宮脇(長久手町大字長湫字宮脇) ▲長久手MENU
船形高44cm 三面八臂 坐像 持物(日輪・水瓶・独鈷杵・開蓮華)
ひっそりと祠の中に
長久手町郵便局から交番や景行天皇社の前を通って400mほど東へ進むと,民家の庭先風のところにコンクリート製の小さな祠があります。以前からよく通る道なのに,今回はじめて気がついたほどの目立たない祠です。生垣に半ば隠れるようにして道路に並行に立っているのは,家への通路から拝むためでしょうか。憤怒面と菩薩面の区別はあるものの,非常におだやかな顔立ちの馬頭観音です。やわらかな線で彫られているため,おだやかさが強調されます。腕は舟形にすじ彫りで表わされていますが,持物はかすかに見えるだけです。比較的やわらかそうな材質のため,磨耗しやすいのでしょう。しかし四つの手にそれぞれ持物を持つ様子がなんとか識別できます。花の開いた蓮の花は,このあたりでは唯一です。丸っこい顔立ちや膝の立て方などは,色金山の馬頭観音によく似ています。
花崗岩の基壇には「黒影」と彫られています。馬車輸送に携わった馬の名前でしょうか。15年ほど前まで,県道215号田籾名古屋線(かつての岩作道)の石田交差点の西の路傍に,ゴムタイヤ付きの朽ちかけた馬車が放置されていました。きっと「黒影」も,物資輸送の立役者として活躍していたのでしょう。