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1998年3月 EJインタビュー
出典: Eric Johnson Mailing List, March/1998
copyright: Eric Johnson/Park Street, (c)2002
「日本語文責: 山巻 由美子」

PS: Park Street(聞き手。本家リストオーナー)
Eric Johnson(ご本尊)

PS:
制作中のアルバム(訳注:のちのワーキングタイトル「Bloom」)はどんな具合?
EJ:
多分12曲にすると思う。ベーシックトラックは全部終わってて、そこから8〜9曲をやって、マスターカットがどんな風 になるか見てみようと思って。
今、その先の作り込みが出来るように、ベーシックトラックのまとめに入ろうとしてるところなんだ。
PS:
君のアルバムレコーディング方法には、困惑している人もいるようだよ。1曲にとりかかったらそれを完成させて、 それから次の曲に取りかかると思っている人がいるんだけど、そういうやり方じゃないよな?
EJ:
やり方は、人それぞれだよ。一番いい方法は、最初にいくつか、そうね3〜4曲を、いっぺんに同時並行でやって、それか らまた次の数曲を、という形で仕上げていくことだね。
将来的にはそういう風にやっていけるだろうと思うけど、まだ今の ところは、ベーシックトラックを一通り全部録る、 という具合でやってるんだ。その方が都合がいいんだよ、LAとかよその土地からミュージシャンを呼んでいたりするから。
基本的には、「ギター/ベース/ドラムズ」か、「ギター/ベース/ドラムズ/キーボード」で録って、その場で骨子を 固めてしまってから、その他のギタートラックやヴォーカルを乗せていくんだ。
今作ってるアルバムでは、直(ちょく)にやるように努めてる。Venus Isleの時みたいに、ギターの多重録音をこれでも かというほどやりたくないんだ。
「直に」ってのは、各パート間にもっとスペースを持つというか、作り込み度を減らすっていう意味ね。
PS:
今度のアルバムは、元々はAlien Love Childのマテリアルの録音ってことだったけど、それがちょっと変わって来たんじゃなかったっけ?
EJ:
うん、ちょっと変わりはしたけど、ALCのもまだ一杯入ってるよ。多分1巻と2巻のセットになると思うけど、とにかく進めてて、 まずは第1巻を仕上げちゃおうってとこなんだ。なにしろ僕は、世界一録音が速いやつじゃないからさ。(((((笑)))))
2巻に亘って沢山のマテリアルを扱ってるんだ。1・2巻とも、半分はALCでやったブルーズ/ロックの曲になる。やっていくにつれて、 曲の良さを存分に発揮出来るようにしたくなったので、曲によっては「自分はこういうタイプのブルーズには向いてない」と判断する 場合もあったよ。
ま、「こりゃブルーズの新境地を切り開く独自の観点だ」なんて思ったりした場合もあったけどネ。ほんとにうまく やれる曲を選別する必要があるんだ。ブルーズ以外の曲は、前から書き上げてあって、アルバムに入れたいと思ってた作品群だよ。
PS:
絶対やろうと思ってる曲は何かあるかい?
EJ:
「My Bonnie Lies Over The Ocean」。けど4年半かかっちゃってるねえ、ギターパートを2つやりたいと思ってるんだ けど、そうするとほら、すごく時間かかる訳だよ。
PS:
ツアーの計画は?
EJ:
<ここでEJは予定を語っているが、マネージャのJoe Priesnitzより、最終決定していない情報を公開しない旨要請されて いるため割愛。程なく発表される予定であり、殆どの人には影響しない限定的ツアーとなる。>
PS:
アルバム作りの傍ら、サイドプロジェクトをしようなんて思っているかい?
EJ:
アコースティックのコンサートをちょっとやりたいな。
PS:
Seven WorldsとElectromagnetsがリリースされたけど、どう感じてる?
EJ:
いい気分。どっちも、今だったらもっと違う風にやるだろうという部分は当然あるよ。いばれたもんじゃない部分もある けど、どっちのレコードにも、ほんとに自慢出来るところがあるんだ。その観点で行くと、今回のは20年前の回顧展になる訳で、そう いう意味でとても有効だと思う。
僕はいつだって、自分のファーストアルバムはSeven Worldsだと思ってきたし、だから、ちょっ と古びちゃったけど、ついに出すことが出来てうれしいよ。
Magnetsのアルバムも、やっと出せてよかったと思う。数年間一緒にやって、自分たちの音楽に注目してもらったし、何とか足がかり を得ようと一生懸命やったもん。だから、遅くなっちゃったけど、今回はそれを再建するチャンスだよ。Magnetsはアルバムより面白 いライヴテープが一杯あるから、多分将来的にはそれも俎上に上がってくるだろうな。
PS:
どうしてG3を辞めたのかみんな聞いてくるんだけど。
EJ:
うーん、「辞めた」んじゃないんだけどな。いやなこととかは何もなくて、もともと米国ツアーを1本やろうっていう話で、 僕はOKしてそのツアーをやっただけ。
ツアー中は、最後のジャムには航空機用ヘッドフォンをして出ていたんだ。個人的に厄介な時期だったから。耳を傷めていたからね。
今はもう良くなってるけど。Steve (Vai)やJoe (Satriani)と毎晩ジャムるのにためらいがちだったのはそういう訳なんだ。 ステージ上の音量が問題だったから。当時は気をつけなきゃいけなかったんだよ。
ツアーをやって、その時点でライヴレコード出すことになって、その次にはビデオも出すことになって。それが済んだ後、僕には他から 幾つかオファーがあって、そっちをやりたいと思ったんだ。そしたら突然G3で欧州ツアーをやろうよって話になってさ。 でもそれやるにはツアーサポートのコストやら色々あって、経済的に引き合わないように思えたんだ。そしたら今度は米国ツアーをもう 1本やりたいってなことになったけど、僕の方は、その時点でもう手がけてる仕事があってさ。個人的理由じゃ全然ないんだ。
もともとツアーを1本やる予定で、それをやって、レコード出して、ビデオを出しただけ。G3は他のギタリストを入れて続いていくと思うよ。 SteveとJoeを補足出来るプレイヤーは大勢いるもん。
PS:
近頃はどんなの聴いてる?
