その2. 何んにも見えない十勝岳
十勝岳の登山口である「望岳台」に着いても、予想通り、あたり一面ガスっていてなーんにも見えません。 「どうしようかー・・、悔しいけど帰る?」と話していると、かなり大人数の団体さん2組がガスの中へと出発し始めました。 (おっ!!) これはチャンスです!
「よし!あの人達に続いて登れば、迷う心配もないはずだ!」と、私達は手持ちの安ものカッパを着込み (当時の装備はまだまだ不完全でした)、真っ白な十勝岳山頂へと向けて歩き始めたのです。それにしても、周りはすごいガスです。もしあの時、団体さんが出発していなければ間違いなく引き返していたでしょう。それでもわずかですが、登るにつれて下の方のガスが薄くなって来たようにも感じます。 「もしかしたら晴れるかもしれない・・・。」と、わずかな期待を胸に先へ先へと進んで行きました。
50分ちょっとで「十勝岳避難小屋」に到着です。 先に登っていた団体さんも皆休んでいて、小屋の前は人で賑わっています。 (ん・・?) 妹は何故か、以前にもこれと似たような光景を見た事があるような気がしました。 (そう言えば、キャンプ場の向かいの゛大雪 青年の家"ってのも何処かで聞いた事があるような、ないような・・・?)
じつは、家に帰ってからアルバムを見てみたのですが、あらビックリ! 確かに高校一年生の時に、学校の課外授業でここの避難小屋まで登りに来ていたのです。
でもあの頃は、ここが何処なのかなんて何も考えずに・・・、というより全く興味がなく、ただ先生に言われるがままに登っていたという記憶があります。 大人になって、こうして山登りにハマっているなんて、当時の妹に話してもきっと信じなかったでしょうね。何だか面白いですね。(ちなみに同じ高校の姉も登っていました。でも、その事に気付いたのは山日記を書いている今です。 さすがだぜ、迷リーダー!)
その3. 寒さと強風、メガネもくもる!
避難小屋を出発し、少しバラけだした団体さんに交じって登って行きます。相変らず周りはガスっていて、どの辺を歩いているのか目安がたたないうちに1時間ほどで「摺鉢火口」に到着です。
天気の良い日なら、ここはロケーションもバッチリ!最高の休憩ポイントだと思うのですが、今はただただ、真っ白な世界です。 それでも朝と比べたら、下の方は幾分明るくなって来たようです。 「でも、この感じじゃ晴れそうもないなぁ 」とガックリ肩を下ろし、私達はまたガスの中、山頂目指して進んで行きました。摺鉢火口から先は平坦地になっているので、しばらくは平穏に歩いて行けます。(ずっと、こうだといいのに)
そして最後に待ち構えているのは、山頂手前の急斜面です! ガイドブックには「火山灰で靴は深く埋まり、登ってもずり下がり、歩きにくいことこの上ない」と書いてありました。 しかし、うらめしいガスもこの点に関しては大変ありがたく思います。火山灰が湿っているおかげで、ズリ下がりもせず楽に登って行けるのです。実際、ガイドブックのコースタイムより1時間ほど短縮出来ています。休憩も含めてですよ。こんな事は滅多にあるもんじゃありません!このまま登って行ければ楽勝ペースです!(すす、すごいぞ!)
・・・しかし、初級者が山をなめ過ぎると痛い目にあいます。ビュビューーーーーーーッ!! 「うぐぐっ!?」
山頂に近づくにつれ、ものすごい風が吹いてきました!今までこんな強風に出くわした事があるでしょうか!? ビュビューーーーーーーッ!!
「うっ! い・・、息ができない・・・。」
一瞬ですが本当に死ぬかと思いました。 どのくらい凄い風かというと、後ろを振り向くか手で鼻と口を押さえていないと、とてもじゃないけど息が出来ない状態だったのです。
私達だけだったら、すぐシッポを巻いてその場で退散してたかもしれませんが、周りの人達も登っていますし、上から下りて来る人もいます。 私達も頑張って登り続けました。 しかし、父と姉のメガネはくもり、いえ、くもるどころかレンズに水滴がついて牛乳ビンの底のような、お間抜けヅラになっています。これではとてもメガネなどかけてはいられません。「さ、寒いっ!! ブルブルブル・・・」
さらに、寒がりの姉はみるみる風に体温が奪われていき、寒さに打ち震えていました。父に至っては、よりによって普通のフード無しのジャンパーを着ていて、風に飛ばされないよう帽子も外していたので、濡れた髪が鳥のヒナのようです。(・・・悲惨な親子だ)「あ! 山頂だっ!」 おっと、助かりました! 山頂です!
