1999年3月 EJインタビュー その3
出典:EJ-l Mailing List dd 24/Sept/98
copyright: Park Street/Eric Johnson, 1998
原text transcribed: Laura Small
「日本語文責: 山巻 由美子」
PS: じゃ、次。「"Pavilion"の主要なリフは、どのギターを使ってる? 335だろうと思うけど。それと、ディストーションはどうやって?」
EJ: 335とMarshallのアンプでやった。
PS: 次の質問。「詩や歌詞は、多様な解釈をされがちなものです。歌詞を作っている時、字面とは違ったレベルの意味に意識的に気づいていますか?それとも書いた通りのことしか考えていない?」
EJ: そうね実際、歌詞には2、3通りの意味があることが多いよ。
PS: 「ライヴ・パフォーマンスを楽しいと思う要素は色々あると思うけど、聴衆の感触がライヴの楽しみの主要な要素だと感じますか?」
EJ: 絶対そう。
PS: 次。「年季の入ったミュージシャンに対して、バンドやミュージシャンの音楽的寿命はせいぜい10年かそこらに限られている、という文化的偏見があるような気がする。その寿命を過ぎてしまうと、2、3の例外を除いては、みんなあまり興味を持たなくなって、もうつぶれたとか盛りを過ぎたとか、もう自分には関係ないとか思われたりしてしまう。でも、EJのような真に優れたミュージシャンは、あらゆる角度から自分の仕事に献身しているので、時と共に向上する一方だと思う。同様に、そういったミュージシャンでさえも、肉体的な限界や創造的限界点に達したら、結局は精神的に燃え尽きてしまうのじゃないかと思われていることがあるような気がする。この主題について、EJの意見を聞いて、彼が長い目で見た将来についてどう思っているのか知りたい」
EJ: うん、常に改革し続け、自分のプレイや関心や熱意や溢れ出てくるものに、情熱を再注入していかないとね。そうすれば、創造し続けることの出来る基本的なところでの仕事に刺激がある。そうした方が、みんなにもっと楽しんでもらえて、自分のやっている事にもある種の転移が起こる可能性があるんだ。 プレイに情熱を注ぎ続ける最初の責任は僕次第だし、努力がいるね。もしそれをやめてしまったら-----あるレベルに達して、「僕はこれこれになってる、あれになってる、これをやったし、あれも達成した」みたいになったら、そこで停滞して、今までいた場所でそのままくすぶることになるんだ。 それと、ポップ・ミュージックについて言っているなら、移ろいやすく、儚いものだよね。聴き手が30代になれば、単なる彩りになってしまう。例外もあるけどね。聴き手に合わせて変わらざるを得なくて、ある年齢層にだけはウケ続けるということもあるかも知れないけど、その年齢層以外には全然ウケないんだ。聴き手にくっついて行かなきゃいけないから。 とにかく改革し続けて、いい仕事をしようと努めないと。僕としては、とにかくやり続けたい。専心していたいんだ、だってそうしなければ、危険な渦に巻き込まれてしまうからね。
PS: 「何かツアー中のエピソードは? 多分EJのキャンプの誰かがラップトップを持って行って、時々フィードバックを与えたのでは?」 おかしかったのは、Richard MullenがツアーバスにPower Macと20インチモニターを持ち込んだって話。バスの大半はそれにかかりきりだったんじゃないの?((((((笑))))))
EJ: バスの後部はそれでふさがっちゃったんだ。プリンターとか全部持ち込むんだもん。((((((大笑))))))
PS: ('Magnetsの)ツアーやることになったら、それでいこう! それじゃ次。「Eric Gales、Chris Duarte、Craig Eriksonといった若手アーティストを聴いて、自分が与えた影響を見い出しますか?」
EJ: Eric GalesとChris Duarteは聞いたけど、Craig Eriksonはまだ聞いてないんだ。そうね、何がしかの影響はあるだろうと思うよ。彼等は当然、色々違ったものから影響を受けてるよ。
PS: Kingsley(ej-lの古参メンバーのひとり)が言うには、彼は今スライドでCliffsをプレイしてるそうだよ。
EJ: へぇ、ほんと!
