学校飼育動物講習会報告
学校で動物を飼うことの意義と実際
― 子どもたちに命の尊さをどう伝えるか ―
社団法人 福井県獣医師会
1)日 時 :平成15年11月27日(木)午後2時〜5時30分
2)場 所 :福井県生活学習館 ユー・アイふくい
3)目 的 : 近年、青少年による様々な心痛む事件が報道されるたびに、生命尊重
を育む心の教育の大切さが叫ばれているが、こうした教育の一つとして幼児期から小
学校の時期に動物飼育の体験をさせることが重要であると言われている。これは子ど
もたちが動物と関わることで、命の尊さ、弱者をいたわる心、世話をすることによる
責任感、死の悲しみ等を体験し、生命、倫理観を育む基礎を身につけてゆくと考えら
れているからである。
そこで、国立教育政策研究所の鳩貝氏と日本小動物獣医師会学校飼育動物対
策委員会の中川氏を講師として、学校で動物を飼うことの意義、さらに、学校飼育の
実際について学び、子どもたちの心を育てる動物介在教育への理解を深める目的で講
習会を開催した。
4)内 容:
『生命尊重と学校教育』講師 鳩 貝 太 郎 氏 国立教育政策研究所総括研究官
『飼育動物が子ども与える深い影響』講師 中 川 美穂子 氏
日本小動物獣医師会学校飼育動物対策副委員長
お茶の水女子大学子ども発達研究センター客員研究員
5)出席者数:90名
内訳 小学校教員 23名
保育園・幼稚園職員 33名
獣医師会会員 22名
教育研究機関 3名
県職員(健康福祉センター職員)3名
一般 6名(ボランティア4名含む)
6)出席者へのアンケート結果:別紙
学校飼育動物講習会アンケート結果
(於 ユー・アイふくい)
回答総数 32名
1. 出席者の所属
教職員 29 (保育園9、幼稚園3、小学校17)
獣医師 3
2. 学校等で動物を飼っているか
?いる 27 ?いない 2 ?わからない 0
? [福井市]社北小・社南小・社保育園 [丸岡町]高椋小 [春江町]春江小、
[金津町] 伊井小 [武生市] 国高小・武生西小 [勝山市] 成器西小
[清水町] 清水南小 [敦賀市] 西浦小 [小浜市] 中名田小、
? 森田小
飼育している動物
ニワトリ 8 1羽(1)、2羽(3)、4羽(1)、13羽(2)、15羽(1)
チャボ 1 4羽(1)
ウコッケイ 2 2羽(1)、6羽(1)
ウサギ 16 1羽(4)、2羽(8)、3羽(1)、8羽(2)、16羽(1)、
23羽(2)
モルモット 3 1匹(1)、2匹(1)、不明(1)
ハムスター 4 1匹(3)、4匹(1)
インコ・セキセイインコ・オカメインコ 4
カメ 3
アヒル 2
カモ 2
アイガモ 1
金魚 7
コイ 3
フナ・ドジョウ・熱帯魚 2
カブトムシ・スズムシ 2
ザリガニ 1
ジュウシマツ 1
ハト 1
3. 福井県獣医師会の学校飼育動物支援事業
? 知っている 14 ? 知らない 16
4. 獣医師のアドバイスや協力を望むか
? はい 23 ? いいえ 0 ?わからない 5
5. 行政や獣医師会への要望等
・ 1年に一度、定期的に診ていただきたいと思う(無理なお願いでしょうか)。
・ (獣医師会でウサギの去勢手術をしたことに)先日はどうもありがとうございま
した。
職員会議等で今後の方針について相談しています。今後もアドバイスいただければ
幸せです。
・ 動物を飼育する(ふれあう)ことの価値はある。しかし、最近、アレルギー等を持
つ子が多くなってきており、(ふれあうことに関する指導はしているのに)病院に行か
ねばならないこともあった。休日中に家で飼育できる子の家に預けることも難しくなっ
た。そこで、動物飼育の際の注意、予想される事故とその防ぎ方、起こったときの対処
の仕方を教えてほしい。特に、長期休業中に世話をしてもらえる場所を設けてほしい
(教員でも動物を家に連れて帰れない者もいるし、数日間、学校に行きづらいこともあ
りますので)。
・ すべての園や学校に対して、獣医師と連携があるわけではないので、やはり動物を
飼育している学校や園と話し合って、来園していただけるようにしてくださると嬉しく
思う。
・ 動物の治療や診察料などを負担していただきたいです。
・ 学校で飼育している生き物の病気・けがのための治療費などを保障してほしい。
・ 昨年から避妊手術や病気を治療してもらい、とても助かっています。
・ 気軽に相談していいものかどうか迷って、なかなか連絡できません。何でもないよう
なこともわからずに調べて対応したいしていますが、相談してもいいものでしょうか。
→質疑応答で学校には相談する義務があるのだとわかりました。有難うございました。
・ ニワトリが増え、飼育小屋が狭い。増えてしまった動物はどうすればよいか。処分?
