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1998年9月 EJインタビュー その1
出典: ej-l Mailing List dd 24/Sept/98
copyright: Park Street/Eric Johnson, 1998
「日本語文責: 山巻 由美子」

PS:
以前サウスカロライナのMyskinsという場所でショウをやった時に演奏した"Green Jam"と"Pass The Salt"は、自作? それともカヴァー?
EJ:
"Green Jam"は自作で、"Pass The Salt"はBill Maddoxが書いた曲。
PS:
リズムとリードのディレイは、どうやってドラムとぶつからないようにセットしているのかな? 特にライブセットの時は、色んなテンポの曲をやったりする訳だけど。曲ごとにいじる?それともセットしたらそれっきり?
EJ:
僕のはワンセッティングのやつなんで(訳注:セッティングを何通りか入れておくタイプの機材ではない、の意)、ドラムからオフビートになっちゃうことは、結構よくあるよ。あるセッティングでセットして、それっきりにしてるね。
PS:
腱鞘炎になったことあるかい? もしあれば、何か有効な対策は?
EJ:
いや、なったことないんだ。左手の親指がちょっと痛いとか、ものすごく弾いてる時やヘヴィな弦を使ってる時に、指にビリッと走ったりすることは時々あるけど。でもおおむね、大変な問題にならずに済んでる。腱鞘炎抱えてる人には、細めの弦を使うのが絶対におススメだね。細めの弦で、より良いトーンを得るには、アクションを大きくすればいいんだ。
PS:
ヒーローとか、インスパイアされる人とか、音楽以外でいたら教えてくれるかな? 宗教指導者とかカーレーサーとか、色々あるだろうけど。
EJ:
今思い浮かぶのは、キング牧師とアインシュタインだな。才能のせいばかりじゃなく、精神性もそうだし、そのふたつをうまく結合させてるしね。
PS:
音楽を創る時、何にインスパイアされる? 君の才能の燃料はいつも同じ物/人?
EJ:
僕は、才能は神が与えてくれたもので、自分は他のことよりもうまくやれることをやってるだけなんだと思ってる。僕が音楽とある種の関係を持ってるってことがインスピレーションだね。僕にとっては音楽というもの自体が、すごく駆り立てる媒体なんだ。エキサイティングで、僕にとっては情熱だね。
PS:
練習時間は、どんな風に割り振ってる? 初期の、"Chord Chemistry"を使って学んだりテクを磨いたりしてた頃は、どうしてた?
EJ:
子供の頃は、そりゃ時間はいくらでもあるんだから。ひたすら弾いてばかりいただけ。一日に6時間でも8時間でも10時間でもね。今は、一日に、少なくとも2、3時間は練習するように心がけてる。曲作りと技術的な練習に時間を配分するようにしてるね。今現在は、他にもレコード制作の責任---作っているレコードを、自分に出来る最高のものになるように作る、という意味での責任がある。それから、他の、生活上の色々なこともあるし。出来るだけ、その中に入念な練習の時間を組み込むようにしてるんだ。
PS:
ギターを始めた頃は、コピーをやってたんだよね?
EJ:
うん。
PS:
"Wheels of Fire"とかそういうの、やってた訳だ。コード本なんかは使ったかい? 確かレッスン受けたんだよね?
EJ:
始めた頃に、二ヶ月間ギターレッスンに通ったよ。
PS:
Wayne Woodに習ったんだったね。それからレコードをコピーした、と。
  その後、"Chord Chemistry"なんかのコード教則本に入った訳だね?
EJ:
そう、コードを研究し始めて、じっくり実験するようにしてた。
PS:
じゃあ今でも、新たな名人芸を学ぶために、他人のマテリアルで練習したりするかい?
EJ:
うん、今じゃもう、一音一音きっちりコピーではないけどね。単に色んな材料を身につける過程でのこととして、他人のマテリアルもやるよ。ある方向でやってる時、昔はうまく出来たことが、今じゃ錆びついちゃってる
  場合があるんだ。だからそういう時は、一度その頃に立ち返って問題をピックアップして、うまくまとめる方法を導き出すようにしてる。
PS:
君が、人が思うほどギター音楽ばかり聴いてる訳じゃないことは知ってるけど、他の楽器の曲をギターに移し替えたりしてるかい?
EJ:
ギター音楽鑑賞だけに身を捧げてる訳じゃないもの。色んなタイプの音楽を聴くのが好きだし、それを自分がプレイするものの中でまとめて、ひとつの総合体を生み出したいんだ。
PS:
さて、ウォームアップの時、実際にスケールを弾くかい?
