5月 |
5月1日(木) 感謝 午後、太極拳の教室へ。調子が悪い左腕のために、先生やみなさん4人がかりで、あれこれやってくださる。痛いところをそのままにしていてはだめだと言う。休ませることも必要だけれど、適度に刺激することも必要ということなのだろう。感謝。 夜は門仲天井ホールの代表者と飲んで食べながら打ち合わせ。『くりくら音楽会 ピアノ大作戦』もこの春で四回目を迎えているが、私一人だけではとてもここまでやってこれなかったと思う。これまた感謝。 5月2日(金) 練習漬け 午後、小森慶子(cl)さんと練習。ここまでのリハーサル、ほんとにいろんなことを話しながら、いい時間を過ごしてきたなと思う。ほんとにプロセスを楽しんでいる。夜、太田惠資(vl)さんも来て、「タイスの瞑想曲」をリハーサル。何を演奏しても、太田さんは太田さんたるところが太田さんだ。いずれも11日の翠川敬基(cello)さん主導の“クラシック化計画”のため。 5月4日(日) 春一 毎年大阪で行われている“春一番コンサート”で演奏するため、前日の3日に大阪に入り、夜はお好み焼きなどを食べる。それからホテルに戻るが、ケータイであれこれメールを送っていたら、なんだか眠れなくなり、おまけになんだかヘンな霊の夢を見た気がする。某ヴァイオリニストの影響かあ? 日曜日はとってもいい天気。太陽の日差しは強く、野外ステージの席に座って他の人たちの演奏を聴いていると、あまりの暑さにどうにかなりそうなくらい。私は坂田明(as,cl)さんのユニットで演奏したのだが、演奏が終わると全身汗でぐっしょりだった。 他に、今年は“ふちがみとふなと”に1曲だけ参加。「ぷかぷか」(もちろん歌える私なのだ)の大塚まさじさんとも話す機会を得る。歌をやっている人たち、フォークをやっている人たちは、ほんとに自分のことをやっていると感じる。“春一”に参加するたびに、そういうことを強く思う。 夜11時過ぎに東京駅に着く。とても涼しい。気候に身体がついていくのがたいへんだ。 5月5日(月) お祭り 朝から耳鳴りがひどく、軽く眩暈も感じ、少し横になる。夕方からお祭りで賑わう神社へ。妹の旦那様が御神輿をかつぐというので、その白装束の雄姿を見に行く。当然昼間から飲んでいるわけだけれど、終わった後はカレーライスをふるまわれるとのことで、あまり飲まないそうだ。若い人たちもいるからというのが理由らしいが、なんとまあ健全たることよ。 5月6日(火) グールドの指 夜、NHK番組『知るを楽しむ』で放映されたグレン・グールドを観る。グールド研究の第一人者・宮沢淳一さんがホストをつとめているが、コメントを言っている人たちの顔ぶれは、吉田秀和、高橋悠治、坂本龍一、というのがなんだかすごい。顔とたたずまいがモノを言っているような人たちばかりだ。 小学校5年生の時にグールドの演奏を初めて聴いた坂本龍一少年は、「作曲家が弾いているみたいだった」と思ったそうだ。すごくよくわかる感想。 それに、グールドの指。既にドキュメンタリーなどの映像は見ているが、今回あらためて感じたのは、グールドの指。鍵盤に降ろす時よりも、離す時の指の運動に目をみはる。あの一点の曇りもないような明晰な音は、あの離す瞬間の指から出ていると感じた。・・・もはや私にはできない。 5月7日(水) 二枚目 黒田京子トリオ(翠川敬基(cello)さん、太田惠資(vl)さん)のレコーディングを、深谷・エッグファームで行う。私は午後1時過ぎに入ったが、実際の録音は夕方5時過ぎから11時少し前くらいまで。新曲も含め、基本的に一枚目に収めた曲以外のオリジナル曲を中心に録音する。 ピアノは普段あまり出会うことがないニューヨーク・スタインウェイ。私にとってはちょっと挑戦。でも下見に来て試弾した時と弾いた印象がまったく異なり、ちょっととまどう。 二枚目、は難しいな、と正直思う。何を聴いて欲しいのか?・・・なんとか「これを聴いてくれっ」という良い内容のCDにしたい。 それにしても、このトリオの醍醐味はやっぱりライヴだという気がしてくる。