘案して、よりよいものにさせていただく方向で企画に反映させていく所存です。新海覚雄という今日ではやや歴史に埋もれつつある作家を再評価したいという私の願いもあり、館長含め学芸での討議を経て、今回の企画を行うことになりました。

ささやかではありますが、よりよい展示となり、みなさまにお楽しみいただけますよう、残された準備期間全力で取り組んで参りますので、ご支援のほどよろしくお願い申しあげます。


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6月25日(土) 本気の調律師

『調布音楽祭 2016』の企画の一つ、「キッズコンサート 新企画!楽器たんけん隊 ピアノ組み立てコンサート」に行ってみた。

これは主に子供たち(その親御さん)のために企画されたもので、会場の前のほうは既に子供たちでいっぱいだった。

そこに現れたのは、調律師・岩崎俊さん扮する、ピアノの妖精。頭にみなしごハッチのような触覚、背中には羽を付けて登場。思わず、笑った。正直、「ここまでやるのか」と思ったけれど、逆に、岩崎さんは本気なのだ、と私は思った。

グランドピアノからは、既に鍵盤の部分が運び出されていて、鍵盤すべてがバラバラになった状態で、別のところに置かれていた。これを88人の子供たちが順番にはめていく、のだ。ピアノがこのような状態になることは、私はもちろん知っているし、1本の鍵盤を持ったこともあるような気がする。けれど、こんな小さい頃に持ったことなんか、ない。

ピアノはこんな風にできているんだよ、と岩崎さんは、1本1本、子供がはめるのを手伝いながら、伝えているように見えた。

舞台の上袖には、ピアノのアクションの模型が置いてある。子供たちはなんだかよくわからなくても、それで遊んでいる。

そして、全部、組み立てられたものをピアノにはめこみ、ピアニート公爵と称されるピアニストが、さっそく弾いてみる。ん?一ヵ所、音がヘンだ。それを、今度は「調律師」として、岩崎さんが魔法をかけるかのように調律して、ピアニート公爵は「きらきら星の変奏曲」を演奏したのだった。

岩崎さんが抱いている「危機感」はおそらくほんものだ。これからはさらに生ピアノという楽器を買う人も減り、調律という仕事に関心を寄せる人も減っていく、という現状認識が、岩崎さんを本気にさせていると思った。

終演後、岩崎さんに少しご挨拶をした際、こういうことをしょっちゅうされているのですか?と尋ねたら、「いや、初めて」とのこと。私は彼のことを心から応援したいと思う。




6月26日(日) ふなっしーの海の家、どころじゃない気分

今夏、なんでも江の島に、ふなっしーの海の家がオープンするらしい。

8月には日本武道館と大阪城ホールでの単独公演が決まっているふなっしー。いやあ、実際、どこまで行くの?という感じだけれど。

って、実は、武道館公演、私は行く予定(笑)。

グッズはバカ高いし、DVDで聞くことができるふなっしーの言葉遣いがちょっと下品に感じられたり、そろそろふなっしー離れをするかも?と書いてはみたものの、この黄色い雰囲気を捨て切ることなどまだ当分はできそうになく。いい歳をして、あららこりゃりゃ。ひゃっはー、なのであります(笑)。

が、参院選、都知事選などを控える夏。イギリスのEU離脱が国民投票で決まったことで、明日の為替と株価がどうなるかわからないけれど、経済は低迷、貧富の格差は広がるばかり。そして、右傾化するこの国にを憂う私としては、それどころじゃない気分満載の今日この頃。

ということで、購入した本は二冊。
・「日本会議の研究」(扶桑社新書)
・「死すべき定め」(みすず書房)




6月29日(水) 渋谷・メアリージェーン閉店

渋谷の老舗ジャズ喫茶・メアリージェーンが、渋谷の大開発の波によるビル自体の取り壊しにより、2018年9月に閉店するとのこと。

私がこのお店にもっともよく足を運んでいたのは、大学を出た後、出版社に勤務しながらジャズを習っていた1980年代前半の頃だったと思う。「前衛」や「フリー」という言葉に敏感で、「歌なんかジャズじゃない」と思い込んでいたような頃のことだ。聴いていてもよくわからないところもたくさんあるけれど、それでもなぜか、私はフリー・ジャズやフリー・インプロヴィゼイションに魅かれた。

もう何年もお店に行っていないけれど、今、ここは全席禁煙になっているそうなので、渋谷に行ったときに訪れてみようかな。それにしても、そうなんですね、禁煙・・・。1980年代後半、バブルの頃、どのお店も煙でモクモクだったことを思い出す。あんな環境でよくピアノを弾いていたと思う。ともあれ、それだけでも、時代は確実に流れていることをしみじみ感じる。




6月30日(木) 猫八師匠お別れ会

夕刻からホテルニューオータニで行われた、今年3月に亡くなられた、四代目 江戸家猫八師匠のお別れ会に出席した。

猫八師匠、その息子さんである小猫さんとは、坂田明(as)さんと共に、何度かごいっしょさせていただく機会を得ていて、日光の蓄音機など、私なりに思い出もあり、足を運ばせていただいた。

献花の際の演奏、それとは別に、猫八師匠ご夫妻の思い出の曲という「ひまわり」を、坂田さんと献奏させていただいた。

心からご冥福をお祈りします。









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