PS: Kingsley、どうかCliffsのスライドバージョンを下さい。Ericも僕も聞いてみたい。さて次。 「いつ、なぜ、どうやって、ピアニストをやるかギタリストになるか選択したのですか? ピアノアルバムを出す考えは?」
EJ: あ、それはいいんじゃない、ねえ? 作りたいと思ってるアコースティックギターアルバムに、ピアノ曲を2つくらい入れたいんだ。えーと、いつだろ、子供の頃.....ピアノは好きなんだけど、ビートルズやらストーンズやらヤードバーズやら聞いた時、ギター弾きたいって思ったんだ。
PS: ギターだと女の子にモテるし。
EJ: その通り。
PS: 「ライヴで、ワイヤレスにしないのはなぜですか?」
EJ: 音が気に入らないから。
PS: 「新譜の仮題は?」
EJ: 「10年カカッテ、ナノニ今夜モ家ニ持チ帰ル」
(Ten Years And I'm Gonna Bring Home Tonight)(((((笑)))))
EJ: うそうそ、まだわからない。
PS: 次。「EJが人気投票で1位になった時のコメントで、現在Big Bill Brumseyに取り憑かれていて、Bill BrumseyのフィンガースタイルでMystery Trainのリメイクをやろうかなと思ってると発言していた。本当にやる気なんだろうか、それともちょっとした思いつきだろうか」
EJ: やりたいよ。他のみんなと同じく、僕も色んなこと考えてるんだ。レコーディングをもっと効率的にやれる方法がわかれば、そういうの全部やりたいね。僕は農夫みたいなもんだよ。40エーカーの畑に出て一年を過ごし、年末に、収穫のカゴを持って家に入って来る。カゴの中に入ってるのは、『本当にすごくいい』イモかも知れないんだけど、僕は言うんだ。「ほら見て、イモが『4つ』穫れたよ」(((((笑)))))
PS: 「フィンガースタイルの演奏がChet Atkinsの影響を受けているのはわかっているけれど、エレクトリックの方? アコースティックの方?」
EJ: どっちも。
PS: 「Electromagnetsの名前は誰の提案?」
EJ: Kyle (Brock)だったと思う。
PS: 「Zapの経緯について教えて下さい。いつ書いたのか、リフはどこから思いついたのか、どんな部分を変えたのか」
EJ: 書いたのは1976年。ちょっとFrank Zappaみたいな感じがしたから、Zapと付けたんだ。削った部分はそんなにないよ。だいたい最初通り。
PS: 次。「EJの意見では、トーンに一番貢献しているのは何ですか? 指? 魂やインスピレーション? それとも機材や楽器?」
EJ: インスピレーションだと思う。人間が一番重要だと思うよ。
PS: 「EJのトーンはバイオリンのようだといわれてるけど、そういう風にしようと意識的にやったのかな? 彼の音をそういう風に特徴づけるものは何だろう?」
EJ: 弦をピックする時のやり方による部分も大きいし、機材の働きによる部分も大きいんだよ。機材を50回もセットすれば、その内1回や2回は「おっ、すごくいい音だ! なんだなんだ、どうなってるんだ?」ってこともあるんだ。で、今度は「何があったんだろう?」と思う。僕がずーっとやってるのは、いい音がする時はどうしていい音がするのか解明しようとすること。それで、ちゃんとノートに採っておけば、バイオリン弾きみたいに出来るじゃない。「ぱかっとケースを開けて楽器を取り出してみたら、ほーら基本はちゃんとなってる」っていう具合にさ。アコースティックギターやアコースティックピアノみたくほぼ何もしなくてもいい状態でそこにある、みたいな。でも、エレクトリックギターときたらさ。コードとかアンプとか? それからプラグインしないといけない。電気なんてもの、存在しなけりゃいいのに。基本的には負け戦を闘ってる訳だよ。でも、上手くいった時はどういう具合だったのかノートを作るようにしておけば、試してみたり、もっと首尾よくやれるように出来るでしょ。だからそういう風に努めてるんだ。
PS: 「EJは暗赤色のストラトも持っていたはず。それも盗まれた?」
EJ: 1982年製のキャンディアップル・レッドのリイシューを持ってたけど、1983年だったかにニューオリンズで盗まれたんだ。それは家から盗まれたやつじゃなくて、盗まれたのはギグの時ね。赤いストラトはもう1本あったけど、売っちゃった。だから赤はもうないよ。
PS: 「今現在のお気に入りギターは?」
EJ: 僕はストラト2、3本とギブソンを何本か持ってるんだけど、それ全部好きだよ。みんなそれぞれ違いがあるんだ。
PS: ej-lのメンバーたちに、それぞれの「夢のセットリスト」を送ってもらって、曲の得票の多い順に、リストにしてみたんだ。どれか意外なのがあるかな?
