巴橋(瀬戸市古瀬戸町) 瀬戸MENU

舟形高46p 一 面二臂 坐像 

     
【左】輪王座で座る一 面二臂の坐像です   【右】家がへこんでいるのがわかるでしょうか

   瀬戸の市街地の外れに
瀬戸の市街地では,国道248号線は瀬戸川をはさんで上りと下りがそれぞれ一方通行になっています。これが上流で一つの道に合わさるのが,刎田橋(はねだばし)を少し過ぎてから。その刎田橋のところで急に北に曲がる瀬戸川にそって道をたどると,もう一度瀬戸川を渡る巴橋にぶつかります。今回訪ねた馬頭観音は,巴橋の手前の民家の敷地内にありました。

   祠の中で瞑想中
入母屋造りを模したコンクリート製の立派な祠の中に馬頭観音は収まっています。金格子の扉がついた,しっかりした造りです。この祠のためにブロックの塀が途中で切れているどころか,まだ比較的新しい家自体,この祠を避けるように凹んでいます。馬頭観音自体はかなり風化が進み,細部は見えにくくなっています。一 面二臂像には珍しい坐像で,輪王座(右脚の膝を立て,両足の裏を合わせる,馬頭観音と如意輪観音に特徴的な姿勢)がよく分かります。もともと浅いレリーフ的な彫り方で,頭部や肩などは平らな感じです。手は馬口印でしょうか。大きめの冠に標された馬頭は,薄く線彫りで表されています。目を半眼に閉じた表情は穏やかで,静かに何かを考えている風です。

   維持が大変そう…
「古瀬戸洞今昔四方山話」によると,どこかにあったものを大正期にこの場所に遷したとのこと。撮影中に年配の女性に声をかけられ,お話を聞くことができました。「この家のおじいさんが博労(馬の仲買人)やったで,これを造ったんやが,これだけしっかりしとると,かまうわけにいかん…」なるほど,家を建て替える時にも安易に移動させることもできず,家の方を凹まさざるをえなかったのでしょうか。個人の敷地で文化財(特に信仰がらみの)を維持する大変さがうかがえる話でした。