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1999年3月 EJインタビュー その1
出典:EJ-l Mailing List dd 24/Sept/98
copyright: Park Street/Eric Johnson, 1998
原text transcribed: Laura Small
「日本語文責: 山巻 由美子」

PS:
ギター演奏・研究・練習のための瞑想や集中方法についての質問から。まず始めの人は「Pat Methenyなどのギタリストは、高度な集中力が必要な場合、物理的な練習よりも精神的な練習(ソロやスケールの指板をイメージする等)をする」と書いている。もう一人の方は「日常や演奏前の瞑想とかしてるのかなと思って。祈ってるのかそれとも禅をしているのかなんて詳細に聞きたい訳じゃないけれど、EJが自分の集中や呼吸をコントロールするのにどんな方法をとっているのか知りたい。みんなソロを演ろうとする時は緊張して息を詰めてしまうけど、EJはとてもリラックスしてるみたいだ」と。
EJ:
とんでもない! リラックスしたいもんだよ。その人が見たのは、きっとここ十年の内、たった1度たまたまリラックスしてた時に違いない。
PS:
なるほど、でも確かに君はリラックスしてるように見えるよ。見てる方は、君が内心ドキドキものだなんてことは、そりゃわからないさ。
EJ:
僕がリラックスしてるように見える時は、血圧は285ぐらいに上がってるんだ。
PS:
それがCliffs演奏中か、わかった!((((((笑))))))
EJ:
実際、この質問に対する答として、僕が一番わかってるのは、そういうこと(集中、呼吸など)は全部重要だってことだね。僕らはみんな、いつも物事を複雑化して入り組ませてしまうけど、本当に必要なのは、物事をシンプルなまま、的確な状態を保っておくことだよ。簡素化して、その時その時を大事に、集中しているべきなんだ。スポーツをやっているにしても、音楽にしても、外科医だったにしても、専念し集中することで、より良い仕事が出来る。集中して専念すれば、必ずその時は没頭していることになるし、自分のやっている事をもっと良く出来るんだよ。
  だから、その役に立つ方法だったら何でもいいんだ。生活を簡素にするのでもヨガをやるのでも、走るのでも何でもいいから、集中を保てるような状態に自分をもっていけるような方法をとればいい。でなければ、仕事をやり遂げるために今やろうとしている事から脱線しないようにすること。心ここにあらずになってしまうことがあるけど、そうするとふいに、頭に浮かんだことが-----ひとつが10、10が100になって-----どんどん脇道にそれていってしまう。そういう、浮かんでくる色んなことをみんな手放せればいいんだ。僕はそう考えてる。
PK:
今度はProToolと「パンチング・イン」という録音技術の話。「パンチング・イン」を、作曲家が自分のビジョンをはっきりと理解するための単なる助けと見ている? 「頭の中で聞こえているものを録音するためには何でもしたいと思っているが、自分では今ひとつ上手く演奏出来ない、という場合はどうだろう?」 それとも、アーティストの技能の代理のひとつとして捉えている? 
  「そのパートが上手く弾けるようになるまで練習したらいいのじゃないか?」という質問。
EJ:
うん、その通りだね。正直に言うと、その時どんなに頑張っても完璧に演奏出来ない場合、パンチインしてちゃんとしたテイクを作ることは、僕もたくさんあるよ。もっと理想的な状況なら、ただテープを回して、そのパートを演奏して、最初から最後まで完璧にやって、パンチング・マシンには指一本触れないって具合にいけば、その方がいいけど。そうならすばらしいと思うよ。でも、率直に言って、僕はこの先もパンチング・マシンを使うだろうね。より良い出来栄えにしようと努めてるから。
今の話に補足するね。現在の方が30〜40年前より、こういうことはよくやられている訳だけど、覚えとかなきゃいけないのは、僕らは「昔はただテープ回してダ・ダってやれば、それで録音完了だった」と思いがちだけど、実は昔だって、それなりの「パンチング・イン」をやってたんだよ。10テイク録って、カミソリの刃で切り貼りして、1テイクを完成させたりしてたんだ。Elvis Presleyとか、Miles Davisなんかにそういうのあるよ。ライヴで、すごくいいんだ-----違うテープをつないでさ。オーケストラの曲では、ボタンひとつで「パンチ・イン」こそしないけど、一山のテープをカミソリの刃でやってることは請け合いだね。セッション現場にいた人たちと話したことあるもん。同じ目的を達成するための、これはもうひとつの方法なんだ。
昔の方法の方がよかったかも知れないな?
プレイヤーは最初から最後までずーっときちんと弾けた時がベストだ、と言ってるんじゃないんだ。そういうことは時々あるけどね。
頭の中で聞こえるものを形にするのに、もっとテクノロジーに依存せずにやるには、本質に立ち返って、頭の中で聞こえるような形で充分に上手くやれるくらい練習することだよ。
PS:
ProToolだと、自分の音楽を今までよりもっと解剖出来ちゃうから、恐ろしくない? 前よりもっと細かく切り分けられるメスを持っちゃった訳だから、今までよりもっとレコーディングに時間をかけてしまうのじゃないかという心配は?
EJ:
あのね、今回のレコードにおける経験から言うと、ProToolが時間の節約になったんだよ。2本のテープを編集したいと思ったら、前は30分かかってたのが、20秒で出来ちゃうんだから。僕にとっては、速く出来る道具なんだ。
PS:
じゃあこれから、もっと使うつもりかい?