曲、あるいはあらかじめ書かれていることより、そうでない部分が音楽の内容を決めるためだろう。作品は決して固定しない。そういう意味では、CDはいわばほんのちょっとした名刺のようなもので、その在り様はグールドの音楽と対照的かもしれない。 5月8日(木) 脱力 午後、太極拳の教室。脱力。これ、当面の課題。いかに力を抜くか。頭でわかっていても、身体はちっとも力が抜けていない。すべてのことに応用できるから、とても勉強になる。 夕方、いつもの整体に行ったら、重症だと言われる。二人がかりで施術してもらう。手の指の関節や筋肉の話になり、私の指の表側には筋肉があまりついていないことがわかる。それに更年期なのか、どうも関節にある液のようなものが枯渇してきている気がする。帰宅後、そのまま完全に脱力してしまい、1時間余り眠りに落ちる。 5月9日(金) テンポ 午後、小森慶子(cl)さんと練習。ここに来て、第一楽章のテンポ感を修正することにする。録音したものを聴き返したり、互いに感じたことを擦り合わせた結果の合意。ほんでも、これまでに馴染んできた感じから脱出するのはけっこう難しい。 5月11日(日) コーカイ ということで、大泉学園・inFで、翠川敬基(cello)さんが主導する“クラシック化計画”で、太田惠資(vl)さんと「タイスの瞑想曲」、小森慶子(cl)さんとコーカイというハンガリーの作曲家が1951年に作った、四楽章からなるハンガリアン・ダンスを演奏。 人前で譜面のある曲を演奏するのは、2004年7月のブラームスのピアノトリオをやって以来たま〜にやってきたけれど、おそらく今回の小森さんとの演奏がもっともリラックスしてできた感じがする。これまで書いてきたように、プロセスをとても大事に、かつ楽しくやってこれた気持ちがしっかりあるからだと思う。この二人の演奏をクラシック音楽ではなく、もうほとんどジャズだと言っていた人もいたけれど、私はそれでいいと思っている。私たちでなければできない音楽をやること以外に何の意味があるだろう? また、ライヴでは他にモーツアルトの弦楽五重奏曲も演奏された。第一ヴァイオリンはフルートに替わっているが、それがまた新鮮に聞こえた。ヴィオラが2本というのも弦楽器の響きを深めている。第二楽章はどこが一拍目かわからなくなったりする。おそるべし、モーツアルト。 5月12日(月) プレス 夕刻、CDのプレスやジャケットなどについて、デザイナーさんやレーベル主宰者から話を伺う。 webを検索すればいろいろ出てくるが、CD盤のプレス代は台湾や韓国などに出すと、今は1枚あたり390円くらいでできるらしい。国内プレスで音質などにこだわるとすると、ソニーの静岡工場がもっとも良いそうで、1枚あたり100円だそうだ。すいぶんコストが違う。でも、海外に出すと、その約一割は音飛びなどがするという噂も。 それにジャケットにも流行り廃りがあるらしく、今は紙ジャケットやデジパックが主流らしい。でもって、従来のプラスチックケースのほうが安い。 ふんむう、いろいろあるのねえ。って、タイトル、どうしましょ。みんなで相談。 |
5月15日(木) 身体への意識 午後、太極拳の教室に行く。後半の1時間はくらいは“練巧十八法”の一套目を中心に行う。自分の意識の持ち方で、身体が変わっていく。ということの、ほんのはじめの一歩という感じ。 5月18日(日) ひとり競馬 なんとなく気が向いて、自転車で競馬場へ。今日はG1レース、ヴィクトリアマイルがあった。強い陽射しの元、パドックで光る馬を見るのは気持ちがいい。最後の2レースだけ賭けてみたけれど、全部ハズレ〜。 5月19日(月) 感心する 大泉学園・inFで、NY在住の渡辺薫(fl,篠笛、能管など)さん、吉見征樹(tabla)さんと演奏。渡辺さんと演奏するは2回目だが、彼の音楽に対する真摯な姿勢に再び感心させられる。そしていつものことながら、その時、その場に起こるすべてのことを受け入れる吉見さんの在り様にも、なるほどなあと思う。 