飼育小屋の床はすべて土、砂です。掃除、えさやり等の世話は毎日飼育委員がしていま
すが、夏季休業中は日直の先生の仕事となります。一人でえさやり等をするのはとても
大変でした。飼育小屋が新しいものになるとありがたいです
・ 実際、飼育していると、どうしたらいいのかな?と思うことがあります。特に、「病
気かな」と思うときには、即、聞きたいこともあり、ペット専門店にお願いしていまし
た。獣医師会との連携を取りやすくしていただけるとうれしく思います。連絡先の案内
などあるといいと思います。
・ 以前、勤めていた学校で、このような支援制度があることを知らず、近くの先生に電
話でお願いしたところ、快く教えていただきました(ウサギ)。
・ ウサギのオスの去勢等、飼育支援をお願いします。
・ ウサギ1羽、ハムスター1匹、以前に病気になって、結果的に死んでしまいました
が、獣医さんが親身になってくださいました。有り難く思いました。
6. 感想・意見
[小学校教員]
・ 動物の種類を増やしたり、飼育環境を整備して積極的な動物飼育を図っていくべ
きであることを赴任以来、考えていましたが、本日のご講義で、学校飼育の大変さ、む
ずかしさをしみじみと教えていただきました。実行するときはしっかりした計画と見通
しが大切であると感じています。
・ 「何かしよう!」と思っています。有難うございました。
・ 主にハムスターの世話をしているが、太りすぎているらしいと聞き、また、トイレも
うまくしつけられなかったことも併せて考えると、もしかして、我が校のハムスターも
気付かないうちに病気になっているのかも・・と心配になってきました(専門家の方の
訪問検診なんてあつかましいですね・・・・)
・ 動物が苦手な子もいるが、その子たちも動物と慣れていけるのが最も望ましいかと思
います。でも、どうしても、負担な子には無理強いしていません。それではいけないの
か・・・と思います。どんなものでしょうか。
・ 学校で生き物委員会の担当をしています。正直に言うと、面倒くさいので飼育が好き
な先生がやればいいじゃないかと思っていました。今回の研修で少し心を改めないとい
けないなと思いました。それと、今は生き物委員会だけが関わっているんですが、何と
か学校全体で関われるようにしたいです。教室でハムスターを飼ってみようかなと思い
ます。
・ 獣医と連携することの大切さがわかった。アドバイスいただけると飼育もやりやすく
なると思う。
・ 動物の特性と飼い方がわかって良かった。今、係りのものだけでなく、他の職員に啓
蒙する機会があるとよいと思う。学校内だけで悩んでいるのではなく、何かあったとき
とか、定期的に専門の人々に診てもらえるのは有り難いと思う。これからは獣医さんた
ちにも相談したいときは積極的に行っていきたい。
・ 今の飼育小屋を改善したい。もっとたくさんの子どもと関わらせたいと思っていま
す。
・ 現場に即した迫力のある講演でした。有意義な講習を有難うございました。
・ 有難うございました。
・ 私は動物が好きで、家でも飼っています(ネコ)。学校でもと思うのですが、嫌いな
教員も多く、飼いたいならあなたが責任を持てと言われてしまいます。施設なし、物品
購入費用なし、全校児童も大変少なくて、強くは言い出せませんでした。でも、クラス
で十分に飼えることがわかって、挑戦してみようかと思いました。
・ 5、6年の飼育委員会で世話をしていますが、高学年になると忙しいので、掃除
に追われていて、とても触れ合っている状態ではないです。今日のお話を聞きながら、
中学年の子どもたちに手伝ってもらうような形が取れるかもしれないと思いました。来
年度から計画できないか考えていきたいと思います。
・ 教室でモルモットを飼ったり、学年の児童全体で飼育したりする事例が大変参考に
なりました。
・ 貴重なお話、とても参考になりました。
[幼稚園・保育園職員]
・ 動物の飼育は人を成長させていくことがよくわかった。
・ うさぎの調子が悪いとき、近所の動物病院で無料で診ていただき、飲み薬までも
らいました。大変嬉しく思っております。幼稚園の子とに衛生的にふれあう環境をと思
い、中庭を遊べるところにしましたが、土はあまり良くないようなので、今後、配慮し
たいです。この講習会に参加でき、大変勉強になりました。有難うございました。
・ 非常に勉強になりました。特に、子ども自身がかわいいと思わなければあまり意義が
ないとのことで、本当にその通りだと思いました。現在、保育園では、金魚とザリガニ
を飼っているが、子どもたちの反応の鈍さのその原因がわかり、安心しました。
・ 飼育動物を育てるにはそれなりの知識を持っていなくてはいけない。私自身、知識が
ほとんどないまま、今現在、動物の世話をしていることを改めて感じた。納得する部分もたくさんあり、とても勉強になった。
・ 面倒だと思っていた飼育動物ですが、今日の講習会で面倒と思っていた自分が恥
ずかしくなりました。接し方、飼育の仕方で、子どもたちも動物たちも変わり、心をこ
めた愛情を持って動物たちと向き合っていきたいです。
・ チャボの習性を学べたことがまず嬉しく思います。本当は私自身もっと調べておかな
ければと痛感しました。生命尊重のこと、飼育を通して子ども達の育つものの大きさ、
改めて気付かせていただきました。ありがとうございました。具体的資料も参考になり
ます(当園の年長組は雨の日も雪の日も毎日チャボの世話を積極的にしてくれていて本
当にすばらしいと思っています)。
[獣医師]
・ 学校飼育動物管理者にとって、相談先ができることはとても大きなことだと思
う。今回のような講習会に参加する学校等では飼育環境等の改善がなされたりするだろ
う。参加せず、関心を示さないところではどうなっているのだろうか。
・ 教育とは人格形成を目指すものであり、体験を伴った活動に基づき、より促進され
ると思う。学校飼育という狭いエリアではあるが、それなりの意味はあると思うが、考
え方として、理科教育や事業動物の社会的意義等を教育の中で体験させたらよいという
鳩貝先生の方がベター。
・ 講演の中の「子どもには犬が必要で、犬も子どもも親が責任を持ってしつける」
という外国の話にとても共感しました。こういう話は動物に関わっていない人にこ
そ聞いてほしいと思える意義深い講演でした。
[2003/12/16 23:21:56]