EJ: ほんと? こりゃいいな。うん、ほとんど僕が他の曲より気に入ってるのばかりだ。これ、面白いね。すばらしいよ! 次にまたツアーに行く時、これのコピーとって、セットリスト決めるのに使うといいな。
PS: 「Bogner Ecstacy Headについて何か? EJは使ってる?」
EJ: しばらく持ってたけど、今現在は使ってない。
PS: 「1本目の教則ビデオのイントロはとても美しく、このビデオの中でも私の好きなパートのひとつになっている。このイントロは、ちゃんとした1曲になるのだろうか? もっと長い曲の、イントロ部分のように思えるが」
EJ: うん、あれはただの即興。その場でそっくり作ったんだ。時として、瞬間的に作ったものが、思ったよりずっと大したものだってことがある-----延々と取り組んで知性で書いたものより、ずっとよかったりしてね。そうやって1曲に仕上げてみるのも面白いだろうと思うよ。
PS: 「ビデオは、いつやるんですか?」つまり、みんなライヴものをほしがっているんだよ。オーディオもビデオも両方!
EJ: うん、ライヴビデオやるってのはいいね。コンセプト・ビデオにするかどうかはわからない。すごく金がかかるのと、僕が上手くやれるかどうかわからないってだけの理由なんだけど。 ビデオ畑の本当に優秀な人を見つけて一緒にやりたいんだ。どこかにほんとにいいビデオ映画撮影家がいればねぇ。
PS: 「EJのステージを3回見ているが、いずれも最前列の右側からだった。近くから見ていて、彼のワウ・ペダルがいともたやすく作動しているのに気づいた。 私が見た限りでは、彼は押しもしなければスウィッチも入れない。どうやっているんだろう?」
EJ: え、ただのストックのワウ・ワウだけど。
PS: 「完璧主義者であるEJは、曲が完成したというか、「よし、これで望み通りに出来た」という決定をいつの時点でするのでしょう? リリースする時は、もう落ち着いてると思いますか?」
EJ: 最初に伝えようとした感触が伝わり出したら、その感じに近くなったら、そうしたら「OK、感触を伝えてる感じだな」と言うね。それが僕にとって重要なこと。
PS: 「レコードのソロはどうやって作るの? きちんと構成する? 自然に出来たものを沢山録音して、ひとつを選ぶ? ちゃんと書く?」
EJ: その全部。いつも違うんだよ。一音一音きっちり構成することもあるし、何も考えずに5通り弾いて、それを一緒にしたりもするし、ただ、ひとつだけ弾くこともある。曲も違うし、やり方も違うよ。
PS: 「"Desert Rose"と"Lonely In The Night"の、エンディングのソロに関してはどうだった?」
EJ: "Lonely In The Night"は、基本的には、即興とちゃんと作ったのの組み合わせだな。僕は、10秒なり20秒なり30秒なりのひとしきりをばっと弾いて、それが気に入らなかったらパンチバックして、またその10秒なり20秒なり30秒なりを録るんだ。 "Desert Rose"の方は、きっちり一音一音作った。フィードバックとファズの部分以外ね。あの部分はライヴだよ。
PS: では最後の質問。ej-lの何人かが、君の方からej-lに質問があるかと聞いているよ。何かファンに聞きたいことはあるかい?
EJ: 本当に、ただありがとうと言いたいだけ。みんなが気にかけてくれたり、興味を持ってくれたりするのが、僕にはとても大切なことなんだ。実際、僕はみんなの建設的な意見を楽しく聞いている。そういうのはどんどん言ってほしいんだ。破壊的な批評というのは、そんなに役に立たないもの。
PS: 聴き手は君に、「自分がやってほしいと思う事」をやってもらいたがるものだけど、ej-lの人の多くが「君がやりたい事」をやってほしいと思っているので僕も驚いてるよ。
EJ: 僕は、みんなが楽しんでくれる事をしたいんだ-----CDを買ってくれるからというよりも、自分はそういう形で世界に貢献してみんなを幸せにしてるんだと感じるから。 自分のやってる事が、1日24時間360度わかってる訳じゃない。誰かがやって来て言うことが、「君は唄えないから、唄うのはやめなよ」と、「もし唄いたいなら、唄ってみようと思ってるなら、いいじゃない! やってみなよ」では全然違うよ。ケーキを焼く材料の足しを勧めてくれる方が、ケーキを捨てるゴミ箱を教えてくれるよりずっと面白い。だからみんなが言ってくれることを聞いて、わくわくするし、うれしいんだ。 僕はやるべきことをやらなきゃいけない。他のみんなと同じように僕の道をたどって行かなきゃ。それでも、僕がみんなにもっといいものを差し出せるようにするにはどうしたらいいかについて、みんなの意見を聞くことに興味があるんだ。僕らがみんなもっと楽しめるように-----多分僕の方がもっと楽しめるな。僕はそれをとても感謝してます。