EJ:
うーん、この質問を出した人には共鳴するものがあるね。今僕が直面している問題のひとつだからね、これは。色々寄せ集めて、ひとつの良いパフォーマンスを作り出せる。自分のプレイしたものの中からいいやつを集めて-----でも、それって本当に僕がプレイしてるって言えるのかな? その時僕は本当に一音一音を、「パンチング・イン」で作ったように捕らえられるんだろうか? だったらいっそ、そういうのはやめにして、もっといいミュージシャンに、もっといいプレイヤーになる努力をした方がいい。だから、この質問にはちょっと共鳴するんだ。僕がよく考えたいと思っている手つかずの分野ってことになるね。もっと練習してもっと良くなればいいというだけの話ではあるけど。
とてもいい質問だね。こんなこと聞くなんて面白い-----僕がちょっと考えてたことだから。
ひとつ付け加えたいな。厳しい、きっちりしたルールなんかないということ。
ある決まったルールで生活を始めると、その先の自分を制限してしまう。ルールを決めてスタジオに入ってるとしても、色々組み合わせたりしてやってる内に、「お、こんなことが出来たのか」とわかったりするんだよ。それを家に持ち帰って練習したりも出来る。別の方法では見えなかったかも知れないような像が見えて来てる訳だから。
PS:
集めて組み上げたはいいけどまだ全容を今ひとつ把握してないような場合、そういう方法でアプローチする訳? 例えば、録音してからでないとライヴで演れないようなものを、ともかくまずレコードにして、それからやらなきゃいけない、みたいな曲なんかは。
EJ:
そう! 僕が言ってるのはそこだよ。この質問者の言ってることをやってみるかどうかは、僕次第なんだと思う。こう……壮大にっていうか……ばーっとやれちゃうようになるかどうかはね。でも、ルールで縛っちゃだめなんだ。
PS:
では次の質問。「"Showdown"で歌っている物語は、EJが読んだ文学作品からのものなのか、彼が自分で書いたのか、テキサス史から引っ張ってきたのか、John Fordのウェスタン物か、それともJay Aaronが、これの作詞までやったのか? 僕はこの歌詞が気に入ってるし、EJの曲の中でもユニークな歌詞だと思うんだが?」
EJ:
そう、この歌詞は全部Jayが書いたんだよ。彼はこの曲に作詞で参加してるんだ。昔のガンマンの、違う話を混ぜ合わせて書かれてる。この曲の一番いいところは歌詞だよね。 PK:
次。「EJの曲を、同じスピードで弾きたいと思っているギタリストにアドバイスを」
EJ:
スピードを身につけるには、最初はすごくゆっくり弾くこと。どうしてかというと、速く弾くということは、巧みに弾くということだから。だからゆっくりから始めて、徐々に鍛え上げていくんだ。メトロノームを手に入れて、最初はすごく遅い拍子で、一目盛りずつ段々上げていくといいよ。
PS:
どうした訳か、君がアフリカに住んでたことがあると思ってる人たちがいるんだが……。
EJ:
15年ばかりね……自然保護区仕切ってた。
PS:
Jane Goodallとチンパンジー観察をしてたのかと思った。
EJ:
実はそのチンパンジーの中の一頭だったんだ。((((((笑))))))
EJ:
いや、アフリカに住んだことはないよ。休暇で2ヶ月ばかりいただけ。
PS:
"Rock Me Baby"と"Red House"と"Intro Song"は新譜に収録されるかい?
EJ:
"Intro Song"は入るよ。曲名はもう"Intro Song"じゃないけど。"Twelve to Twelve Vibe"という名前になったんだ。
PS:
次。「ちょっと思ったんだけど、ウェブサイトや、ウェブサイトを使って広く一般に向けて自分の音楽を取引することについてどう考えるかな?」
EJ:
とてもいいと思ってるよ。僕は今まであんまりそっちに気を配ってなかったから、みんなにはわからなかったろうけどね……よくありがちなことなんだけど……。
PS:
次の質問。「EJは曲のテンポごとにディレイのセッティングを合わせようとしてない人だけど、僕は、それはライヴに限ったことだと思う。レコーディングでは、彼は絶対、すごくディレイに苦心している。そういえばEJは、ペダルボードをファズ2つとコーラスぐらいに簡素化して、ディレイやなんかはhouse mixの時にRichard Mullenに任せたいという発言もしている。どういう時に、ディレイのテンポが明確になるんだろう? EJがコントロールをあきらめてるかどうかは別問題として」
君はディレイのコントロールをあきらめたの?
EJ:
うーんそうね、実際の話、ライヴの時のリヴァーブやディレイやコーラスは、Richard Mullenがやってくれてるんだ。もう何年もね。それについては僕は何もやってない。Richardはとてもいい仕事をしてくれるよ。ライヴで聞こえることの多くは、彼がやってること。僕はやってないんだ。
普通、僕のライヴでは、テンポのはずれたディレイが聞こえるよね。もっとテンポが合ってるべきなんだけど。エコープレックスのせいなんだ。なにしろおんぼろになってるからね。うまく動いてくれればラッキーってとこ。だから、電源入れて、そのまま放っといてる。そう、スタジオでは、ディレイのテンポにはもっと気を使ってるよ。でもライヴでは、色んなものを余り使わずに、出した音をそのままPAに通すようにしたいんだけど、そういう風に変えるのが、僕には大変なんだ。計画性を持って、ペダルボードから1個ずつペダルを減らしてきてるところだから、ボードの規模は少しずつ小さくなってる。プレイに没頭出来るように、ボードをすごく小さくしたい訳なんだ。いっぺんにっていうのは、僕には無理だけどね。エフェクトを使わないことに慣れなくちゃ。
PS:
Shake RusselとDana Cooperの、君が参加している1982年のレコードを聴いた人から。「サイドマンとしてプレイすることにまだ興味はあるか、それとも、ソロ・キャリアの方を優先して、サイドマンの方はやめてしまっているか」
EJ:
セッションは、しょっちゅうやってるよ。今月もやるし。
-------その2に続く--------