EJ:
いや、弾いて面白いテクニックを練習するか、曲を弾くかだね。肉のない骨格だけみたいな、単なるスケール練習は、全然やらない。やらなきゃ絶対乗り越えられないような障害があれば、やることもあると思うけど。
  エクササイズあるのみ、みたいなこつこつとやる練習は、好きになった試しがないよ。好きだった方がよかったのかも知れない、それはわからないけど、でも僕には、微妙なバランスだと思えるんだ。そういう無味乾燥な材料と、インスピレーション系の材料のバランスをとらないと。ひとつの方法に走り過ぎると、バランスが悪くなって、その影響が出てしまう。
  僕のバランスは、プレイする時ドライになり過ぎないこと。自分もやってて楽しめるように、興味の要素をキープしておかなくちゃね。でないと、完璧な訓練の要素が大きくなり過ぎてしまうから。
PS:
言い換えると、他人の作品だけを演奏する、良きクラシックギタリストにはならないだろうということかな?
EJ:
必ずしもそういう意味じゃないよ。別に自分の作品ばかりやらなきゃいけない訳じゃないもの。要するに、3時間じっくりスケールの練習だけするのは、ギター演奏の楽しみの要素に影響するってことだよ。
PS:
自分のスタジオのデザインやセットアップに、電気系などのエンジニアの助けを借りることが多かったかい? どんな部分で?
EJ:
音響のエンジニアが、部屋を、可能な限り平らになるようにデザインしたんだ。内側が浮かんでる作りの部屋だから、全くの無音状態に出来るし、完璧な音場と釣り合いのとれない不要周波もないんだ。電気のAC配線については、自分でやった配線極性実験から得たものを、デザインに特別に組み込んだよ。
PS:
この件について、みんな君の本を楽しみにしているよ。
(訳注:EJは、その内プレイや機材の技術などについて本を書きたいと、かつて発言したことがある)
EJ:
うん、いつか書きたいね。ぶっ飛んだ本になるだろうと思うけど。
PS:
君の音楽を聴いてて、その美しさにしばしば寒気がするという人がいるんだ。君自身は、曲作りやレコーディングの時に、そういう経験をしたことがあるかい? 仕上がったものをプレイバックしてる時なんかは? 覚えがあれば、どの曲がそうだったか思い浮かぶ?
EJ:
そういう経験はあると思うな。普通は、自分自身より大きなものにプラグインされた時だね、そういうことが起こるのは。鳥肌が立つのは、そういう「大きなコンセント」に接続しちゃった時だと思うよ。より大きな世界に入って行ってる時。
PS:
君のギターに関して、ストラトでは、ローズウッドよりメイプルの方が好きなようだけど、それはトーンの違いのせいかな? それともスピードのせい?
EJ:
僕にとってはメイプルの方が、よりピュアな音なんだ。時たま、その哲学を吹き飛ばすようなローズウッドネックも見つかるけど。好きなのもあるよ、ローズウッドの中には、リズムトーンがメイプルよりいいやつが時々あると思う。総体的なトーン、つまりギターで出そうとする全部のトーンね、それについては、僕はメイプルが好きだね。薄板を貼り合わせたのと違って、ひとつの木材なんだ。運がよければ...ま、100分の1位の確率だけど、ふたつの木材がすごくいい共働作用を持つこともあるよ。そうでなければ、木材同士がケンカしてしまうんだ。
PS:
ニューアルバムには、何曲入るの?
EJ:
11曲になるだろうと思う。2巻セットのvol.1だよ。
PS:
次の質問者は、スライドを床からさっと取って、曲の中のほんの一節に使い、流れに何の支障もきたさない君の能力はすごいと言ってる。このテクニックをマスターするのに、どんな裏話があるのかな?
EJ:
ダラス出身のギタリストで、Steve Meter(原注:スペル不確実)という人がいてね。今はもう一緒にやってないんだけど、とてもいいロックギタリストだったんだ。何年も前に会ったのを憶えてるけど、彼がそれをやってたんだよ。スライドを、ポケットに入れるか口にくわえるか床に置くかしておいて、さっと取ってリックをふたつ弾いて、それからスライドを床に落とすんだ。ロックのスライドプレイヤーで好きなのは、Jeff Beckだね。ほんとに、すばらしいスライド・プレイヤーだよ。SteveはBeckによく似てたんだ。何もないところから、突然スライドが出て来るんだよ。
いつも、ちょっとかっこいいなって思ってた。
-------その2に続く--------