9月
9月1日(木) 落葉

お盆過ぎくらいから、近くの桜並木には黄色くなって落ちた葉っぱがたくさん。庭の紅葉の上のほうも、新緑の頃からずっと黄色のまま伸びている。まだ夏なのに・・・、なぜ?

この光景を目にするたびに、見えないものの怖ろしさを想う。東京の西のほうも、確実に放射能に汚染されている、と思う。異常気象のせいもあるかもしれないけれど。

ドラマー、セシル・モンローさんの訃報。先月27日に、息子さんと千葉で海水浴中に遭難して亡くなったとのこと。幸い息子さんは無事だったそうだけれど、セシルは天国へ逝ってしまった。

セシルとは、去年、渋谷毅(p)さんが音楽を担当された映画の録音の時に演奏したのが、そして年末の浅川マキさんの追悼ライヴでお会いしたのが、最後になってしまった。心からご冥福を祈る。



9月2日(金) 適材適所

野田内閣誕生。適材適所、なのだろうか?

私は「門仲天井ホールの今後を考える会」(ホールの存続を願う集まり)のメンバーに名を連ねているが、そのミーティングやメールのやりとりの中で、それぞれの役割のようなものがだんだん見えてくるから、なんだか面白い。

面白いなどとは不謹慎な。実際、ホールの閉鎖問題は、持ち主である組合内部の問題も含めて、決して笑っている場合ではないのだけれど、少しのユーモアでもないと、やってられない気分になる。ので、それぞれの役割評を面白おかしく書いてみたりする。

たとえば、今回、twitterなどで、いち早く情報を流したのは、ネット世界に慣れている、やや若き人たち。ジャグリングをやっている方と太鼓を叩いている方。ジャグリンで人目を引き、太鼓を叩いて騒ぐ。そんなお2人は有能な広報部員、というようなことを考えて、少しだけ気を紛らわす。



9月4日(日) 所変われば

新宿ピットインにて、黒田京子トリオのライヴ。

完全生音。ピアノは上手に配置する。つまり、私の背中に、翠川敬基(vc)さん、その向こうに喜多直毅(vn)さん、という並び。私からは2人がまったく見えない。私は背中で、音を、呼吸を聴く。

前半は即興演奏中心。その最後に、新しく書いた「inharmonicity 3」を演奏。後半は、それぞれのソロから。さらに、富樫雅彦さんが作曲したものなどを演奏。最後には拙作曲「ゼフィルス」を演奏する。

喜多さんは咆哮し、警笛を鳴らし、ハーモニカを口にくわえ、菜箸を投げ捨て、弦に物を差し挟み、弓の毛をそうめんにする。その集中力と、場と空間の異化力はすさまじい。

それにつられてか、いつになく、私も声が出る。うたう。よくわからないが、そういう風になった。

トリオの音楽の質は、以前の太田惠資(vn)さんがいた頃のものとは、まったく異なっている。

また、演奏する場所が変わることで、なんだか生まれてくるものも違ってくる。緊張感やテンションも異なる。それもまた面白い。個人的には、こんなトリオはほかにないと思っているのだけれど、どうでせう?



9月5日(月) 否決

門仲天井ホールの存続を願う、私たちの申し出は、組合の大会で否決された、と報告が入る。次のステップ、だ。



9月6日(火) 健康診断

午前中、無料で受けられる、市の健康診断に行く。太極拳の教室で、今、課題になっている「伸ばす」を意識したら、身長が1cm弱伸びた。でも、デブううう。中性脂肪がやばいだろうなあ。

午後、家の掃除をする。ソファーカバーやのれんを、秋仕様にする。北海道から戻って来て、まだ夏の雰囲気では嫌だもんなあ、と思って。



9月7日(水) 懐かしの歌

大泉学園・inFで、鬼怒無月(g)さんとデュオ。懐かしい歌の数々を演奏する。即興演奏がどうのこうの、といった難しい話は、ここには一切ない。ただひたすらに歌う。



9月8日(木) 伸ばす

午後、太極拳の教室。今日も「伸ばす」。
先生曰く、「力は入れるのではなく、伸ばすのです」。

夜は、高校時代の友人のお通夜に行く。

プライドの高い彼女は、私に会うたびに、自分がエレクトーンを演奏していることを言っていた。去年秋の同期会で、そんな話をしたのが、最後になってしまった。

彼女は高校時代はバスケット部に所属していた。高校3年生の時、バスケ部、バドミントン部、そして私が所属していたハンドボール部は、関東大会に出場した。ので、よく憶えているのだ、その笑顔を。

でも、バスケット部、6人のうち、既に半分の人が天国へ逝ってしまった。3人とも、癌だった。高校時代はみんなスポーツ万能、とっても元気だったのに。合掌。

これからは、この国で暮らすのであれば、免疫力も勝負になる。太極拳の教室はほぼ週に1回だけれど、続けようと思う。



9月9日(金) 髪を切る

約20年ぶりに、髪を短く切った。

多分もうすぐ四半世紀の付き合いになる美容師さんに、まるで「どちらさんもよござんすね、入ります」と言う賭場師のように、「いいですね、切りますよ」と言われて、私の髪の毛は切られた。

頭、いと、軽し。

夜は、本厚木・キャビンにて、喜多直毅(vn)さんとデュオで演奏。

このお店で演奏するのは、久しぶりだったこともあり、その場と空間に慣れるまでに、さらに、自分のテンションを持ち上げるのに、少し時間がかかってしまった。

前半、喜多さんは地べたに正座し、ここでもまた菜箸を投げ捨て、詩を朗読し、汽笛を鳴らし、ハーモニカを口にくわえて吹き、弓をそうめん状態にして、全壊、否、全開。

前半は即興演奏、後半に曲を演奏というプログラム。メロディーを奏でる喜多さんは、こよなく、どこまでもうたう。2ステージ全体を通して、振幅の大きい音楽表現ができていると思う。ライヴの醍醐味があるように思う。

帰りは都心を通らず、電車で帰宅。ガラガラにすいていて快適。



9月10日(土) 目黒

夜、目黒・東京倶楽部にて、金丸正城(vo)さんと久しぶりに演奏。

このお店は、もともと、「ジェイジェイズ」というライヴハウスだった。いわば、それを東京倶楽部が“居抜き”で継いだものだ。今月から営業している。ということもあってか、今晩は満席に近く、たくさんのお客様が足を運んでくださった。

コントラバスには、水谷浩章さんをお願いした。彼とスタンダード・ジャズを演奏するのは、多分15年ぶりくらい?彼とは、一昨年から坂田明(as)さんのトリオで活動を共にしているので、なんだか、ちょっと、妙にくすぐったいような感じ。

最後のステージで演奏されたバラッド。水谷さんのピアニッシモのやわらかいボウイングが美しい。さすが、自らストリングス・カルテットを率いてライヴ活動をされている実力が発揮された感じ。ラインの動き方も、ルートをとらず、内声を奏していた。多分、普通のジャズ・ベーシストは、あのようなアプローチはしない。とてもよかった。




(おしらせ)
九月半ばより、約三週間、北海道ツアーに出るため、
十月上旬まで、この「洗面器」が更新されることはないでせう





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