後半、どこからともなく一噌幸弘(古今東西の笛を吹く奏者)さんが現れる。その能管の音は圧倒的に光っている。やっぱり天才。 5月20日(火) 2オクターヴ半 阿部篤志(p)さん、それにHISASHI(vo)さんの演奏を聴きに行く。HISASHIさんの声は2オクターヴ半が確実に出ていた。したらば、4オクターヴは出るというお話。ふえ〜。阿部さん、HISASHIさん、二人の息もよく合っていて、それぞれの日本語によるオリジナル曲がいいなあと思ったりする。 5月21日(水) ジュリー 深夜、CATVで映画『太陽を盗んだ男』を観る。若きジュリー(沢田研二)が理科の先生役で、東海村からプルトニウムを盗んで、自宅で爆弾を作って云々、という話。 その最後のほうに、菅原文太演じる刑事が、ジュリーに指定された喫茶店で待機しているシーンがあったのだが、その喫茶店が代々木・ナル。実名で出ていた。私は知らないのだが、今の場所に移る以前のもっと駅の近くにあった時のナルだった。時代、を感じる。 5月22日(木) くりくら 『くりくら音楽会 ピアノ大作戦』春の陣の最終回。 西山瞳(p)さんは今回の出演者の中ではもっとも若いピアニストで、作曲にも力を入れているとのこと。そのデュオの相手は温かい音色でサックスを奏でる井上淑彦(ss,ts)さん。最近はあまり頻繁に演奏活動をされていないそうで、今日も久しぶりのライヴというお話だった。 新澤健一郎(p)さんと太田朱美(fl)さんの演奏は、その気持ちがまっすぐ伝わってくる、生き生きとした演奏だった。 終演後、友人たちと近くの居酒屋で一杯。いろいろ意見を言ってくださることが、ほんとうにうれしい。 5月23日(金)〜26日(月) 不経済トリオ 黒田京子トリオ(翠川敬基(cello)、太田惠資(vl))で、23日(金)は甲府・桜座で、24日(土)は松本・陀瑠州(ダルース)で演奏。ちょっとしたミニ・ツアーといったところだが、それぞれ好き勝手に自分の車で東京から行くという、なんとも不経済なトリオでござる〜。おまけに、この原油高のご時世に、3人ともハイオク。ま、このバラバラ感がたまらない?というより、この“非調和”な感じがトリオの在り方、そのものを象徴しているかもしれない。 また、このミニ・ツアーに東京から来てくださった方が4人(他にもう1人は甲府のみに)もいてくださり、ほんとうに感謝。そのほとんどが結成当初から聴いてくださっている方々で、まったくもってうれしいかぎりだ。こうなったら解散するまで付き合っていただくしかない。って、このトリオももう丸4年ちょっと、既に5年目の活動に入っているのだから、自分でも驚いてしまう。 23日(金) 午後2時半頃、私宅を出て甲府に向かう。いい天気で、運転していて気持ちがいい。ところが甲府市内に入ってから30分くらい道に迷ってしまう。カーナビもなければETCも搭載していないので、4枚のETCカードを使いこなしている翠川さんからは、信じられないという目で見られている。そんなこんなで、やっとたどり着いたホテルの立体駐車場に入れる時に、車のボディを傷つけてしまった。あーあ。 桜座に入る予定の時間を過ぎても、当然某人は来る気配すらないので、近くのお蕎麦屋さんに行ってしまう。ちなみに、その某人は入り時間に「今、調布ICです」と電話をかけてきただけでもエライかも。んでもって、別の某人はその時間からビール、日本酒、焼酎と調子をあげておられる。ヤッホー。 結局、開場時間を過ぎるまでサウンドチェックなどをすることに。ピアノは以前弾いた時と楽器が替わっており、調律師さんに少しだけ細かいところを手直ししていただく。 後半の演奏の時はPAの音量を少しあげてもらうことにしたが、このトリオ、ちょっと音響が難しいか?少し広いところでは、最初からやはりもう少し全体をあげておいたほうが、お客様に伝わりやすかったかもしれない。それにしても自分の耳はどうやらすっかり生音に慣れてきているらしい。 終演後、心温かい打ち上げで、みんなでわいわい。