EJ:
レコーディングやってるから、あんまり聴く時間ないんだ。一番最近はBen Folds Fiveかな、すごくいいよ。 それとSmashmouthは面白いグループだね。あ、それと'50年代のTal Farlowのコンピレーション。君にコピーあげたやつね。
PS:
もしキャリアをやり直せるとしたら、今とは違ったものになるかな?
EJ:
殆どは変えないけど、でも他の人がやってるグループでプレイしたいと思うだろうね。Cat StevensやCarol Kingのツアーに 参加したときみたいに。
PS:
今まで断ったオファーの内で、受ければよかったと思うものはあるかい?
EJ:
Stanley Clarkeとツアーしなかったのが残念だったと思うことがあるな。Mick Jaggerのソログループのオーディション受け てみなかったのも、多分入るかな。
PS:
唄う時、誰かお手本にしようって人はいるかい? 憧れの歌手は? Mel Tormeは当然入ってると思うけど。(にやにや笑い)
EJ:
もちろん! いつでも大好きなのはStevie Wonderだけどね。70年代の、Music of My Mind to Songs in the Key of Life時 代の仕事はホントすごかったもん。
Beatlesは別格としても、多分彼は一番優れたポップ・アーティストの一人だね。すごい歌手で、 すごいソングライターで、曲のまとめ方についちゃ大した先見者だよ。Bryan Adamsと、初期のRod Stewartと、Free時代のPaul Rodgersも 好き.....みんな素晴らしい歌手だね。
好きだけど自分の歌唱の参考には出来ない、みたいな歌手も一杯いるよ。Dinah Washingtonとかね。
PS:
自分のバンドでもう一人ギタリスト欲しいと思うかい?
EJ:
うん、そうしたいね。単にギター弾くだけの人じゃなく、ギターちょっとと、キーボードちょっとと、パーカッションちょ っと出来る人がいいな。
PS:
アンテロープのフィリスはどうなった?(訳注: Antelope named Phyllis。Venus Isleの、沢山あったワーキングタイトルの一つ)
EJ:
ムースのラリーと逃げちゃった。 (訳注: Moose named Larry。これもVIのワーキングタイトルの一つ)
PS:
Hendrixのショウは、どれを観たの? ハイライトの部分を話してくれるかい?
EJ:
最初のは、確か'68年の12月だったと思う。
僕は14歳で、親に内緒で、何人かの友達と一緒に、Jimi Hendrix Experience(訳注:ツアー名)を観に、ヒューストンのSam Houston Colosseum まで行ったんだ。運良く仲間の一人が16歳で、運転免許持っててさ。前座はFat Mattressだったんだけど、車で行ったんで、遅くなっちゃって見 逃した。実年齢以上に見えるように、ひだ付きのシャツを着ていったんだけど、実際は多分やっぱりコドモにしか見えなかったろうな。
Hendrixは、他の惑星から来たって感じだったよ、ぶっ飛んだブルーズをプレイしてさ。VooDoo Chileとか、VooDoo Child (Slight Return)も演 ったと思うな。ショウのハイライトはねぇ.....