・・・じつは、寒さに耐えきれなくなった姉はリタイヤ寸前でした。 早速、私達は風を避けるため岩場の陰に座り込み、この寒さの中昼食をとったのです。 (寒くても食う、です)見上げた根性でしょ?
さてさて、私達は無事に下山できるのでしょうか・・?
その4. うちのリーダー、迷リーダー!
360度真っ白な景色を見ながら昼食をとっていると、望岳台を背にした状態で、私達の右手側へ下りていく数名のグループが見えました。私達も昼食をとりおえ、山頂の標識で写真を撮ったあと、前のグループと同じ右手側を下りて行きました。「早く下りて暖かくならなくっちゃ!」と、姉は張り切って下りて行きます。 (おや?) 妹は下り始めてすぐに、登山道に対して妙な違和感を感じました。
(何だか登っていた時と雰囲気が少し違うような気がするなー・・・)第一に踏み跡が違って見えました。
妹は「ねーー!下りる道間違ってないよねー?」と、我が隊のリーダーである先頭の姉に聞きましたが、「んー?別に間違ってないんじゃない?」と、姉は気に留める事もなくどんどん下りて行きます。
(・・そうかなぁ、何か違うような気がするけどなぁ・・・)
第二に風の向きも違って感じました。 「ねー!本当に間違ってないー?」 姉は相変らずどんどん下りて行きます。 そして決定的だったのは、第三の登山道脇の「クイ」でした。 (!!)「この道絶対違うよーー!登る時こんなクイなんて無かったもん。本で確かめてみようよ!」と妹は立ち止まったので、姉も「やれ、やれ。(しょうがないなぁー)」とようやく立ち止まりました。
丁度そこへ下から登って来た人達がいましたので、「この道は望岳台へ行く道ですよね?」と姉が聞くと、「いえいえ、こっちは上ホロへ行く道です。私達も間違えて、余計に一山登ってきたところなんですよ 」との事。
ほーうれ見たことか! やっぱり妹の言う通りではないか!(←自慢) 私達はまた山頂へ逆戻りし、周りをよくよく見れば確かに見覚えのある登山道がありました。
「あ、こっちだ、こっち!」晴れていればこんな失敗はあり得ないのでしょうが、やはり、視界がない時には充分気を付けないといけませんね。
それにしても「いやいや、道が間違ってるなんて、これっぽっちも考えなかったよ。ウヒョヒョヒョヒョ!」と、ケロッとしている姉を見ていると、少しは反省しろーいっ!と、小憎らしーく思えてくる繊細でお利口さんの妹なのでした。(←自慢2)「摺鉢火口」まで下りてくると、相変らず山頂は厚い雲で覆われていますが下の方は明るく日が差し、避難小屋や望岳台までハッキリと見えます。 「いやー、あと3時間ぐらい違えば山頂は晴れてたかもねー。」と話していたのですが、避難小屋手前まで降りてきたその時です。 「あ!晴れやがった!」
なんと!山頂から下ってたったの1時間で、山頂の周りの雲はすっかり消えてしまったのです。 ・・・たったの1時間ですよ? もし、いつものペースで登っていたら今頃は・・・。 いえ、これ以上考えるのはよしましょう。最後に山頂が見れただけでもラッキーなのです。
「望岳台」はいつものように観光客でいっぱいで、少々気恥ずかしく思いながら午後1時30分 無事下山です。
この後キャンプ場へ戻り、人気の引けたキャンプ場で湿ったテントを乾かしながらゆったりと過ごし、午後 3時7分、青空の広がる中、私達はキャンプ場をあとにしたのでした。
この「のんびり感」が たまらなく良いのです
おまけの話この十勝岳登山の後、さっそく父はゴアテックスのレインウエアを購入しました。 私達も年末のバーゲンと翌年の春のバーゲンで、それぞれレインウエアを購入しました。
こう考えると、私達って本当に経験を重ねて重ねて今に至っているんだなぁと、つくづく感じます。 さて、少しは上達しているのかいな・・・?