新宿・ピットインの朝の部に出た時からお世話になっているカイブツさんこと、桜座の運営に携わっておられる龍野さんとその奥様には心から感謝。私にとってはなんとなく昔から助けられている気がしている人の一人。この席で、28年ぶりに会った大学の後輩ともゆっくり話す。彼女はもともと甲府に住んでいた人で、なんでもタウン広報紙でたまたま私の名前を見たらしい。うれしいものだ。 24日(土) ホテルの滞在を延長して、午前11時半頃、東京から来てくれた友人3人を車に乗せて、松本へ。諏訪湖を眺めながら食事をとり、だんだんあやしくなっていく雲から落ちてくる雨に見舞われないように車を走らせる。午後2時前にはホテルに着き、ひとやすみ。耳鳴りがひどくなっているので、今夜は完全に雨だ。ちなみに、他のお二人は下道を走って来たらしい。私はアップダウンとくねくねの道で耳がやられるので、高速を使う。 この日演奏させていただく松本・ダルースとの付き合いは旧く、最初に演奏したのはソロで、だった。故篠田昌巳(sax)さんとのデュオでぜひ、と言われていたのだけれど、篠田君は天国に逝ってしまい、ちょうどソロ活動をしていた1990年代初頭に演奏させていただいたのだったと思う。その後は斎藤徹(b)さんと何度か演奏させていただいている。そして、今回はお店の30周年ということもあり、声をかけていただき、それならばぜひトリオの演奏を聴いていただきたいと思い、実現の運びとなった。 外は雨。されど、某人はそれほど遅くならず、3人でリハーサルができる。ピアノはアップライトだが、細かいところまで互いの音や気持ちを聴き合うことができて、ものすごくよくサウンドしている。生音で、だ。とてもやりやすくて、いい感じ。ステージの構造がスピーカーのような造りになっているからではないかとの声も。それで急遽お店に頼んで録音してもらうことにした。ちなみに、この店で生音で演奏したのは、斎藤徹さん関係以外には私たちしかいないらしい。 で、開演まで時間があったので、既に美味な馬刺しなどを食べながら一杯やっているという東京からの友人たちと合流。翠川さんご推薦の“馬のたてがみ”というのを初めて食べた。馬のカツ定食も食べた。このお店はアタリだったらしく、店の入り口には小沢征爾などの写真とサインが飾ってあった。 松本市は小澤が指揮するサイトウキネンオーケストラなどが演奏する大規模な音楽祭を毎年主催している。それで、クラシック音楽のみならず、音楽で街を盛り立てて行こうと、このダルースの方も提案されたとの話を聞いた。が、お役所は動いてくれなかったそうだ。 演奏曲は昨晩と同じにならないように配慮する。ステージ上の私たちの気持ちは充実しているフィーリング。ピアニッシモもよく聴き合える。 それにしても、ちょっと感じるのは昨晩と同様、お客様の反応は決して悪くはないのだけれど、どうも「こんなの、聴いたことない」的な空気を感じる。とまどいというより、どう聴いたらいいんだろう、不思議〜みたいな感じだろうか。なんて、気のせい? 終演後、東京から来て下さったみなさんと打ち上げ。いい旅だったと思う。 25日(日) やはりホテルを延長して、午前中におみやげなどを買って、12時半頃に松本をあとにする。ちょうど2時間くらいで家に戻れた。 夕方、急ぎで必要になったので、立川へパスポートを受け取りに行く。夕飯はそのまま立川で陳さんのマーボー豆腐。唐辛子と山椒に脳味噌がやられてハイになったのか、何故かそのまま足はふらふらと。モノレール沿いに南へ下り、甲州街道へ出て、国立府中ICを超えたあたりまで歩く。気がつけば2時間近く歩いていて、疲れ果てて途中でバスに乗って帰宅する。アホだ、私。 26日(月) 大泉学園・inFで、すなわちアウェイの旅を終えてホームにて、このトリオで演奏。レコーディングのために翠川さんが書き下ろした新曲は面白い。 5月27日(火) イケメンと美女 ハクエイ・キム(p)さんの演奏を聴きに行く。イケメンで、素晴らしいタッチだと評判のピアニストだ。