Noel ReadingがSunのアンプを5つ使ってて、HendrixはMarshallを2つか3つ使ってて、そんなだから、Mitch Mitchellにはかろうじてマイクが 向いてはいたんだけど、よく聞こえなかったな。
Hendrixが聴衆を茶化して「そこらでタバコなんか吸ってやがって」みたいなことを言ってさ。タバコを吸うべきじゃないと言ってたけど、言い ながら彼の方はもちろん吸ってたよ。彼が吸っててうれしかったんだ、その当時僕はタバコ吸ってて、「うーん、タバコってクールだぜ」と思 ってたからさ。
タバコとひだ付きシャツで、14歳じゃなく、少なくとも16歳半に見えるようにするためには、タバコは必需品だったんだ。 少なくとも、そうすれば16歳半に見えるかと思ったもんだから。
彼は髪をすっかりカットしたばっかりで、すごく短髪になってて、あれには面食らったな。僕は、彼のワイルドな服装や爆発したヘアスタイル にハマってたから。なんでもイタリアのショウの時に髪に火がついちゃったせいだとかいう話だったけど、ほんとかどうかはわからない。
その晩の演奏はすごくて、僕は完全にぶっ飛んじゃった。ステージの隣にキャデラックのリムジンを待機させて、VooDoo Child (Slight Return) を演りながら、ギターを床に置いたら、完璧なEのフィードバックがあってさ。その音が曲にどんぴしゃ。それでみんながアンコールを求めて沸 いてる内に、彼はそのキャデラックに乗って、そのまま行っちゃった。車が2-3ブロック先まで行っても、まだ沸いてたよ。

2回目は、'70年の5月。Jerry Hunterっていう友達と一緒に行ったんだけど、現地で出会った女の子たちが、席に誘ってくれたんだ。
で、3列目だか4列目だかの2人分のシートに、4人でぎゅうぎゅうになって座ってさ。Hendrixは、そうねかなり元気なかった。出てきた頃は、 すごく感じがよかったよ。1列目に知ってる人を見つけて、客に歩み寄って握手して、「君を知ってるよ」なんて言ってさ。穏やかでいい人なん だって感じが伝わったよ。僕から15フィート(訳注:4-5m)のところで、彼は普通の人みたいに振舞ってたんだよ!
でもその後は、彼は眼をふせちゃって、その晩の演奏はよくなかった。彼には何か気をとられることがあったか、そうでなければ色んなことで 頭が一杯かどっちかだったんだろうとしか思えなかったよ。誰か力になれる人が近くにいなかったのかな....つまり、彼のことを知らない僕で さえ、ほんのちょっと見ただけで、なんか問題があるみたいだってわかっちゃったほどだからさ。
彼の周囲の人は一体.....そりゃ、'60年代は実験期間で、そういうもんだったってのは疑いようもないけどさ.....。それか、乳牛が自動搾乳 されるみたいに、24時間戦えってなもんだったか。すぐ思ったよ、彼に休みをあげて、どっか島とかに行かせてあげて、ぼんやり座ったりゆっ くり考えたり、くつろいで、充分食べて、自分のやりたいことを見つけ出せるようにしてあげればいいのにって。でも結局そういうことはな かったけどさ.....。これはどう考えても、カルマというか運命だね。とにかく僕が座って観てた彼は、ひどく落ち込んでた。眼を閉じていて、 まちがえるかどうかなんて気にしてないって感じで、すっかり陰に篭ってたよ。ただお義理でやっていたんだ。

PS:
HendrixやSRVのトリビュートにどうして参加しなかったの?
EJ:
声かけられたのは数年前の1回だけだよ。それぞれのアーティストがHendrixの曲を1曲ずつやるっていうやつ。僕は最終段階で リストから落とされて、他の誰かに代わったんだ。ここオースティンのSRVトリビュートに至っては、それが出る直前まで知りもしなかったんだ。
PS:
Angel以外で、Electric Ladyland後のHendrixの曲をカバーしたことがあるかい?
EJ:
うーん、あと1曲、確かWoodstockをしめくくった曲だったと思うけど、それ以外はない。
PS:
欧州をツアーしたことは?
EJ:
2回。Carole Kingで1回と、'93年に自分のバンドで1回。今やってるレコードが上がったらまた行けると思うな。
PS:
RushのAlex Lifesonとはどういう関係? ダブルネックのギターもらったんじゃなかったっけ、後で盗まれちゃったけど?
EJ:
'91年にRushのツアーに参加して知り合ったんだ。とてもいい人だよ。何回か一緒にジャムをして、すごくいいお喋りもした。 うんそう、黒のGibson 6/12をくれたんだけど、残念ながら盗まれてしまったんだ。
PS:
今でも連絡は取り合ってるのかい?
EJ:
最近は話してないな。前回カナダに行った時に連絡取ろうとしたんだけど、電話番号がわからなくてダメだった。
PS:
君のレコードはもう一つ出そうだね。Electromagnetsのメンバーで、古い友人で、今現在の君んとこのキーボードを担当して いるSteve Barberのプロデュースのやつ。どんな感じ? Cannonball Adderlyのジャズ/R&B風味があるみたいに聞いてるけど。
EJ:
その説明はいいね。僕はその中の4-5曲に参加したんだ。「ほんとに」いいレコードだから、じきにリリースになると思うよ。 (訳注:これは2004年3月現在未だに発売にこぎつけられていないSteve Barberの「Same Time Next Year」のこと)
PS:
Steveとは他にもサウンドトラックの仕事やってるんじゃなかったっけ?
EJ:
うん、この夏に放映されるナショナル・ジオグラフィックの特別番組用のサウンドトラックをね。カリフォルニア海岸のサン ゴ礁の映像にかかるんだと思う。(訳注:これについては、結局どたんばでEJ組の仕事は採用されないことになった)
PS:
最後に、何か言いたいことは?
EJ:
ただみんなに、メーリングリスト(本家ej-l)に参加してくれてありがとうと言いたいだけ。今度のレコードは、時間をかけ 過ぎないで、もっと早く出せると思います。
=おしまい=