でもって、ライヴはMIYA(fl)さんという、これまた美女がキュートに演奏している。そこに関西弁のおもろいおっさん、吉見征樹(tabla)さんが一段と格好よい。 人間、やはり美しいほうがいいにきまっている。私のほぼ同期といってよい人たちには、国分弘子、木住野佳子、といったピアニストがいる。うーん、どう見たって私はどーにもなりましぇん。せめてあと10kg痩せましょか。 5月28日(水) ドラムスと 新宿・ピットインで、坂田明(as,cl)さん、バカボン鈴木(b)さん、そして坂田さんのご子息学(ds)君と演奏。このお店でドラムスと共演するのは何年ぶりだろう?現在、バカボンさんと学君は森山直太朗(歌手)のツアーでいっしょに演奏しているそうだから、日常の音楽フィールドは私とはかなり違う。 終演後、坂田さん一家とちょっと飲みに行く。最後のほうで坂田さんが静かに話されていたことが印象に残る。かくて、深夜バスで帰宅。 5月29日(木) 血管の収縮 午後、太極拳の教室。先生は呼吸で血管を大きく収縮することができる。つまり、血圧をコントロールしている。腕を触っていると、実際に血管が膨らんでいるのだから驚く。こんなこと、私にはできない。でも鍛えればできるようになるんだろうなあ。 もともと人間には自然治癒力があるということを、眼や耳などを患ってから真剣に考えるようになった。それでこの太極拳に出会ったわけだが、先生の身体や意識のコントロールをまのあたりにすると、自分の力でなんとかできる部分があるのだと信じられる気持ちになる。 5月30日(金) パッチギ対談 門仲天井ホールで行われた、『パギやん&井筒監督のパッチギ対談』に足を運ぶ。 対談の前に、パギやんこと、趙博(ちょう ぱく)さんの歌を聴いた。「生活の柄」、それになんと懐かしいことに「山谷ブルース」や「イムジン河」などを歌っていた。ほぼ同世代なので、その時代の雰囲気や抱えている社会意識や感覚は、なんとなく感じることはできる。が、正直、どうもリアリティが今ひとつ感じられなかった。のは、何故だろう? その後、井筒監督との放談。昼のワイドショーに出演されている時の印象とは若干異なる印象を受ける。もう少し穏やかな雰囲気だったし、社会や人間に対するしっかりした眼差しがあり、撮りたいものがあり、現在(いま)を生きていることがわかった。おそらく今のパギやんにはそれがない気がする。 帰り際、ごく普通の女性から「何故朝鮮の人のことを追究しようとするのですか?」というような質問に、「小さい時からまわりがそういう環境だったから、嫌でもそうなっちゃうのよ」と監督が言っておられたことが印象に残る。関東と関西、東京と大阪、は全然違うのだと思った。 5月31日(土) ユンディ・リー 雨。私が住む街では駅の周辺を中心にアマチュアによるジャズ・フェスティバルのようなものが野外で行われる予定だったが、みんなホールの中へ。それでちょっと買い物のついでに立ち寄ってみたけれど、PAを通した音がとても硬くて、耳につらい。何故あんなにキンキンした音に作るのだろう?それで早々に退散。座席にはまあまあ人が座っていたから、聴こうとする人はいるんだなあとは思った。 家に戻り、ずっとNHKのハイヴィジョン漬け。小澤征爾のドキュメントや、2000年に史上最年少の18歳という若さでショパン・コンクールで優勝したという、ユンディ・リーのドキュメントを観る。それには小澤征爾が指揮するベルリン・フィルとのやりとりなどの映像もあった。テンポ感をめぐって、「彼は若い、実に若い」と小澤が言っていたのが妙に印象に残る。 他、ショパン・コンクールのドキュメントも観る。音楽を審査する、ということ自体がよくわからないところもあるのだが、ともあれかなり過酷なスケジュールだし、演奏者は気が狂いそうになる緊張感に見舞われていることがよくわかった。そんな中、ユンディ・リーのタッチの強さと音の明晰さは群を抜いていたように感じる。中国では超エリートということになるのだろう。思わず、四川地震で崩壊した村に住んでいた人たちの涙を思ってしまう。 |